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A13 高等部

今日も別ルート編進めます。

『いろいろと上手いこといかへんなぁ』

『あぁ……』

『ウチらがもっと上手いことやっとったら、あの子ら死なんでも済んだんやろうか』

『あぁ……』

『もっとこうしたらよかったとか、あぁすればよかったとか、後で思うてもしゃぁないやん』

『あぁ……』

『あの時のウチらは、あの時にできた最適な行動を取ったはずやで』

『あぁ……』

『みんなを守れる力がなかった……今はそう思うしかないな』

『あぁ……』


 ハズキは思い悩むと、よくこうやって独り言を呟く。

 自分自身に問いかけながら、自分自身を慰めているのだと前に聞いたことがある。


 自分を拒絶したい自分と、自分を慰めたい自分でちゃんと会話する。

 そうすることで、自分の頭の中で納得しようとしているんだろう。


 だからアタシは黙って話を聞く。

 それを拒絶することも同意することもしない。

 ただただ、話を聞いて相槌を打ち続ける。


「もっと強くなりましょう、アズサちゃん」

「えぇ、アタクシたち一緒に強くなりましょう」

「「アタクシ(ワタクシ)たちの目的のために」」


 そう、アタシらの目的はこの世界を平和にすることじゃない。

 ミサキとホノカを探し出すことだ。


 その後のことは探し出してから決めたらいい。

 またあの時みたいに4人一緒なら、どんなことでも楽しくやれる。


 アタシとハズキはそう願っている。



 それからまた普通通りの日常へと戻る。

 魔族が全滅したことで、一応人族への危機は去った。


 しかし、この近くまで魔族が進行してきたという実績がある以上は、アトラス大迷宮への警戒をしておく必要がある。


 迷宮へは同じように調査団が派遣されて調査を進め、その入り口付近には厳重な警備態勢が敷かれたが、結局その後はなにも起きることがなかった。



 それからアタシたちは高等部へと移る歳になっていた。

 高等部は前世でいうところの中学校だ。


 初等部と違うのは、それぞれのクラスにランク分けがされていて、明確な力関係を表していること。


 まず、初等部卒業試験と題した能力診断測定というものがあって、それによりクラスを決められることになる。


 アタシとハズキは幸いにも一番上のSクラスだった。

 ただ、定期的にこの能力診断は開催されて、その度にクラス替えがある。


 だから、Sクラスに入れたからといって油断はできない。

 Sクラスに入るということは、将来いい職務に就けるということ。

 その為に他の人も必死になって、自分を高めようとしてくる。


 だからこそクラス替えは頻繁に起こってしまうのが現状らしい。

 なんとかライバルを蹴落としてやろうと狙っているような殺伐とした雰囲気が漂っているのだ。


 前世の部活でライバル同士が己を高め合うなんて甘酸っぱい青春があったけど、ここの雰囲気はそれとは全く違っていた。


 人を出し抜き、騙し、貶めようとするそのさまは人間の醜さを表している。


 表には出ていないが、過去には生徒同士のいざこざで死亡者も出ていると聞いた。

 だからこそ、授業以外でギアメタルの使用は禁止になり、基本的には先生しか解除ができないリミッターが働いているらしい。



『いよいよアタシらも明日から高等部か』

『なんや、実感もわかへんな』

『確かに……ここまでがむしゃらにやってきたけどよぉ、本当に大丈夫かなアタシら』

『自分を信じてやるしかないねん。それに……体付きだけは立派になってきよったで』

『おまっ?! どこ見て言ってんだよバカ! それに……おまえに言われても嬉しくないわ』

『我ながらどんどん膨らんできよって困っとんねん。そろそろ止めてぇな』

『いいだろう。そこまで言うならアタシがそれモイでやんよ』

『それは……堪忍やな』


 アタシらは部屋にある広い風呂に浸かりながらそんな会話をしていた。

 そろそろハズキが寝そうな雰囲気を感じたので、肩を貸しながら脱衣室へと連れていく。

 ハズキはそのまま髪も乾かさずにベッドで寝てしまったので、アタシが乾かしてやる。


 いつもは頼りになるくせに、以外とこういうズボラなところがあるんだよな。

 どこか憎めないその寝顔を見ながらアタシもその横で目を閉じた。



 そして、高等部への登校初日。


「ようこそ、高等部のSクラスへ。次の能力測定診断まではこの5名で授業を受けてもらう。1年から3年までのSクラスの授業はそのほとんどが魔動兵団との共同実戦訓練だ」


 いきなり魔動兵団の人たちと実戦訓練?!

 やっぱSクラスは凄いな。

 あの人たちの戦い方を学んで、どんどん強くなろう。


 表情を見てみると、ハズキも同じ気持ちだったようだ。


 それからアタシらは夢中で充実した訓練を受けていき、その技術を数ヶ月かけて取り込んでいったのだった。



 実はこの学園にも長期休暇というものが存在していて、今はその長期休暇の真っただ中。


 学園にいるほとんどの人は、実家に帰ってゆっくりとした時間を過ごしている。


 アタシらはというと、相変わらず訓練を続けていた。


 お互い実家に帰ってもすることがない。

 この周辺地域をブラブラしながらミサキとホノカを探しつつ、訓練をしていた方がよほど充実した時間になると一緒に考えた結果だ。


 まぁハズキと離れたくないっていう本心は、絶対に内緒だけどな。


 そんな長期の休みも終盤に差し掛かってきた頃、いつも通り寮の昼ご飯を食べていると寮の使用人さんたちが慌ただしく動いていた。


「あの、どうかなされたのですか?」

「はい。数年前に死亡されたとされていた方が、実は生きておられたようで、本日急にこの寮へお戻りになるとご連絡が入ったのでございます」

「それはすごいことですの……」

「一体どなたなんですか?」

「あのカミキ侯爵家のご令嬢様、マイカ・カミキ様でございます」


「「…………えっ?!」」

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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