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A24 殺される?!

別ルート編です。

 アタシらが全力の土下座をぶちかましていたところ、ふと隣に気配を感じた。

 ちらっと顔を向けてみると、そこにはアタシらと同じように床へ額を擦り付けるマイカの姿があった。


「マイカちゃん?!」

「そんな簡単に侯爵家の方が頭を下げては……」


 ハズキの言う通り、侯爵家の人間がこんな姿をさらしては家系に傷をつけることになってしまう。


「昔のアタクシも今のアズサちゃんやハズキちゃんのように、サクに追いつきたくて必死でした。でもそれは、大切な人を守りたいというこの想いからでしたの。お二人も一緒でしょ?」


 そう、アタシらの目的はミサキとホノカを探し出すこと。

 そのために今までがむしゃらに頑張ってきたのだ。


「はい……サクちゃん、ワタクシたちにはどうしても探したい方々がいますの」

「その方々はアタクシたちにとって、とても大切な方々なのです……だからどうしてもアタクシたちは強くなりたいのです……」

「どうか、この通りですの!」

「お願いいたしますわ!」

「サク、アタクシからもお願いです」


 この2人もたまたまだけど、見つけることができた。

 それならこんな感じでミサキとホノカも見つけたい。

 たとえ記憶がなくても、人間性は変わらないはずだから。


 サクが本当にサクヤなら、実はもう結果はわかっている。


「ふふふ。サクはこう見えて、困っている子は放っておけないんですよ?」

「……はい、それはなんとなくわかりますの」

「まだ付き合いは短いのですけど、なぜかそれはわかります……しかし、アタクシたちはそのサクちゃんの優しさに付け込もうとしています」

「そうですの……ワタクシたちは卑怯者ですの」

「そんなこと……」


 そう、あんなに無愛想なサクヤだけど実はとても優しいことをアタシらは知っている。

 多分お願いしたらそれを断ることはしないはずなのだ……それをわかった上でお願いしているんだから、ハズキの言う通りアタシらは卑怯者だ。


「あ、そういうことですね! サク!」

「え?! マイカちゃん突然どうしたのですか?」

「大丈夫ですよ。サクはやってくれます!」

「一体どういうことですか?」

「それはですねぇ……あの子、睡眠はきちんと取りたい子なのですよ。だから夜遅くまでやっているお2人の訓練には参加したくないのだと思います! 後は多分、お風呂の後に訓練をやりたくないとかですかね?」


 この2人、アタシらが夜遅くまで訓練をしていることを知っていたのか?!

 でもさすがにそこまで迷惑をかけるつもりはなかった……あ、いいことを思いついたぞ!


「なるほど! それならアタクシたちも……Dクラスへ移動いたしますわ!」

「うぇええ?! いや、それは……いくらなんでも無謀では?!」

「それがいいですの! もう決めましたの!」

「お2人ともぉ……これは大変なことになりますよ……」



 次の日、早速アタシらは先生にクラス替えの申請を行った。

 まぁ、当然のごとく断られたけどね。


 それでもSクラスの特権を生かして教職塔まで乗り込み、直接理事長の勇者カミキ様のところまで行って直談判を行った。


 正直アタシはマイカの件を全然許していない。

 むしろそれを聞いた今では嫌悪感しか抱かない。

 そんな相手でも一応はこの学園のトップ、だからこそアタシらは凛とした態度で真っすぐに、率直に言葉を述べた。


 すると勇者カミキ様は大笑いしながら許可を出してくれた。

 もちろん条件付きではあったけど、事実上のクラス移動を認めてくれたのだ。


「Sクラスから指定の共同訓練と、いうことで今日からこちらのクラスで一緒に訓練をさせていただきます、アズサ・アブリエルです! どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」

「同じくハズキ・イエスタリと申しますの! 仲良くしてほしいですの!」


 アタシらは溢れる笑顔で元気に挨拶をした。


 でも元気が良かったのはそこまでで、訓練場に移動してからは空いた口が塞がらなかった。


「いっきますよぉ! せぇ――い!」

「うぎゃぁあああ?!」

「ぐひゃぁあああ?!」

「ぼひゃぁあああ?!」


「「え――――?!」」


 アタシらが叫ぶのは仕方がないと思う。

 だって、始まっていきなり人が綺麗な放物線を描きながら宙を舞っているのだ。


「こ……これは一体なにが起こっておりますの?!」

「この光景は一体、なんですか?!」

「「なんですのぉおおおおお?!」」


 マイカ一人に向けて、全員の男子が飛び掛かりフルボッコにしようとするんだけど、逆にそいつらがボコボコに殴り飛ばされている。


 ただ男子どもは壁や天井、床などに激突しながらもすぐに立ち上がり、再び全力でマイカへと向かっている。


 その凄まじい気迫と迫力に完全に圧倒されてしまっている。


 正直厳しい訓練を体験してきたアタシらにとっては、多少厳しくても耐えられないことはないはずだと高を括っていたのだ。


 だけど、今見ているこれは次元が違う。

 下手をすると命がけだ……やばい、帰りたくなってきた。


「あ、お2人も一緒にどうです? まだ準備運動ですけれど」

「「え――――?!」」


 今マイカから信じられない言葉が出てきた。

 これが準備運動?!

 準備運動とは一体?!


 アタシの知る準備運動というのは、体を温めて筋肉を伸ばし、怪我を防止したりスムーズな体の動きを作ったりするためのものであり、決して人をボコボコに殴り飛ばすものではない。


「まずは準備運動の組み手ですよっ! さぁどちらから参ります?」

「「ひぃいいいいい?!」」


 このマイカの可愛い微笑みが今は恐怖でしかない。

 殺される……多分抱き合って震えているアタシらは同じことを考えていることだろう。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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