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064 しりかくさず

 私らは学園内にある大きな闘技場までやってきた。

 ここで選考会が行われるようだ。


「まったく納得できませんの!」

「そうですわ! さすがにあんまりです!」

「お、お2人とも……そんなに怒らなくても大丈夫ですよ! アタクシたちは慣れていますから」

「慣れている?! まさか、普段からこのような理不尽な扱いを?!」

「ますます許せませんの!」

「あ、あわあわ……」


 アンタねぇ……そんな目で私を見ないでよね。

 今のこの2人になにを言っても火に油よ。


「幸いにもこの4人が戦い合うことはございませんが……」

「確かにそれだけは救いですの……さすがにお友達とは戦いたくなかったですの」

「お2人はギアバトル闘技大会に出るために頑張ってきたんですものね! アタクシたちも理由は違いますが、どうしてもそれに出場しなくてはならないのです!」

「わかっていますの! それぞれの目標のために、この4人で絶対に勝ち上がりますの!」

「はい! 一緒に頑張りましょうね!」


 マイカにはある程度の情報を伝えてあるけど、この2人には口を閉じてもらっていた。


 彼女たちには別の目的があって、今まで頑張ってきたことを私も知っている。


 だからこそこんなことには巻き込みたくなかったし、出来る限り内密に動きたかったのだ。


 とりあえず会場に入れさえすればこっちのもんだしね。


 まぁそのためにはまず、この選考会を勝ち上がらないといけないけど。


 この選考会での戦いでもやはりギアメタルを使用しなければならない。


 私には魔動力がなくて魔法が使えないことがわかっている。


 だから七つ道具を使っての忍術は使えないということ。


 さすがに空中機動術や分身の術などを使ってしまえば、いろいろと面倒になってしまうからね。


 私の戦闘スタイルは糸とか分身とか姑息な手を使っての戦い方だから、正々堂々と真剣勝負を持ち込まれると困るのよね。


 しかも魔動力のない私が、密かに強いという事実が噂になっているようで、それを調べようとする研究者みたいな人達もいるのよ。


 もちろんそんなやつらの尾行なんかすぐに撒けるから放っておいたんだけど、今回私がこの選考会に出るということで、その人らも目を光らせている。


 なんか物騒な大型の機械まで持ち込まれているし。

 なにあれ……ちょっと怖い。

 お願いだからそれ、こっちに向けないで?


「それでは、はじめっ!」


「ウラァアアア!」

「オラァアアア!」

「ハァアアアア!」

「死ねェエエエ!」

「消えちゃエエ!」

「このチビィイ!」


 ふぇ?!

 どうやら考えごとをしていた合間に、もう私の試合が始まっていたようだ。

 ていうか、誰がチビですか!


 私は今、闘技場の上に立っている。


 それにしても、これは一体どういうことかな?!

 確かバトルロイヤル形式で戦うんだったよね?!

 これ、おかしくないかな?

 どうして開始早々みんなが私一人だけを狙っているのかな?!

 明らかにこれ囲まれているよね?!


 いきなり6人から囲まれて攻撃をされている私。

 それに対して大盛り上がりの観客生徒たち。


 さすがに3年のSクラスの攻撃が5人分となるといくら転身機があっても、ちょっと分が悪いわね。


『忍気発動、50%』


 さて、どうしたもんかね?


「……くっ?!」

「なぜ攻撃があたらない?!」

「Dクラスの分際でぇ!」


 そりゃまぁ、躱しているからね。


 こいつら全員で攻撃しているくせに、全く連携が取れていないのよ。


 攻撃が統一されていない分、躱すのは簡単だしね。


 この学校の生徒はさぁ、自己中が多すぎだと思うのよ。


 まぁ自分の力だけが全てだったから仕方ないのかもしれないけどね。


 だから連携とか、力を合わせるとかいうことがよくわかっていないんだと思う。


 こうして私一人だけを狙って徹底的に痛めつけるつもりだったんだろうけど、お互いが邪魔し合っているだけだもんね。


 だからほら、こんな簡単に懐に入られる。


「なっ?! う、うそ……ぎゃんっ?!」


 私は1人の生徒の背後にまわり、腕を取って締め上げる。


 動きを止めたことをいいことに、そこへ他の人たちが一斉攻撃を仕掛けてきた。


「い、痛い痛い?! ちょっと待ってよ! アタシに当た……ぎゃあああ?!」


 あぁあ……味方のはずだったこの子にも躊躇なく魔法を当てちゃうのね。


 全く可愛げがない子たちだわ。


 無防備な女の子に容赦なく攻撃を当てておいて、とても満足気な顔をしている。


 最後には自分が勝てばそれでいいんだもんね。


 これじゃあ、まだDクラスの子らの方がマシだわ。


 あ、また普通に1人突っ込んでくるわ。

 私は再び、1人の背後へと周り腕を締め上げた。


「ふっふっふ、触ったな? 馬鹿が!」


 おわっ?!

 なになに?!

 これがこいつのギアメタル?!


 その人の腕に触れた瞬間、細いゴムのようなものがウネウネと私の腕から全身へと這いずり回り締め上げられた。


 そして、そのまま空中へと持ち上げられる。


 おっと、危うくフードが外れて顔を晒すところだったわよ。

 あぶない、あぶない。


「サ、サク! パンツ! パンツ見えてるから! そっちを隠してよ!」


 マイカが場外から飛び出してくる。

 女の子がパンツパンツ言うもんじゃないよ、全く。


《頭隠して尻隠さず……ですね、サクヤ様》


 嬉しそうに言わないでくれるかな?

 これゴムみたいで切れないのよ!


「こ、こいつ?! お、おい! このチビとんでもない力だ! 手伝え!」


 そいつはそういうと、同じようなウネウネしたゴムのようなものを他の人たちにも持たせる。


 そして全員で一気にそれを引き始めた。

 途端に全身をもっと強く締め上げられる。


 これ……普通の人間なら全身バラバラになるんじゃない?


《おっしゃる通りです。一般人ならまず内臓を圧迫されて全身の穴という穴から血液が噴き出し、その後に腕や足を引きちぎられて……》


 もういい!

 それ以上言わないで!

 想像したくないから!


「こいつ……鉄かなんかで出来てんのか?!」

「今の内に一斉攻撃だ!」

「俺に指図すんじゃねぇよ! でも確かにその通りだ、ウラァアアア!」

「ホワァアアア!」

「クソチビィイ!」


 だれがチビですか!

 それにしてもマジ動けねぇ……。


 無防備なパンツ丸出しの私に向かって、5人の放った魔法が迫る。


 ないわぁ――。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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