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A12 共存への一歩を

別ルート編です。

 どうやらアタシは支部隊長から気に入られたらしく、あれからなかなか離してくれなくて大変だった。


 どさくさに紛れて普通におっぱいとかおしりとか触ってきやがるし。


 しかも無表情で。


 やばい、アイツはヤバい。

 目がイッてる。

 完全なロリコンおっさんであることに間違いないと思う。


 なんとか理由を付けて離れることに成功したけど、ずっとアタシを目で追ってくるから寒気が半端ではない。


『おいハズキ! 助けてくれ! あのロリコンおっさんヤバいって!』

『えぇんとちゃうか? 見た目はおっさんでもあの強さはほんまもんやで? 上手いこと利用したらええやないか!』

『他人事だと思ってバカいうな! あんなおっさんと一緒にいられるかよ!』

『まぁあれがあの魔動兵の兄ちゃんみたいなイケメンやったらいうことなかったんやけどなぁ!』

『そりゃまぁあの人なら……ってこら! そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ!』


「君たち、さっきの攻撃は本当に驚いたよ。まさかその歳でそこまでの魔動力を扱うことができるなんてね。ビックリしたよ」


 噂をしていた魔動兵のお兄さんがアタシらのもとに来てそう言う。


「い、いえいえ! たまたまですわ」

「そうですの! こちらも必死でしたの!」


「それにしてもまずいね……まさかあの忌々しい魔族どもがこのアトラス大迷宮の中にいるだなんて思いもしなかった」


「……アタクシたちも驚きました。これからどうなさるのです?」

「まだ奴らもそんなに遠くへは行っていないと思うから、支部隊長様を筆頭に少数隊で魔族の殲滅に向かうよ。君たちは僕と数人の魔動兵と一緒に学園へと戻ってもらう」

「そうですの……課外授業はこれで終わりですの?」

「そうだよ。これはかなり深刻な問題だからね。ここに魔族がいたということだけでも人族にとっては脅威だから、それを一刻も早く団長様にご報告する必要があるんだよ」

「どうしてですか? さきほど見かけた人数は10人もいなかったようですから、そこまでの脅威とはならないように感じるのですが……」

「さっきの人数だけではそうかもしれない。でも、あの魔族どもはここまでの迷宮内のルートを把握していたはず。もしそれが魔族側へと渡ってしまえば、今度は軍を引き連れてやってくるだろう?」

「な、なるほど……それは確かに大変なことですわね」


 まぁ逃がしたのはアタシらが協力したせいでもあるけど、あの子らなら大丈夫だよな?

 信じてもいいんだよな?


 チラッとハズキを見てみると、真剣な顔で頷いた。

 多分、アタシが不安に思ったことがわかったのだろう。


 この子が大丈夫だとハッキリ言ってくれるから、アタシはいつも心を強く持てる。


 本当にアタシはハズキに甘えてばかりだな。


 それから魔動兵のお兄さんらとアタシら生徒や先生は学園に向けて帰りの路地を進む。


 その道中は特に何事もなく無事に学園へと戻ってくることができたのだった。


 魔動兵のお兄さんたちは早速カミキ様へ報告を行い、その後にバタバタと軍が編成されて再びアトラス大迷宮へと戻って行った。


 今回編成された隊は、支部隊長のさらに上の軍隊長様が急遽指揮を取っているようだ。


 それだけ事は重大だということだろう。


 このアトラス大迷宮はこの世界全てを繋いでいる地下の大迷宮だ。


 それ故に、今まで長い年月をかけてこのアトラス大迷宮から魔族領土へのルートを探し求めて、たくさんの調査団が派遣されている。


 しかし、それでもこの迷宮内部の解明はほとんど進んでいない。


 その理由は2つあって、まず1つ目は迷宮内を奥に進んでいくためには必ず中層を通っていく必要があるということ。


 この迷宮の中層はとても人が生きていけるような環境ではないとされていて、さらにここに住んでいる魔物も上層付近の魔物とは比べ物にならないくらいに強いとされている。


 遭遇したアトラス・ティックのような化け物がゴロゴロいるということだ。


 そしてもう1つの理由は、迷宮内にある各エリアが魔物同士の生存をかけた激しい戦いによって、数年でその地形を変えてしまうということ。


 調査団が命をかけて仕入れた情報も、数年で全く違ったものへと変貌してしまうのだ。


 それ故、このアトラス大迷宮内を攻略して魔族領土へと攻め入るということは困難を極めていたのだ。


 だからこそ、あの魔族の人たちがこの人族近くのエリアに現れたことは一大事とされた。


 本当なら大群を仕向けてでもその魔族を根絶やしにする必要があるんだろうけど、それはアトラス大迷宮という危険地帯だということで強力な少数編成という形を取ったんだろう。


 アタシらは今寮へと戻って、ハズキと一緒にそのことを話していた。


『それにしてもよぉ、どうやってあの子らは迷宮の中層を突破したんだろうな?』

『わからへん。あの子らが特別に強い力を持っている感じもせぇへんかったしなぁ。もしかして中層を通らなくても抜けられる通路がたまたまできたんとちゃうか?』

『なるほどなぁ。まぁ一番丸く収まるのは、あの子らが無事に魔族領土に戻ってもこっち側にはなにも起こらないってことだな』

『そういうこっちゃ。でもまさか軍隊長まで派遣されるとはな……見つからないとええけどな、あの子ら』

『あぁ……今は信じるしかないよな』



 その数日後、派遣されていた魔動兵団が3分の1の人数になって帰ってきた。


 その中には支部隊長や、あの気さくな魔動兵のお兄さんの姿はなく、さらにはあの軍隊長までも半身だけの亡骸というあまりにショッキングな状態で戻ってきたのだった。


 逃げていた魔族は全滅。

 それはあの軍隊長がやったそうだけど、その戦いの後に近くにいた中層の魔物に襲われてやむなく死亡してしまったのだという。


 全滅ということはあの子ら2人も殺されてしまったということだろう。


 でもそれは人族にとっていいことなんだろうね。


 しかしアタシらにとっては、せっかくできた魔族との共存への貴重な一歩を無くしてしまったのだ。

少し本編と差が空き過ぎましたので、引き続き別ルート編を進める予定にしています。


お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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