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A17 日本人?!

別ルート編です。

少し表記を変えました 5/30

 この2人を見ていると、本当にオトハとサクヤを思い出す。


 あの独特な信頼関係の2人と、今のこの2人の雰囲気がピッタリと合うのだ。


「ところで、もしよかったらせめてお名前だけでもお聞かせ願えませんか?」

「確かに……マイカちゃんが以前呼ばれていたあれはちょっと失礼ですし」

「え? アタクシなんとお呼びしていましたっけ?」


 えぇ?!

 自分で「ちょっと不愛想な子」って呼びながら叫んでいたこと、まさか忘れたのか?!


「ひぃ?! な、なにやらまた悪寒が……」

「ど、どうしたんですの?! 大丈夫ですか?」

「あ、はい! 大丈夫ですよ! でも、もしかしたら明日も今日のような状態になっているかもしれませんが……ビックリしないようにお願いしますね」

「「は、はぁ……」」


 そういえば、なんであんな状態になっていたのかを聞きそびれてしまった。


 今から聞いてみようかなぁと思っていたら、マイカが先に口を開く。


「あ、今日はお部屋のお風呂ではなくて、みなさんで大浴場へ参りませんか?」

「あ……ごめんなさい。折角のお誘いで嬉しいのですけど、アタクシたちはこれから用事がございまして……」

「また今度、誘ってほしいですの!」

「そうですか……残念ですが仕方ありませんね! またご一緒しましょうね!」

「「はい!」」


 アタシらはこの後、いつもの自主訓練の時間だったからお風呂は断った。


 みんなでお風呂もいいけど、やっぱりお風呂は訓練後の方がいいしな。


 そういうことでいつもの場所で自主訓練をやっていたんだけど、その途中でハズキが話しかけてきた。


『それにしても、本当にあの子無愛想やったな! 最後まで一言も喋らへんかった……しっ!』

『くっ! あぁ、さすがにそれにはビックリした……なっ!』

『おっとっ! ……びっくりしたといえば、まさかマイカまであの子の名前知らんかってんな!』

『それにはアタシも驚いたわ』

『何年も一緒におって、そんなこともあるんやなぁ……』


 いつの間にかアタシらは訓練の手を止め、座ってそんな会話をしていた。


 そのまま自主訓練を終え、後片づけを済ませて外に出るともう真っ暗の状態だった。


 さすがに遅くなり過ぎたと思い、急いで寮へと戻る途中で突然アタシの足をハズキが止める。


「どうかし……?!」

「しっ……誰かいますの」


 ハズキの言葉に会話するのをやめ、ハズキが向かう先へ付いていく。


 すると、微かに会話をしている声が聞こえてきた。


『ここからの方が狙いやすいな』

『あぁ、このルートなら一番早く目的地に到着できる』

『ターゲットは女の子1人なんだろう? ここまで大袈裟にすることか?』

『あのお方の指示だ。俺らはそれに従うだけだろうが』


 アタシらはその男性2人の会話を聞いた瞬間に驚いた。

 なぜなら、日本語で会話を行っていたからだ。


『ったく、俺元はリーマンだっての。なんでこんなことしなくちゃいけないんだか……』

『まぁいいじゃねぇかよ。最低限の任務をこなしてりゃあ、いろいろと好き放題やれるんだ』

『まぁそうだな! 今回も俺らは好きにやらせてもらうか。くっくっく』

『それに今回のターゲットはとんでもねぇ美少女らしいからな!』


 こいつら……おそらくはアタシらと同じ日本人だ。

 じゃないとこんな日本語同士で会話することはできないはずだし。


 こっちの世界での生活で、思考が完全にヤバい方向へ向いてしまっているのだろう。


 前世では確実に犯罪となるような行為も、こっちの世界では結構許されてしまうことが多い。


 さすがに人族同士の殺人は罪になるけど、日本みたいに長期間監獄へ入れられることも死刑もなく、厳重注意くらいで済まされてしまうのだ。


 それよりも問題なのは、この世界の女の子は襲われるという警戒心がほとんどない。


 男の子からしてみても、別にそういった欲求がないからそういうことが起こらないだけなのだ。


 しかし、それが前世の記憶を持っている、もと日本人なら話は別だ。


 もちろんそういったことに自分の欲求をぶつけてしまうことができる世界なのだから、そういうふうに行動してしまうのも無理はないのかもしれない。


『んで、その美少女ちゃんはなんで殺しの対象になったんだ?』

『知らね。まぁこの国の勇者の娘らしいからな、いろいろあんだろ』

『勇者って子持ちなのかよ……俺らの世界観崩れるなぁ』

『名前は確か、マイカ・カミキだ』


 アタシとハズキは思わず見つめ合う。


『まぁそれはいい。それよりも、そいつはこの建物の最上階の部屋にいるらしいぞ』

『階段上がって一番奥の突き当りの部屋だそうだな』

『よし、ここまで分かればいいだろう。今日は退散だ』

『あぁ、明後日が楽しみだぜ』


 その2人の男性はそういうと、この周辺を囲っている高い塀を慣れた手つきで軽々と越えて行った。


 アタシらはしばらくその場から動けずにいたが、ハズキが先に口を開いた。


『あいつら……日本人やったな』

『そうだな……』

『他にもやっぱり転生者はおったんやな』

『あぁ……』

『でもあいつらは……もうダメや』

『アタシもそう思う。救えない領域までイッちまってるわ』

『なによりも……』

『あぁ……アタシらの大切な友達に手を出そうとしている』

『絶対にマイカはウチらで守るで』

『もちろんだ。絶対にあの子はアタシらで守ろう』


 思わぬところで同じ日本人との遭遇だったけど、それは喜ばしいものではなかった。


 この世界の秩序に犯され、日本人としては完全に間違った思想を持ってしまっている。


 アタシも日本人としての考えに固着しているわけではないけど、なにより人間として間違ってはいけないラインを越えちゃいけないと思っている。


 あいつらは明後日に来ると言っていた。

 それならこの場所で迎え撃とう。


 アタシとハズキがここにいる限り、マイカに手は出させない!

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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