A26 魔族との再会
別ルート編です。
終らせられへんかったわぁ…。
今日は最後の更新です。
ギアバトル闘技大会
それは各国の学園から選抜された強者たちによる闘技大会だ。
この大会は人族領土で一番の大イベントであり、各国に中継で試合も放映されるなど大いに盛り上がりを見せる。
簡単にいうと前世でいうところのオリンピックみたいなもの。
このギアバトル闘技大会は、毎回この国ルドラルガで開催されていたらしいが、今回初めてテンガラスという国で開催されることが決まった。
もちろんアタシらもこの国に来たのは初めてのことだったけど、驚愕だった。
この国全土が透明なガラスドームで囲われていて、その中に街並みが揃っている。
さらにその王都では、ギアバトル闘技大会専用の場所まで作られているらしい。
そこにはアタシらが寝泊まりしたりする豪華な宿泊施設があったり、様々な物産店やお食事処が立ち並んでいたりと堪らなく楽しい場所だった。
思わずはしゃいでしまうのは仕方がないことだと思う。
こっちの世界にきてショッピングや食べ歩きなんていう娯楽はなかったからね。
途中、アタシら以上にはしゃいでいる紫と黄色のフードかぶった生徒さん2人が目に入る。
その2人を見た瞬間にアタシとハズキの動きが止まる。
「アズサちゃん……」
「えぇ……」
ハズキも気が付いたらしい。
あの独特な色のフード付きコートにその中に見える独特な装飾の制服。
そしてあの顔の感じは間違いなく、以前アトラス大迷宮で出会ったあの魔族の子2人だった。
本当ならすぐにでも話しかけたいところだったけど、それはやめておいた。
まだあの子らだという確証を持てなかったし、あの追撃部隊により全滅したと聞いていたからだ。
『ハズキ、どう思う?』
『間違いあらへんと思うで』
『だよな……でもどうやって生き残ったんだ? それになんで人族の生徒に紛れているんだろ……』
『わからんことが多すぎや……もしかしたらなにか起ころうとしてんのかもしれへんな』
『あぁ、とにかくあの2人は注意して見ておこう』
『せやな。なにか起きるんならあの子らがキーマンのはずや』
宿泊施設へと戻ってきたアタシらは2人でそう話した。
そして翌日からギアバトル闘技大会が始まった。
マキシム学園はいきなり第一試合という大舞台に立つことになる。
オリンピック選手ってこんな感じなんだろうな。
向けられる大量の視線やとんでもないプレッシャーにアタシは挫けそうだ。
昔から本番に弱く、直前には体調を崩してしまっていた。
今ももちろんプルプルと体の震えが止まらずに冷や汗が噴き出ている。
そんなアタシを後ろからギュッと抱きしめてくれるヤツがいる。
『周りを見たらアカン。アズサにはウチがおるやん。ただいつも通り表だけ強気に振る舞っとったらええねん』
『だ、誰が表だけ強気だよ! アタシは……』
『そんなに怖いんなら、今日の朝にペペロンチーノ風パスタを食べたウチがキスでもしたろうか?』
『バッ?! バッカじゃねぇの! ぐはっ?! 本当に口くせぇじゃねぇかよ! 近寄るな! 歯を磨けバカ!』
そんなやり取りのおかげでいつの間にかアタシの震えは止まっていた。
ただ、相手の学園の選手はどうやらアタシらが女だけしか出場していないのがお気に召さないようだ。
なかなか舐めた口を利いてきたので、全力でボコってやることを決めた。
試合開始には選手紹介もあるようで、アタシらは一応可憐に振る舞うことができたと思う。
ただ、サクの紹介があまりに失礼過ぎてマイカが激オコ中だ。
そんな激オコ中のマイカが第一試合に選ばれた。
結果は一瞬で勝利。
激オコ中のマイカに勝てる奴なんてこの世にいないと思う。
そして第二試合ではまさかのメイナが負けてしまった。
相手の不思議なギアメタルの性能で成す術もなく倒れてしまった。
しかも命の危険があるという。
なんとか助けたいけどアタシらにはどうすることもできない。
救急室という場所に運び込まれるメイナを見送ることしかできなかった。
そして何事もなかったかのように第三試合が開始された。
第三試合はアタシの番だった。
会場へと上がり、試合開始と同時にアタシのギアメタル、スイリュウに魔動力を流し込んでいく。
まだ抜刀はせずに刀の柄を持ち相手を見据え、静かなる闘志を心に宿して身構える。
「君、強そうだねぇ」
「それはどうも」
「でも僕は一回戦で戦った子とやってみたかったな。あっちの方が強そうだし」
「それは残念ながら叶いません。なぜなら……」
「……え? ぐはっ?!」
アクアブースト
この技は全身の力を抜き、脱力した状態から一気に魔動力を爆発させて切り伏せる抜刀術だ。
アタシは静かに流れる水のように、相手を切って走り抜けた。
「……アタクシ程度の者に負けるような方が、マイカちゃんには敵いませんもの」
「しょ、勝者、アズサ・アブリエル選手! 全く目で追えませんでしたぁあ! 誰かこの会場に今の動きを追えた者はいるのでしょうかぁあああ!」
大歓声中アタシは何食わぬ顔でハズキとハイタッチをする。
そして次の試合はハズキだった。
相変わらずハズキの攻撃は派手で火力重視。
その豪快かつ、多彩な連続攻撃に相手は成す術もなかった。
試合後、すぐにアタシらはメイナが入った救急室へと来ていた。
それなりの時間を待っていたところ、なぜかさっきまでアタシの隣にいたはずのサクが中から現れた。
「サク! メイナは?!」
マイカの問いに、中を指さして応えるサク。
その様子を見て、さっきまでのサクが違うサクだったと知る。
中に入ると、メイナは眠っていた。
命に別状もなく、後遺症なども残らないという。
「あんな治療方法があったなんて……我々は知らなかったぞ」
「あの子はとんでもない逸材だ……」
医療班の人たちのそんな会話が聞こえてきたことで、アタシはサクがまたとんでもないことをやらかしたのだと確信したのだった。
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