表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/208

006 いせかい?!

 えっとぉ……スマコさんや?

 私がなんだって?


《乳児です》


 うん。

 どうやら聞き間違いではなかったらしい。


 なんで乳児?

 幼児でもなくて乳児?


《0歳児の体です》


 おぅふ……。

 一体どういうことよ……それにここはどこなの?


《アトラス大迷宮の内部です》


 アトラス大迷宮?

 どこの国?

 地球上でそんなもの聞いたことはないけど。


《現在位置、地球外》


 うん、まぁうすうすはそうじゃないかと思っていたさ。

 だっていまだにそこでドンパチやってるトナカイくんも狼くんもそうだけど、普通に考えてこんな化け物が地球上に存在しているはずがないんだよね。


 今スマコと話ながらもこのドンパチの様子を見てたけど、狼くんなんか口から火噴いてるし、トナカイくんなんか剣みたいな角振ったらその先に亀裂が入ってるし。


 実際に目の前でこんな戦い見せられたらもう諦めるしかないわ。


 あ、狼くんが勝った。

 当然今度はこっちに来るよねぇ……。


 ヤバいなぁ、スマコ、転身機はあるの?


《装着済みです》


 ならしばらくは持つかな?

 でも体が動かないんじゃいずれ転身機が持たなくなる。

 どうしようか。


《忍気が発動可能です》


 忍気?!

 でもあれは病気になってから全く発動しなくなったよ?


《大丈夫です》


 まぁスマコが言うなら試してみよう。

 どちらにしてもそれしか方法はなさそうだし。



――我らが忍者一族である服部家に代々伝わる秘伝奥義、その名も『忍気(しのぶき)』。


 その名は古くから、気・オーラ・チャクラ・神通力などと言い換えられてきた不思議な力だ。

 この目に見えない体の内側にある気功を、読み取り・感じ・体にまとうことで身体能力を極限にまで高めることができる。


 幼かった私はまだこの力をほんの一握りしか扱うことができなかった。

 それでもわずか6歳の私が、崖から突き落とされようが、その上から岩を降らせられようが、なんとか生き延びることが出来るほどに身体が強化される。


 それでもほんとギリギリだったけどね?!

 「女は度胸よ」とか言って笑顔で自分の一人娘を崖から突き落とすお母さんがマジで怖かったよ?!

 「俺の愛情を受け取れ」とか叫びながら、崖から落ちる娘に向かって岩の雨を降らせるお父さんに本気の殺意を持ったからね?!


 その極限状態だったからこそ発動できた秘術。

 それを今こそ、やってやる!


 まずは体の内に眠る忍気を見つける。


 私の忍気は桜色をしたトロミのある液体のような気をしているのが特徴だ。


 昔やっていたみたいに意識を集中して、それを見つけ出す。


 あった!


 久しぶりに感じるこの忍気は少し昔と違っているような感じもするけど、それを胸の中心へ集めるイメージをする。


 胸の前で両手を握り合わせ、両一指し指だけをピンと上に向ける独特のポーズを自然と取ってしまうのが、忍気をうまく発動出来ている証拠。


 体……動いた。

 よし、忍気発動!


 体の内側から忍気があふれ出し、桜色のオーラが体をまとう。


 そのオーラに狼くんはビックリしたのか、慌てて距離を取りそのままどこかへ逃げてしまった。


《サクヤ様。今のお姿では、忍気発動可能出力が3スロットルほどです。5分ほどしか持ちませんのでお気をつけください》


 それを視界上で見た私はすぐに忍気を解除した。

 すると、また体が全く動かなくなり、頭から地面に倒れた。


 あっぶなっ!

 転身機で守られてなかったらヤバかったわ。

 首がすわってないとこんな感じになるのか……。

 ないわ――。


 さっきのが3スロットルなら、1……0.5スロットルにしてみたら体動くかな?

 あ、かなり動きが重たいけどうまくいった!


 それにしても……本当に赤ちゃんの姿じゃん。

 あれ?!

 スマコ、あんた本体は?!

 私身に付けてないじゃん!


《親愛なる我主、サクヤ様。私はいつでもあなたの中に》


 いやいやいや、よくわからんから。

 体内に埋め込まれてるってこと?

 なにそれ、怖い。


 それに、さっき音声じゃなくて視界上にも表示させてたよね?

 アイレンズも付いてるの?


《はい》


 ……本当に付いてるの?

 いたっ?!

 やっぱついてないじゃん!

 てことは目の中に埋まってるってこと?

 なにそれ、ホント怖い。


 さしあたっては、おなか空きました。

 よく考えたら私なにも食べてないじゃん。


 この洞窟から脱出するには、まず生き残ることが大事だもんね。


 乙羽がいないこの世界を生き抜く意味はないけれど、今の私が置かれている状況を調べるまでくらいは生きていてもいいかもね。


 まぁこんなわけのわからない変な世界だし。

 やるだけやってみよう的な精神で。


 ところでスマコ、アンタはこの世界のことはどこまで知っているの?


《ある程度の知識は有るかと思われます。なに者かによりインストールされた形跡がありますので》


 その何者かによって私はこんな状況になっているのかな?

 知らないところで勝手にいろいろとやられてる感じがしてなんか嫌だね。


 それよりも私おなか空いて倒れそうよ。

 あ、もう倒れてたわ……頭から。


《この近くに果実と思われる植物を検知。位置をアイレンズへ表示します》


 ここに行くなら、比較的安全な道はここかな?

 うまく周り込めば、魔物にはほとんど遭遇しない感じだし。

 これなら動ける時間内で行けそうだね。


 ということで、忍気3スロットルで発動!


 さっきも0.5スロットルで発動させてたから、活動限界まで残り4分弱か。

 アイレンズで忍気の残量みたいなの見られるの便利だわ。


 それにしても、よくよく考えたらまだ私赤ん坊なんだよね。

 そんな状態で歩けていること自体が普通にありえない。

 いくら忍気でも現実世界では絶対に無理なことだし。


 まぁ、とりあえず今は食べ物かな。

 おなか空いてそれしか考えられない。


お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ