A22 気が付くと傍に
別ルート編です。
ここ最近のアタシとハズキはすっかり怠け者に戻ってしまっている。
まぁ一応真面目には訓練をやっているんだけど、自分たちの限界が見えてしまった。
そんなある日、定期の能力測定診断の日がやってきた。
いつも通りやっていればどうせアタシとハズキがトップだ。
それぞれクラスごとに測定の場所は別れているんだけど、何処かの訓練場で突然「巨大な竜巻」が起こって生徒が巻き込まれたらしい。
幸いにも生徒たちは「全員が無傷」だったとか。
それを聞いた時にアタシらはピンときてしまった。
この巨大な障壁で覆われた学園の敷地内で、巨大な竜巻が突然起こるはずもないし、それに巻き込まれた生徒が無傷なはずもない。
多分、あの2人がなにかやらかしやがったな……。
アタシとハズキは互いに苦笑いするしかなかった。
その夜、2人に話を聞いてみると案の定アタシらの想像が当たっていた。
まぁマイカは関係なくて、原因はサク1人のせいだったけどな。
「……それで、あの竜巻騒ぎだったわけですか」
つ~か、どうやったら反復横跳びで竜巻が起きるんだろうか……。
「サクちゃん……恐ろしい子ですの」
同じことをハズキも思ったらしい。
「そうなんですよぉ、それで最終的には最下位を免れたのですが……」
「まさかのDクラスの方々がほとんど中位を占めてしまっていて、クラス内ではサクちゃんが最下位だったと……」
だから今日は夕食を抜くという決まりだったらしい。
でも普段からサクの爆食を見ているだけに、心配でならない。
「だからといって……ご飯抜きだなんて……」
「誰も止めていないのに、頑なに食べようとしないのですよぉ。まさか先生もサクが最下位になるだなんて想像もしていなかったようで……必死にあれは冗談だって言われておりました」
「あの……サクちゃん? みなさんもこう言っておられますの! 食べないのは体がもちませんの!」
「そうです! ご一緒に食べましょう?」
「……」
アタシら3人が説得しても、その日サクが夕食に口を付けることはなかった。
しかしその翌日には夕食分を取り戻すかのごとく、いつもの3倍分の朝食を取っている姿を見て安心したのだった。
そしてついにギアバトル闘技大会の選考会が始まった。
この選考会にはSクラス1年から3年までの全員15名。
それにAクラスから10名、Bクラスから5名、Cクラスは0名。
そしてまさかのDクラスから2名の参加が決まった。
当初、その事実に学園中が大騒ぎだった。
いたるところから、嫌味や妬みに満ち溢れた悪口が飛び交う。
特にA~Cクラスの方は暴動が起きかけたとまで聞いている。
まぁアタシらのクラスのSクラスでもそれは同じだったけどな。
一応必死に自分が頑張って上り詰めてやっと手に入れた選考資格を、一番最底辺のDクラスに持っていかれたのだ。
アタシらにしてみても、今まで必死に努力を積み重ねてきたつもりだ。
それでも遠く及ばない実力差を見せつけられている。
でもそれは、あの2人がアトラス大迷宮で常に命がけの戦いをしてきた結果だと知っている。
アタシらは与えられた施設でちょっとの努力をしていただけ。
それすらもやってこなかったヤツらが、マイカとサクのことを悪く言うのはお門違いもいいところだ。
でもその事実を知っているのはアタシらだけだしな。
高貴な貴族様どもは我慢ならなかったようだ。
そのせいなのか、選考会の組み合わせがひどいもんだった。
ブロックに分かれてのバトルロイヤル形式はいいとして、それぞれ2人が戦うブロックは全員がSクラスのメンバーだ。
逆にアタシらの方にはAクラスやBクラスの人たちしかいない。
これは意図的に仕組まれたもので間違いないだろう。
「このブロック表は一体どういうことなんですの?!」
「これではあまりにDクラスのお2人が可哀想ではありませんか!」
アタシらが声を上げるも、それに賛同する者など1人もいなかった。
そして選考会議場までやってきた。
「まったく納得できませんの!」
「そうですわ! さすがにあんまりです!」
アタシらは未だに怒りが収まらずにいた。
「お、お2人とも……そんなに怒らなくても大丈夫ですよ! アタクシたちは慣れていますから」
「慣れている?! まさか、普段からこのような理不尽な扱いを?!」
「ますます許せませんの!」
「あ、あわあわ……」
Dクラスに対しての仕打ちがあまりにひどい。
これが済んだら、一度徹底的に調べてみようと思った。
「幸いにもこの4人が戦い合うことはございませんが……」
「確かにそれだけは救いですの……さすがにお友達とは戦いたくなかったですの」
「お2人はギアバトル闘技大会に出るために頑張ってきたんですものね! アタクシたちも理由は違いますが、どうしてもそれに出場しなくてはならないのです!」
「わかっていますの! それぞれの目標のために、この4人で絶対に勝ち上がりますの!」
「はい! 一緒に頑張りましょうね!」
そう、2人もなぜかギアバトル闘技大会へどうしても出場したいと言い出した。
理由は聞いていないけど、どうせ出るならこの4人で一緒に出たいと思う。
そして一回戦が始まった。
まずはサクがいるブロックだ。
まぁ案の定というか、想定通りというか全員がサク1人だけをターゲットに攻撃し始めた。
普通なら胸糞展開に突入なんだけど、アタシらはサクがアイツらよりも断然強いことを知っている。
その証拠にマイカが全く心配していない。
しかし、突然そのマイカがうろたえ出して走り出した。
「サ、サク! パンツ! パンツ見えてるから! そっちを隠してよ!」
『そういえば変態触手やろうがウチのクラスにいたな……確かになんでサクはフードを必死に押さえてスカートは押さえないんだ?』
『いやその前に、なんでスカートの下にズボン履いてないねん! そんなやつ初めて見たわ!』
ハズキとそんなやり取りをしていたら、サクのフードの中から見覚えのある桜色のマフラーがヒラリと見えた。
『ハズキ、あれ!』
『あれは……まさか』
『『サクヤ?!』』
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