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069 だれがぶあいそうだ

――そして大会当日。


「これより、ギアバトル闘技大会を開催する!」


 マイカの父親である、あのおっさんの開催宣言で大会は始まった。


 この大会は学園同士、チーム戦でトーナメントを争うことになる。


 各学園から5名ずつ順番に戦い、先に3勝した方が勝ちというルール。


 中央のバトルスタジアムには木や建物などが造成されたステージがあり、それが試合ごとにランダムで入れ替わる仕組みになっている。


 また、出場者も試合前のくじ引きで順番が割り当てられるので、誰が何番目に戦うか直前まで分からない。


 まぁある意味妥当な戦いなのかもね。

 チーム内で戦わない人が出ないようにしてんだわ。


 自分たちで順番を決めてよかったら、うちの妹っ子は絶対に最前線で戦うことはしないはずだしね。


 私らマキシム学園の最初の相手は、リスリルという東の国にあるロドリグ学園というところだ。


 相手の生徒たちは全員が男子。

 対して、こちらは全員が女子だ。


 というか、他の国を見てもやはり男子生徒が多いのよ。


 全員が女子なんてウチの学園だけじゃないかな?


「なんでぇ、一回戦からあのマキシム学園が相手だっていうから気合入っていたのによ~」

「まさか全員が女なんてやる気失せるねぇ……」

「しかもあいつら2年と1年らしいぜ? もうこれ勝っただろ。戦うまでもねぇよ」


 ロドリグ学園の生徒たちが次々にそんなことを口走る。


 それに対してウチの生徒たちはなにも言い返さない。


 逆に怖いわね……


 マイカはいつも通りのほほんとしているんだけど、あの2人は額に青筋が立っている。


 戦いが始まったらぶちのめしてやろうと考えている顔だ。


「ただいまより、第一試合を開始いたします。両選手はスタジアム横のベンチへお座りください!」


 会場中に響き渡るような音量でアナウンスが入る。


 ガラスのドームで覆われているからよく声が通るわね。


 それにしてもなんて綺麗な声……さながらウグイス嬢といったところかしら。


 一回だけお父さんの任務で野球のスタジアムに同行したことがあるけど、その時もこんな感じでウグイス嬢が喋っていた。


 ウグイス嬢に言われるがまま、私らはスタジアム横のベンチへと座る。


「それではここで選手のご紹介をさせていただきます。まず、マキシム学園の頂点に君臨しております、溢れる才能と超人的な強さを持った天才児のお2人、アズサ・アブリエル選手と、ハズキ・イエスタリ選手です!」


 ウグイス嬢が言い終えると、大きな歓声と拍手が巻き起こる。


 2人は立ち上がり、腰を曲げスカートをたくし上げて歓声に応えている。


「続きまして、我らが魔動兵団の団長であられるカス・カミキ様のご令嬢で姉妹になります、マイカ・カミキ選手に、メイナ・カミキ選手でございます。お2人とも勇者の名に恥じない実力の持ち主であると言われております」


 マイカと妹っ子も同じように声援に応える。

 妹っ子がすんごいマイカを睨んでいるけど。


「続きまして……エェ、どこからともなく突然現れた正体不明の奇妙な危険生物? ……その生体も実態も全くの未知数で謎に包まれている……らしいです……エェ、お名前は……ブアイソ? ……これ本当に合っていますか? エェ、ブアイソ選手です!」


 シーン。


 おい、この紹介文書いたやつ出てこい!

 誰が危険生物だ!

 誰が無愛想だ!

 なんで私だけ悪口なんだ!


 ないわぁ――。


 さっきまでの大歓声から一転、いきなり葬式みたくシーンとしちゃったよ。


 みんながポカーンとした顔をしている。


 ただ、妹っ子だけはとても満足気にニヤニヤしているけど。

 まさかこいつが?

 いや、違うな。

 あいつなら嫌いなマイカと姉妹だなんて書かないだろうし。


「つ、続きましてロドリグ学園の選手を紹介させていただきます……」


 たまらずウグイス嬢が話題を切り替えて、ロドリグ学園の紹介を始めると再び歓声が沸き上がっていくのだった。


 あれを書いたのはマジで誰だろうか……見つけて締め上げてやる。


 まぁ私が怒るのは当然として、どうして私よりもアンタの方が怒っているのかな?


 おいおい、その殺気はあのウグイス嬢に向けていいものではないよ?


「マ、マイカちゃん! お、お気持ちはわかりますが落ち着いてくださいまし!」

「そうですの! 深呼吸ですの! あの方に罪はありませんの!」

「お2人とも、そこをどいてくださいまし! ちょっとあの礼儀知らずなお姉さんに物申してくるだけです!」

「だったらその物騒なギアメタルを下ろしてくださいまし!」

「マイカちゃんが本気になったらワタクシたち2人では止めきれませんの!」


 なにやら騒いでいる3人を他所にロドリグ学園の紹介は終わる。


「それではただいまより、マキシム学園とロドリグ学園の試合を開始いたします! 第一回戦のバトルスタジアムは、岩だらけの岩石地帯! この大小さまざまな岩をどう使いどう攻略するかがカギとなりそうです!」


 さっきまで喋っていたウグイス嬢と変わり、今度は解説のおじさんみたいな人がマイクで喋っている。


「それではみなさん、後ろの掲示板をご覧ください! 今からこちらに、第一試合の対戦選手が表示されます! 記念すべき第一試合は……マキシム学園、マイカ・カミキ選手対、ロドリグ学園、ロンド・ブリリアント選手です!」


 一際大きな歓声を受け、マイカは立ち上がる。


「丁度よかったですわ……少し八つ当たりをしてきます」

「が、頑張って? くださいまし……」

「ファ、ファイトー? ですの……」


 物騒なオーラを溢れ出したまま、マイカはスタジアムへと上がって行った。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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