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068 つかのまのかんこう

 それからまた数ヶ月が経った。


「せぇい!」

「はっ!」


 マイカとアズサが激しくギアメタル同士を衝突させる。


「……」

「きゃあ! ひぃいい! アズサちゃん、早く変わってくださいまし! ワタクシ死んでしまいますの!」


 私からハズキが逃げ惑う。


 正確には私の姿をしたスマコね。

 相も変わらずの光景……ではないわね。


 アズサはちゃんとマイカの動きに付いていけている。


 ハズキは何だかんだ言いながらもスマコの攻撃をうまく受けきれている。


 魔動力の扱いが上手くなってきた証拠だね。


「はぁ、はぁ、はぁ……し、死ぬかと思いましたの」

「はふぅ、死んでいないのだからいいではありませんか」

「お2人とも強くなりましたね! アタクシもとても嬉しいです!」

「……」


 2人がこのクラスの訓練に参加したのは、このDクラスにとってもいい影響を与えた。


 特に男子どもが必死だったね。


 あの2人に唯一対抗できていたのは頑丈さだけだったのに、それすらも一気に抜かれていったもんだから目が血走っていた。


 まぁそこは才能の差だからどうしようもないけどね。



 そんなこんなの日々を過ごし、ついにギアバトル闘技大会の日を迎える。


 私らは今、そのギアバトル闘技大会の会場までやってきた。


「す……すごいところですわね」

「えぇ、まさかこんな場所が存在しているとは思いませんでしたの」


 すっげぇ……これ全部ガラス? じゃないね、超強化ガラスといったところかな。


 このテンガラスという国は、とても小さい国だけどその全土を巨大な強化ガラスで覆っている。


 まるで巨大なガラスドームの中に入り込んじゃったみたいな世界感だ。


 その中央都心に作られたギアバトル闘技大会用のスタジアムもまた強化ガラスドームで覆われており、そこは中が見えないようになっていた。


 私らは今その中にいるんだけど、ここは本当に凄い。


 中央にある巨大なスタジアムの周りには飲食店や宿泊施設などが並んでいる。


 各国から5名の学生と引率の先生1人が宿泊する場所とは別に、各国の国王やその側近、また魔動兵団の上層部たちのために一際大きな宿泊施設も立てられている。


「ハズキちゃん! これを見てくださいまし! とても可愛いですよ?! あ、あっちにも!」

「サク! これも美味しそうですよ! あ、あれもいいですね!」

「……パクパクパクパクパクパクパクパク」


「アズサちゃん、はしゃぎ過ぎですの! マイカちゃん、食べ物を取り過ぎですの! サクちゃんはさっきから食べ過ぎですの! もうワタクシ1人では突っ込み切れませんのぉお!」


 大会を明日に備え、私らは束の間の観光を楽しんでいる。


 というかアンタら、気が緩みすぎよ。


《その小さいお口に大量の食べ物を詰め込んでいる、リスの口状態のサクヤ様がおっしゃると説得力がございませんが?》


 なにを言ってんのよ。

 これでも周りの警戒は怠っていないわよ?


《そうですね。しかし、それをやっているのは私なのですが?》


 まぁそう言いなさんな。

 スマコは私の一部なんでしょ?

 アンタがやっているってことは、私がやっているのと同じことじゃない。


《……》


 ふん、勝ったぜ……。

 それにしても周りは学生だらけね。

 いろいろな種類の制服が行き交っている。


 明日からこの子らが国の命運をかけた戦いを繰り広げるわけなのね。


 まぁ今の雰囲気は、前世でのスポーツの全国大会みたいな感じだけど。


 っ?!


《サクヤ様!》


 うん、あそこの子……魔族ね。


《はい》


 私が見るその先には、紫と黄色のフードを深く被った2人組の女の子がいた。


 早速遭遇できて良かったわ。


 あのクズのことを信用していないわけじゃないけどさ、こうして自分の目で確認するまではやっぱりどこか信じられなかったのよねぇ。


 これであのクズ神が言っていたことが本当だとわかったけど、どうしてこんな簡単に魔族が侵入しているの?!


 フードなんか被っちゃっていかにも怪しいじゃんよ!


《それをサクヤ様がおっしゃるのですか?》


 私はいいのよ!

 それにしても……あのはしゃぎようはすごいわね。


《はい……》


 フードで顔を隠しているというのに、大声でキャッキャとはしゃぎまくっていてかなり目立っている。


 正直うちの子たちよりもはしゃいじゃっているわね。


 そんなんでいいのか魔族よ。

 まぁ、でもあの子らはマークしておかなきゃね。


『桜飾、起動!』


 私は桜の花びらを2枚作り出して、それをあの子らの服の中へそっと忍ばせた。


「サク……あの子ら?」

「……ぅん」


 マイカも私の様子がおかしいことに気が付いてそっと耳打ちをしてきた。


「アズサちゃん……」

「えぇ……」


 気が付いたらあの2人も神妙な顔をしてあの子ら魔族の2人を見ていた。


 どうしてこの子らがあの魔族の2人を気にするのか気になるところだけど、今はいいか。


 近くにあの使徒の気配はないしね。


 その日の夜、私たちはそれぞれの部屋でゆったりとした時間を過ごしていた。


 せっかく豪華な1人部屋を用意してもらっているというのに、どうしてこいつは私の部屋から出ていかないのかな?


「サクッ! 早くおいで?」


 どうしてすでに私のベッドで待ち構えているのかな?


 というかアンタ服着なさいよ……まぁいいか。


《素直に嬉しいとおっしゃればいいではありませんか》


 うるさいわよ。

 私は服着て寝たい派なのよ。



 その日の夜。


「本当にあの作戦を実行するのですか? 自分は今でも反対であります」

「それでもわたしたちの目的のためには仕方ありませんわ」

「それはそうですが……それでも自分は」

『しつこいなぁもう! ちゃんと2人で決めたじゃん!』

『それでもやっぱり納得できない奴がここに約1名……』

『もういいよ!』

『う……』


 う、うぇえ?!

 また日本語?!

 この魔族2人も日本人だというの?!


 いきなりのことで思わず飛び起きると、私の上でスヤスヤ眠っていたマイカがベッドの下へと落下した。


 しかし、それでもマイカが起きることはなかった。


 2人の会話もしなくなったので、私もそのまま眠りについた。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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