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A21 冷めた日常

別ルート編です。

一気に数話続きます。

 マイカの部屋へとやってきたアタシらはノックをして中へ入る。


 部屋の中ではベッドの上でサクが横になり、そのそばにはマイカが肘をついて寛いでいた。

 サクはベッドで横になっているというのにいつも通り白いフードを被って顔を隠している。


 あれいつ脱ぐんだろう……脱ぐことあんの?

 まぁ気になることは多いけど、とりあえず声をかける。


「マイカちゃん、サクちゃん、お邪魔します! 本日はお休みをされていたとクラスの人たちにお聞きしましたので、お見舞いに参りました」

「ご機嫌いかがですの?」

「アズサちゃんにハズキちゃん、昨日はどうもありがとうございました。おかげで助かりました……」


 マイカが凄く申し訳なさそうに頭を下げる。


「いえいえ、ワタクシたちが勝手にやったことですの」

「そうですわ! 結局はサクちゃんに助けていただきましたしね!」

「お強いとはお聞きしておりましたけど、まさかあそこまでとは思いませんでしたの」

「はい! あんなに体が柔らかくて人間離れした動きは見たことがございませんでしたわ」

「あれはワタクシたち以上に、敵の方たちの方が驚いていらっしゃいましたの!」

「まぁだからこそアタクシたちは勝てたのですが……」


 マイカはサクに命の危険が迫っていると焦っていたらしいけど、アタシを助けにきてくれたのは事実だから素直にそのお礼を言った。


 それに対して全くの無反応なサク。

 マイカも引きつった顔をしている。


「ま、まぁそれは置いておいて、ご飯でも食べに参りませんか?」

「そうですわね!」

「食堂へ行きますの!」


 そういうとサクが体を起こしていたけど、その動きはいつもと違ってかなり弱弱しかった。


 マイカの支えなしでは起き上がることもできないような状態みたいだったし。


 食欲は相変わらずだったけど……。


 ただ、その様子を見る限りは昨日アタシらを助けてくれた人とはどうしても同一人物に見えなかったのだ。


 そして、アタシらは夕食を取りながらマイカにことの顛末を聞いた。


 まず、マイカは家族に命を狙われていたこと。

 その家族の暗躍で、アトラス大迷宮での課外授業でハメられたこと。

 なんとか生き残って学園に戻ったけど、今度は妹が暗殺者を仕向けていること。

 おそらくそれが昨日の暗殺集団だったことを聞いた。


 そして、サクが連れて行ったその暗殺集団たちは少し目を離したすきに全員が殺されていたこと。


 おそらく口封じかなにかだとマイカは言っていた。


 いろいろと巻き込んで申し訳ないとマイカは頭を下げていたけど、そのマイカが一番の被害者だと思う。


 2人と別れたアタシらは部屋でゆっくりと話をしていた。


『マイカにあんな事情があったなんてな……』

『自分の娘殺そうとするなんてどんな親父やねん。ド突きたいわ』

『サクも昨日と全然様子が違ったな』

『せやなぁ……あの子に関してはホンマに謎や。やっぱ2人おるんとちゃうか?』

『バカか……とも言い切れねぇわ。それより、神やら使徒やら封印やらの話はどうみる?』

『いきなり話がぶっ飛びすぎやねんて……でも、それが真実ならえらいこっちゃで』

『なんでだ?』

『だって考えてみ? あの使徒とか名乗った2人はこの世界が平和になることを困る言うてたんやろ?』

『あ、あぁ』

『ならこの異常な世界は何者かによって意図的に作り替えられたってことやろ?』

『っ?! おまっ……さては天才か?!』

『褒めてもアメちゃんやらへんぞ? おそらくそれがアイツらの従えている神ってやつやねん』

『なるほどな……んで、その神が封印したものを解こうとしているやつらがこの世界にいるってことか?』

『あぁ、おそらくウチらの知るこの世界の神は神話通りの平和を願う良い神やってん。でも別の悪い神に封印されてもうて、この世界が乗っ取られてしもうたんや。そやけど、この世界を平和にしようとする影の暗躍者がどこかに絶対おるねんて!』


 熱くなると話が飛躍してくるのがハズキの悪いくせでもあるけど、今の話が大方間違っているとも言い切れない。


 あの使徒の存在。

 それにアタシら転生者を犠牲者だと言っていたあの言葉。


 それはアタシらの命がその封印となんらかの因果関係を持っている可能性があるということだ。


 もしかしたら、ミサキとホノカの2人も前世の記憶がないのかもしれない。

 そうだとすると今までアタシらが探し回った家系の中に、実は2人がいたのかもしれない。

 本当はアタシらと同じようにこの学園に入った生徒たちの中にいたのかもしれない。

 嫌いだと思っていたあの子が、実はあの2人のどちらかなのかもしれない


 悪い方にばかり思考が傾いてしまう。


『今わからんことをいくら考えてもしゃ~ないねん。ウチらはただ信じて探すだけやろ?』

『……そうだな。ウジウジ考えんのもガラじゃねぇわ!』

『そういうこっちゃ! 後のことは探し出してから考えたらええねん!』


 本当にこの子はいつも弱いアタシを導いてくれる。

 自分1人だけだったらここまで頑張れなかった。

 ハズキがいるからアタシも強くいられる。


 この子と一緒なら、どこまでもいける気がする。



 それから特に何事もなく数日を過ごしているんだけど、最近アタシらはイマイチ訓練に身が入っていなかった。


 それもこれも、アタシらが今やっている魔動兵団との訓練に飽きていたからだ。

 というよりも、ものすごく物足りなさを感じている。


 アタシらもいろいろと経験を重ねてきた結果だろうけど、あれだけ憧れの眼差しで見ていた魔動兵団の人たちが、今ではとても弱いと思えてしまうのだ。


 確実にマイカやサクの方が圧倒的に強いしな。

 アタシらでもその辺の人らになら勝てる自信がある。


 そんな人らが偉そうに訓練の指示を出すもんだから正直冷めた目でしか見られない。


 おいおいハズキ、その目はさすがにバカにし過ぎだぞ?

 あ……水溜まりに映った自分も同じ目をしていたわ。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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