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053 またでたですぅ!

 AからCクラスの生徒のリミッターを外したギアメタルの全力の攻撃をケロリとしている私らDクラスの生徒たち。


 そしてなにより信じられないものを見るような驚愕の目で魔女っ娘を見つめる妹っ子。


 思わず地声が出てしまっていたけど、大丈夫かい?

 いつものみなさんを思いやるお嬢様風な化けの皮が剥がれつつあるけど、その顔は大丈夫?


 まぁ、そりゃあこれで魔女っ娘を殺す予定だったもんねぇ。

 絶対的なその自信を打ち砕かれた気分はどうだい?

 プルプル震えていてちょっと可哀想かしら。



「なるほど……報告通りに素晴らしい鍛え方だな」


 えっ?!

 ま、まさかこの反応は……こんなところに出てくるなんて。


「お、おとう……さま。なぜここに……」

「いやはや、おまえをDクラスに行かせたのはどうやら正解だったようだ。まさかここまでこのクラスを導くとは思わなかった。どれ……」

「ぐはっ?!」

「おい、マイカ?!」


 深々と魔女っ娘の鳩尾へとその拳を容赦なくめり込ませる、魔女っ娘の父親でありこの学園の理事長である、おっさん。


「さ……さすがは勇者様だ。我々とは格が違う」

「り、理事長様。どうしてこちらへ……」

「なに、かわいい生徒たちの様子をこの目で見たくてな。立派に成長しているようで嬉しいぞ」

「は、はぁ……ありがとうございます」


 AからCクラスの先生や生徒全員が跪いている。

 ただ一人を除いては。


「お、お父様……ワタクシは……」

「メイナ、私はおまえにも期待している」

「はい……」


 こいつ……全く隙がねぇ。

 その首にぶら下げたクリスタルを破壊しようと隙を狙っているというのに、全然それができる気がしないわ。


 アイレンズに映る未来視でもざっと20通りくらいのパターンで未来を見てみたけどその全てが防がれてしまう。


「さて……折角だから他の生徒にも私自ら指導を行うとしようか」


「ぐあっ?!」「うぷっ?!」「があっ?!」


 次々にDクラスの生徒を全員気絶させていったおっさん。

 そして残りはもう私1人。


「ふむふむ。みんないい力の使い方をしておるわ。さすがだ……のぉ!」

「ぐっ?!」


 こ、こいつ……私にだけ力入れすぎ……よ。

 このバカ力め。


 私は今の全力である80スロットルの忍気と、転身機を使って内臓の破裂と意識を失うことをかろうじて阻止した。


「ふむ、やはりいい! このDクラスはとてもいいぞ! これは、もしかするとこのクラスから史上初のギアバトル闘技大会の出場者が出るかもしれんな! ふはははは!」

「ご……ご冗談を。我々のクラスの生徒が劣るとも思っておりませんし、さらにはSクラスの生徒を差し置いてそれは絶対にありえません」

「ふはははは。まぁ本当にそうならないように気を付けるんだな! 期待しているぞ……」


 体はそっちを向きながらも、ちゃっかり私の方に殺気をぶつけるのはやめてほしいわ。

 こいつ、私に向けて言ってんの?

 もっとこのDクラスを鍛えろって?


 調子のんな。

 私の目的はそのクリスタルだけだ。


 私はお返しとばかりにおっさんだけに溢れんばかりの殺気を向けた。


「ふっはははは! そうかそうか、楽しみだ!」


 おっさんは愉快にそういうと、再び私の目の前まで一瞬で移動する。

 すると私のローブの中になにかを忍び込ませた。


 ……これはっ?!


「おまえにご褒美だ」


 こっそり私に耳打ちすると、おっさんはどこかへと行ってしまった。


 思わぬ勇者の登場に、その日の訓練は終了してしまった。


『忍法、桜華乱舞の術』


 スマコのおかげで応急処置を終えた私は、再び桜の花びらでクラスのメンバ―を持ち上げて、いつも以上に機嫌が悪そうな先生と一緒に宿舎へ放り込んだ。


 魔女っ娘を背中に背負ったまま寮の部屋へと戻ってベッドへと寝かす。


 そして、おっさんが私のローブのポケットへと入れた封印の()()()()()を取り出す。


 一体なんのつもり?

 私がこのクリスタルを狙っていたことを知っていた?!

 だとしたら、みすみすそれを渡すわけはないよね?

 わからない……あのおっさんの考えが読めない。


《親愛なるサクヤ様。今のサクヤ様ではこのクリスタルを破壊することは叶いません》


 なんですって?!

 私はまだ力不足だというの?!


《はい。スキャンしたこのクリスタルは強靭な結界で守られております。それを破るには最低でも忍気100スロットル以上が必要です》


 本当のフルスロットルか……。

 そんなの、お父さんでもおじいちゃんでも出来たことがないのに。


 でもそれをしなければこれは壊せない……それをしないと乙羽を守れない。

 ということは、やっぱり私の力を把握した上で、このクリスタルを渡したんだわ。


 それなら私のすることはただ一つ。

 魔女っ娘……どうやら本当のお別れがきたみたいね。


 私はこのクリスタルを持って、修行をしながら今度は魔族領土へと向かう。

 そうしないと間に合わないかもしれない。


 そう思い立ち、走り出そうとしたところで突然頭に直接声が届いた。


『サクヤさん、その必要はないですぅ!』


 はぁ?!

 その声、クズ神?!


『あぁ! またクズって呼んでいるですぅ! プンプンですよぉ、サクヤさん!』


 またいきなり元気に現れたわねアンタは……。

 それよりも一体どういうことなの?


『その手に持っている封印は勇者カミキが持っていたものですよね? それを持ってギアバトル闘技大会に出場するのですぅ!』


 なんで?!


『魔族がそのギアバトル闘技大会に紛れ込むと予知夢があったのですぅ! 魔族はすでに進軍を開始していて、その時に人族を全滅させるつもりなのですぅ!』


 マジかい……。

 その予知夢とやらは本当に当たるの?


『神の予知夢をなめてもらっては困るのですぅ!』


 でもどうやって人族の領土に現れるつもりなの?


『それはわかりませんが、ギアバトル闘技大会の決勝中に人族側の国王が全て殺されてしまうのですぅ……それを合図に人族の惨殺が始まりますぅ』


 ……はぁああああ?!

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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