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066 でしいり

 いきなり頭を下げて弟子入りを志願してくる2人。


「このポーズは今のアタクシたちにできる全力の敬意の表明です!」

「これ以上のお願いのやり方をワタクシたちは知りませんの! ですが、この気持ちは本物ですの!」


 いや、私も同じ日本人なんだから知っているよ。

 ジャパニーズ土下座でしょ?


 こんな綺麗な土下座を久しぶりに見た気がするよ。

 前世はOLさんだったのかな?


 そういえば同じクラスの子が、土下座の自慢をしていた気がするけど……もう忘れたわ。


 それよりも、ものすごくめんどくさい事になってしまった。


 それ以上強くなってどうするつもりなの?


 私自身も強くならなきゃいけないから、正直この子らの面倒なんて見てあげることはできない。


 ちょっとマイカさん?

 なんでアンタまで土下座しているの?


「マイカちゃん?!」

「そんな簡単に侯爵家の方が頭を下げては……」

「昔のアタクシも今のアズサちゃんやハズキちゃんのように、サクに追いつきたくて必死でした。でもそれは、大切な人を守りたいというこの想いからでしたの。お二人も一緒でしょ?」


「はい……サクちゃん、ワタクシたちにはどうしても探したい方々がいますの」

「その方々はアタクシたちにとって、とても大切な方々なのです……だからどうしてもアタクシたちは強くなりたいのです……」

「どうか、この通りですの!」

「お願いいたしますわ!」

「サク、アタクシからもお願いです」


 おぅふ……やめてくれ。


「ふふふ。サクはこう見えて、困っている子は放っておけないんですよ?」

「……はい、それはなんとなくわかりますの」

「まだ付き合いは短いのですけど、なぜかそれはわかります……しかし、アタクシたちはそのサクちゃんの優しさに付け込もうとしています」

「そうですの……ワタクシたちは卑怯者ですの」

「そんなこと……」


 なんか勝手に盛り上がっているところ悪いんだけどさ、私はまだやるなんて言っていないからね?


 私これでも睡眠はしっかり取りたい派なの!

 お風呂の後も動きたくない派なの!

 夜遅くまでやっているアンタらの自主練に付き合うなんて嫌なんだからね?!


《もう戯言は済みましたか?》


 誰が戯言だっ!


《相変わらず素直ではありませんね、サクヤ様》


 うるさいわよ。


「あ、そういうことですね! サク!」

「え?! マイカちゃん突然どうしたのですか?」

「大丈夫ですよ。サクはやってくれます!」

「一体どういうことですか?」

「それはですねぇ……ゴニョゴニョ」

「なるほど! それならアタクシたちも……ゴニョゴニョ」

「うぇええ?! いや、それは……」

「それがいいですの! もう決めましたの!」

「お2人ともぉ……これは大変なことになりますよ……」


 なにを思い付いたのか、とても悪い顔をしている2人。


 完全にマイカの思惑とは違った方向へ向かった感じね。


 私、どうなっても知らないよ?


――次の日。


「……と、いうことで今日からこちらのクラスで一緒に訓練をさせていただきます、アズサ・アブリエルです! どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」

「同じくハズキ・イエスタリと申しますの! 仲良くしてほしいですの!」


「……」


 まぁそりゃその反応するわよね。


 Sクラスという最高地位にいて、しかもギアバトル闘技大会に出場する超大物の2人がこの最底辺のDクラスにやってくるなんて。


 この2人、あろうことかDクラスにクラス替えをしろと先生たちに迫ったらしい。


 いくらこの2人のお願いでも、さすがに先生は了承しなかった。


 だからマイカの父親である、あのおっさんのところまで行って直談判したらしい。


 Sクラスにもなると、あの厳重警備の教職塔に入れるパスがあるらしいね。


 知らなかったわ……。


 そして直談判の結果、クラス替えとしてではなく一緒に訓練をするという許可をもらったらしい。


 ただし、表向きにはギアバトル闘技大会に出場することになった私とマイカに仕方なく訓練を付けるためだと口外することが条件だった。


 まぁ一応は妥当な理由になるわね。


 ギアバトル闘技大会はいわば全国の学園同士で争う戦争といってもいいのだから。


 それの勝敗でその国のランキングを決めてしまうほどにこの大会は重要視されている。


 だからこそ国を挙げてその選手たちに勝ち残ってもらおうとしてくるのだ。


 今更ながらそんな大会に私が出てもいいんだろうか。


 それに加えてこの2人も、もとは日本人だし。

 純粋な国の代表ってマイカと妹っ子だけよね。


 まぁいいか。


「そういうことなので、どうかよろしくお願いいたしますね!」

「よろしくお願いいたしますの!」


「……」


 完全にこの男どもはビビっているわね。

 この2人となんかあったの?


「……悪魔がやって来た……」


 どこからともなくボソッとそんな声も聞こえたし。


「んまぁ……そういうこった。死ぬなよ、クソ野郎ども」


 この先生ですらこんな調子だし……いつもの悪口もキレがないわね。


 しかし、それから間もなくしていつも通りの訓練を始めると、今度は2人の方が驚く番だった。


「こ……これは一体なにが起こっておりますの?!」

「この光景は一体、なんですか?!」

「「なんですのぉおおおおお?!」」


 見事なハモリでございますわね、お2人さん。

 まぁそりゃこの訓練見たらドン引きだわね。


「いっきますよぉ! せぇ――い!」

「うぎゃぁあああ?!」

「ぐひゃぁあああ?!」

「ぼひゃぁあああ?!」


「「え――――?!」」


「あ、お2人も一緒にどうです? まだ準備運動ですけれど」


「「え――――?!」」


 もうここまで2人の反応がいいと逆に気持ちがいいわね。


 まぁ普通は生徒がこんなにあちこち吹き飛んだり、壁や地面にめり込んだりしないからね。


「まずは準備運動の組み手ですよっ! さぁどちらから参ります?」

「「ひぃいいいいい?!」」

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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