A20 あの子が2人?!
別ルート編です。
キリのいいところまで進めていきます。
無防備なアタシへ向かって、2人の魔の手が迫っていた。
あ……捕まる。
そう思って目を閉じた瞬間に2人の悲鳴が聞こえた。
『ぐあっ?!』
『ぐはっ?!』
なに事かと思って目を開けてみると、目の前には見覚えのある白いフードを深く被った人物がアタシの前に立っていた。
「サクちゃん?! どうしてここに?!」
「……」
相変わらず返答はないけど、蹲る2人を見る限りこの子が助けてくれたということだろう。
「ア、アズサちゃん! ご無事ですの?!」
そして、息を切らしながらハズキも戻ってきた。
「マイカちゃんはご無事でしたか?」
「はぁ、はぁ……はい。ワタクシが駆け付けた時にはもうほとんどマイカちゃんとサクちゃんがやっつけておりましたの」
「そ、そうでしたか……」
「マイカちゃんはなにやら血相を変えて別の場所へと向かわれましたので、ワタクシはここに戻って参りました」
「え?! マイカちゃんお1人で大丈夫なのです?!」
「アズサちゃん……マイカちゃんはもうワタクシたちの知る、昔のマイカちゃんではありませんでしたよ。今のマイカちゃんは、おそらくワタクシたちよりも遥かにお強いですの」
え、マジで?!
でもハズキの目は冗談を言っている時の目ではない。
まぁそれなら心配しなくても大丈夫……なのか?
それなら後はこいつらを倒すだけだ!
「ハズキちゃん! アタクシたちは2人でやりましょう!」
「えぇ、アズサちゃん! ワタクシたちも戦いますの!」
アタシとハズキは再びギアメタルに魔動力を流し込んでいく。
「っ……いてぇ。あの方にもらったこれ、ちゃんと動いているよな?」
「あぁ……でもあの白いチビの攻撃がそれ以上だってことだろ? 信じられねぇけど」
なにやら喋っているけど、アタシらはそれに構わず今出せる全力の魔法を発動しようとしていた。
「フレイムバースト」
「ハイドロバースト」
ハズキは溢れる闘志を爆轟に変えてそれを拳に込める。
アタシも静かなる闘志を水爆に変えてそれを剣に込める。
アタシとハズキの違うようで同じ技。
ずっと一緒に考えていっぱい練習して一緒に高めてきた最高の技だ。
「くそ、ターゲットも殺せていないのはさすがにマズイぞ」
「さっさと終わらせてターゲットを殺しに行こう」
「あぁ……てっ?! おい、おまえその指輪取んなよ!」
「嘘だろ?! いつの間にいたんだこの白いチビ!」
「それよりもマズイって! おい、それマジで返……せ?」
「お……おまえ今、首が一周回らなかったか?!」
「オレの目がおかしいのか?! 腕と足が分離しているように見えるんだが……」
「「ぎ……ぎゃぁああああああああ?!」」
サクが奇想天外な動きをしてくれたおかげで、アタシらの攻撃が見事に直撃した。
ちなみに、アタシの目にもサクがあいつらと同じように見えていたような気がしたけど、考えないようにしておこう。
暗闇でよく見えなかったから、この子はとても体が柔らかいのだと無理やり結論付けた。
うん、絶対にそうだ。
そうでないとありえない。
誰がなんと言おうとそうなのだ。
あの2人はとりあえず気絶してしまったから、他の人たちと同じようにサクちゃんがグルグル巻きに拘束してしまった。
その時も体のいろんなところから糸を出していたような気がしたけど、それも無理やり見て見ぬフリをした。
それからサクは【後は任せて】という文字を書いてアタシらに見せ、拘束した者たち全員を引っ張りながらどこかへと行ってしまった。
とりあえず危険はさったと思ったヘトヘトのアタシらは寮の部屋へと戻り、すぐに2人でお風呂に入ってそのままベッドへと倒れ込んだ。
いろいろと話したいこともあったけど、さすがに疲れ果ててしまっていたのだ。
次の日、眠たい目を擦りながらもなんとか一日の訓練を終える。
その合間にアタシらは昨日それぞれお互いに起こったことを伝え合っていた。
ハズキはアタシと別れた後、真っすぐにマイカの部屋に向けて走っていた。
すると、寮の表門付近で動く人影が見えたらしい。
ハズキがその場へ到着すると、なんとマイカとサクが暗殺部隊を相手に戦っているところだったという。
そこでハズキは、マイカの強さの片鱗を見ていた。
迫りくる多人数の敵を、自分たちとは比べ物にならないほどの練成された魔法と無駄のない動きで瞬く間に戦闘不能にしてしまっていたという。
その動きはハズキでも目で追うのがやっとのことだったらしい。
その後、ハズキにお礼を言ったマイカはとても焦ったような様子で「サクに命の危険が迫っています! ごめんなさい」といって飛び出して行ってしまったという。
その当の本人であるサクとは先ほどまで一緒に戦っていたというのにだ。
しかもそのサクを置いて一人で突っ走って行ってしまったらしい。
だけど、ハズキはアタシのこともあったからあまり深くは考えず、取り残されたサクにアタシの命が危ないことを告げると、なぜか一緒に戻ってきてくれたらしい。
『なんだそれ……まるでサクが2人いるみてぇな言い方じゃねぇかよ』
『ウチも混乱しまくっとんねん』
『でも確かにあの時のサクはとても人の動きじゃなかったけどな』
『それもやけど、ウチはおまえから聞いた話の方で頭が狂いそうやで……なんやねん、神とか使徒とか封印とか』
『あぁ……アタシもまだ整理できてねぇよ』
寮へと戻りながらそんな会話をしていた。
その途中で以前アタシらがボコったDクラスの奴らを見かけた。
「あら? あれは以前お見掛けしたDクラスの方々ではありませんか?」
「あら、本当ですの。マイカちゃんたちはいらっしゃらないみたいですの」
「えぇ、お話を聞いてみましょう!」
「ご無沙汰しております、みなさま」
「「「ひぃいいい?!」」」
人の顔を見た瞬間に怖がるなんて失礼な奴らだなオイ。
もう一回ブチのめしてやろうか。
「アズサちゃん、顔が怖いですの……。マイカ様とサク様が見えないようですが、一緒ではございませんの?」
「き、ききき今日は来てねぇ……です」
「お休みをされたということですの?」
「そ、そそそうだよ……です」
挙動不審すぎんだろこいつら……やっぱもう一発ぶん殴ってやろうか。
「だから顔が怖いですってアズサちゃん……わかりましたの。それではワタクシたちはこれで、ごきげんよう」
「……」
そしてアタシらはマイカたちの部屋へと向かった。
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