061 でじゃぶ?!
ギアバトル闘技大会――それは人族全土にわたっての一大イベントらしい。
全ての国の学園から選び抜かれた強者たちが、トーナメントでその腕を競い合って頂点を決めるようだ。
それには各国の国王、それに魔動兵団の総団長であるあのおっさん、その部下の各国にいる隊長たちまでもが参加する。
国の代表として戦った選手たちがそこで頂点を取ることで、その国の力の差を浮き彫りにする目的もあるらしい。
選手としては、ギアバトル闘技大会に出場できるだけでもその注目度は各段に上がり、将来を約束されたような優遇を受けることになる。
魔動兵団への入団もほぼ確約、それにその能力に応じていきなり上位の職に就くこともできるらしい。
……つまりはあれね、オリンピックみたいなもんでしょ?
国を挙げての選手選抜をして、選手同士が戦って頂点を決めるみたいな。
まぁオリンピックと違うのは、その順位で国の上下関係まで決まるってことだね。
この世界は力こそ全ての世界だから、強いやつがいる国が一番強いってことなんだろう。
単純でアホらしい世界感だけど、まぁいいんじゃない?
ちなみに、今はこのルドラルガという国が国際ランキング1位らしいよ。
これは10年に1度しか開催されないらしいからね。
まぁ私にとっちゃその辺どうでもいいんだけどさぁ、そのギアバトル闘技大会にどうしても出る必要があんのよね。
それは、その会場に向こう側の神の使徒が魔族を引き連れてやってくるという情報をクズ神にもらったから。
しかも、その使徒が封印のクリスタルを持ってくるということだった。
別に出場しなくても、その場所まで行けばいいじゃんって思っていたけど、そうはいかないみたいね。
その闘技場みたいな場所は、厳しいセキュリティで管理され、常に許可された人だけしか入ることも、その中で行動することもできないということ。
その制限された中で行動するよりも普通に出場者として行動した方が、最も効率がいいという判断だ。
しかし、そのギアバトル闘技大会に出場するためにはまず出場者として選ばれる必要がある。
そのためにはまず、学園内で開催される選考会で勝ちあがる必要があるのよ。
今回なぜか、私ら2年のDクラスはその選考会に参加できるようになったから、クラスの代表としてマイカと私が出ることがもう決まっている。
まぁ全てはあのおっさんの悪だくみによるものだけどね。
おかげでSクラスからCクラスの人間たちはマイカと私を隙あらばぶちのめそうと必死だ……。
まぁ私はそこまで知られていないから、ほぼマイカ一人だけがターゲットになっているけどね。
ご愁傷様……。
「なんか最近、たくさんの人から睨まれている気がするのですけど……」
「まぁ……マイカちゃんだから話しますが、やはりみなさんはDクラスであるマイカちゃんとサクちゃんが選考会に出ることを認められないみたいですわね」
「Dクラスからの選考会出場はこの学園始まって以来、初めてのことらしいですの」
「特にアタクシたちのSクラスは高貴な貴族が多い者ですからね……」
「マイカちゃんはワタクシたちとの繋がりがあるので、他の方も下手に手を出すことはないかと思いますの」
「それでもやはり心配です……十分気を付けてくださいましね」
「は、はい……まぁ、いざとなったらサクがいますので!」
「そうですの! サクちゃんがいれば問題ないですの!」
なにやら外野がうるさいけど、私は今それどころじゃない。
今日の食後のデザートを何にするか真剣に悩んでいるんだ!
この抹茶風味の白玉パフェみたいなやつにするか……それともこの本日スペシャルデザートにすべきか……う~ん、迷うわぁ。
「サクちゃん……メニュー表が近すぎですわ。それは見えていらっしゃるのですか?」
「サク、たまにはアタクシにもそれくらい近くで顔を見せてほしいのです。そのメニュー表にアタクシはなりたい……」
「マ、マイカちゃん?! それ以上はやめておきますの! 折角の美人さんが台無しです……の……?」
「「……うん?!」」
「ん? お2人ともどうされたのですか?」
「い、いえ……なんだか昔、同じような会話をしたような気がいたしまして」
「えぇ、ワタクシもそう思いました」
『『デジャブだな』』
ぶほぉっ?!
おまえらいきなり日本語で喋るなよ。
ビックリするわぁ……しかもデジャブって。
「デ、デジャ……なんですか?」
「な、なんでもありませんの!」
「はい! 気にしないでください!」
――次の日。
私とマイカはいつも通り教室へと来ていた。
「おい、このクソ野郎ども。今日は能力測定診断だ。このクラスで一番ビリのやつは……晩飯抜きな」
「マジかよ!」
「ふざけんじゃねぇよ!」
「それはさすがに死んじゃうかもねぇ」
「死ぬ気でやろう……」
「むしろ先生死ねよ」
「ボクたちはやればできる!」
「いっちょぶちかますか!」
「……おい待て、今誰か俺に死ねって言わなかったか?」
「「「言ってません!」」」
このクラスは今日も元気だ。
私がいうのもなんだけどさ、結構みんないいところまでいくと思うよ。
まぁ夕食のために頑張んなさいな。
私は適当にやらせてもらおう。
そして、能力測定診断とやらが始まった。
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