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063 まくはあがる

 おなか空いたなぁ……。

 結局私はあれからなにも食べなかった。


 なんだろ、別に私の大事なご飯を抜く理由はなかったんだけどね。

 まぁ結果的に私はDクラスで最下位。

 それが思いのほかショックだったのかもしれない。


 正直心に余裕があったのは認める。

 なにもせずに私はなんでもできてしまうと思っていた。


 その結果があれだったわけよ。


 それは、乙羽と出会う前の昔の私そのもの。

 私はまた昔と同じことを繰り返そうとしていたのかもしれない。


 そうならないよう自分自身に活を入れるため、しっかりとけじめをつける。

 しかもこの私が断食するなんて……ほぼ命がけもいいところだけどね。

 そうじゃないと意味がないし。


 今は気を紛らわすため、お風呂で長めの入浴タイムだ。


「サクってばぁ、意外と頑固なんだからぁ。ただでさえ細い体なのに、おなかと背中くっ付いちゃうよ?」

「……」

「サク? アタシそろそろ、のぼせそうだよぉ……」

「……ブクブクブクブク……」

「え?! サクッ?! サク――?!」


 うぉ……一瞬あの世にイキかけたような気がする。

 これがあれか……うわさのヒートショックってやつか。


《違います。ただのノボセでございます》


 おぅふ……おなかが空きすぎて冷静な判断もできやしないわ。


《それにしても3時間は浸かりすぎですよ。マイカ様は時々上がって水で体を冷やしておられたのでご無事でしたが》


 まぁそのおかげでもう朝だわ。

 これでやっとご飯が食べられる……。


 それにしても……せめて服くらいは着させてほしかったわね。


《お顔を真っ赤にしながらサクヤ様の全身を隅々までタオルで拭いておられる様子をじっくりと観察させていただきました》


 アンタはなんでそんなに嬉しそうなの?

 趣味悪いわよ?


《たまには私にも休養が必要なのでございます》


 休養って……アンタ最近さ、本当に人間らしさが増してきたわよね。

 まぁいいや、とりあえず私の胸を枕にして眠るこのマイカを降ろそう。


《枕というには少し……》


 少し……なんだってのよ!

 小さいとでも言いたいわけ?!


《まだそこまでは言っておりません。ただ自信を持って枕だと豪語できるその度胸に感服しているところでございます》


 くっ……ぐうの音も出やしない……。


「むにゃむにゃ……もう食べられないよぉ……」


 なんてベタな寝言を……て、ひぃいいい?!

 ちょ、ちょっと!

 そこで口を動かしちゃ……ダメッ!


「ふにゃむにゃ……このアイス……おいひい……」


 ひぃいいいいい?!


《ふむふむ……良き……》



「あっ……寝ちゃってた……サクッ?! いけない! まだ顔が赤い?! 今冷たいタオルをっ! あ、きゃぁああ?!」


 もう……好きにしてくれ。

 盛大にベッドからズッコケるマイカのおしりを眺めながら、私はそう思った。


 それから私はいつもの3倍朝ごはんを食べて、回復したのだった。



 数日後あの能力測定診断の結果でクラス替えがあった。

 クラス替えといってもSクラスからCクラスの生徒だけが対象でDクラスは関係ない。


 このDクラスの生徒は、基本的にずっとDクラスのままだからね。


 それは唯一クラス替えが起きるこの能力測定診断の結果をもってしても例外ではないようだ。


 ただ、私以外のほとんどが中位以上のランクにいるという異常事態であることに変わりはない。


 しかもマイカに関してはSクラスにも匹敵する上位レベルだ。

 人族領土にいる以上はギアメタルを使用した戦い方を強いられる。


 本当はギアメタルなんか使わない方がマイカは強い魔法を使えるんだけど、それがバレてしまうと人族領土にはいられなくなってしまう。


 だから制御された力だとわかっていてもマイカは杖みたいな見た目のギアメタルを使っている。


 その制限された状態で診断を受けた結果が上位Sクラス相当の能力値というわけ。


 完全にこの世界の人間としては逸脱した存在になってしまったわね。

 決して、私のせいではないはず……ないったらない!


 因みに、今回のクラス替えであの妹っ子がSクラス入りをしていたわね。

 もともとその実力は持っていたのに、マイカを葬り去るためだけにわざとAクラスに留まっていたのよ。


 あれから妹っ子のことは監視も盗聴もしていないからわからないけど、多分思っていたよりもマイカが強くなり過ぎていたから諦めたという感じかな?


 それにSクラスに入れば、1年生の妹っ子を含めた全員が選考会に参加できる決まりだからなんだと思う。


 Aクラスの1年生は、選考会に出られないらしいからね。



――そして、ついにギアバトル闘技大会の選考会が始まる。


「今回の選考会はいつも通りSクラスの全員15名と、Aクラスから10名、Bクラスから5名、Cクラスからは0名、そして……おまけが2名だ。各人5ブロックに分かれ、それぞれバトルロイヤル形式で戦ってもらう。そこで勝ち上がった者たちがギアバトル闘技大会への参加資格を得ることになる」


 おまけって……絶対私らのことだよね?

 まぁルールは簡単だね。

 ブロックごとに戦い合って1名を決めていくわけだ。


 それにしてもなんだよこのブロック表は……。


 約30人を5人に絞るんだから、ブロックが5つになるのは納得。

 そのブロックに各6名ずつ分かれることになるけど、おまけであるマイカと私がどこかのブロックに入り込むから2つのブロックが7名になるわけね。


 それぞれくじ引きでブロックを決めたはずなのに、私のブロックは私以外全員がSクラスの生徒。


 マイカのブロックも私と似たようなもんだわ。


 これ明らかに細工してんじゃん。

 そこまでして私らを勝たせたくないんかい……

 気持ちはわからんでもないけどさ。


 まぁこんな理不尽な状態でも異を唱える人は誰もいないんだけどね……2人を除いては。


「このブロック表は一体どういうことなんですの?!」

「これではあまりにDクラスのお2人が可哀想ではありませんか!」


 もちろんその声に賛同する者は誰もおらず、無情にも戦いの幕は上がるのだった。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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