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052 みかえしたれ

 その日の夜はあのクリスとかいうやつが奇襲してくることはなかった。


「……起きて……おもい」

「……ふぁい……おはよう、サク」

「……」

「あ、今喋ってくれたよね?!」

「……」

「ねぇねぇ、サクもう一回! もう一回だけ!」


 うるさい……いつもこのくだりじゃん。

 鬱陶しいわぁ。


 昨日3人から呼び方をせがまれたから、魔女っ娘にサクヤって伝えようとしたら「サク」までしか声が出なかった。


 それから私の呼び名は「サク」になった。

 まぁ別に呼び方なんてなんでもいい。



 その後、また校舎にぶら下がる芋虫君3号が発見されて少しだけ話題になる。


 しかし、今までの生徒とは違い、あの子は私のことを包み隠さず暴露した。


 寮の屋上に突然現れ、白いフードを深く被って顔を隠している不審者だということを。


 その噂は瞬く間に学園中へと広がっていった。


 まぁ、この学園で四六時中フードを被っているのは私くらいのものだけど、幸いにも私はこの学園で目立っていない。


 先日、合同実戦訓練というDクラスへのリンチ訓練でその白いフードを被った不審な私の存在が少数の生徒へ認知されている。


 しかし、私がDクラスというだけでそんなことができるはずもないと思われているようだ。


 それに、なんかそのグルグルお化けの真似が流行っちゃって、フードをかぶる人が結構増えてきている。


 まぁなんにしても、私にとっては都合がいい。


 そんなことを考えながら教室へと入った。


「あれ? みなさんいらっしゃらないですね?」

「……」

「もう少し待ってみましょうか」

「……」


 しばらくするといつも通り機嫌が悪そうに先生が入ってきた。


「あ、先生おはようございます! 今日はみなさんどうされたのですか?」

「あぁ……もう訓練場だ」

「おぉ! みなさんやる気満々じゃないですかぁ! さぁ、アタクシたちも参りましょう!」

「……つーか、おまえらのせいでみんなあそこから動けんねぇんだよ。俺もギリギリだぞ……」

「うん? 先生なにかおっしゃいましたか?」

「……いや、なんでもねぇ」


 それから私ら3人は訓練場へとやってきた。


 ぐはっ?!

 汗くっさぁ……。

 さてはこいつら、昨日からずっとここにいるわね。

 ご飯はどうしたんだろう?


「うげぇえ……」

「き、きた……またあの悪夢が……」

「うぇ……思い出しただけでもまた吐き気が……」


「さぁ! みなさん、今日も張り切っていきましょう!」

「……」


 みんな死んだ顔をしているのに、こいつだけ超元気じゃん。

 魔女っ娘も私と一緒にいたせいで、もう普通の人間じゃなくなったね。

 かわいそうに。


「ひぃいいいいいいいいい?!」


 しかし、いざ訓練を初めて早々に生徒や先生たちがダウンした後、再び魔女っ娘を本気でしごき上げると、泣き叫ぶ声が止むことはなかった。


 この訓練を約1か月間連続で続けたのだった。

 その間、魔女っ娘を狙った暗殺は全くなかった。


 そして今、再びDクラスのリンチ訓練が開催されることになった。


 本来は半年に1回という頻度だったらしく、この1ヶ月後という頻度で行われるのは初めてのことらしい。


 それは、あの妹っ子の申し入れを学園側が受理したことによるものだった。


 前回と同じように私らDクラスは中央の柱へと縛り付けられる。


「今回のDクラスの生徒はみな優秀であるとの報告を受けて喜ばしい限りだ。この頻度で合同実戦訓練を行うことができるのをとても嬉しく思う。それでは、はじめ!」


「ひひひ! またたっぷりと痛めつけてやろうぜ!」

「ストレス解消の時間ですわぁ!」


 そんな陰口を叩きながらギアメタルで魔法を放ち始めるAからCクラスの生徒たち。


 その魔法が無防備なDクラスの生徒へと襲い掛かるが、以前とは違い悲鳴も苦痛の声もあがることはなかった。


「あ、あれ?! なんかおかしくねぇか?!」

「なんで魔法がきかないんですの?!」

「おい、どうなっている?!」


 次々に戸惑いの声が上がっていく。


「こんなのあのバケモノの攻撃に比べたらなんともないな」

「そうだねぇ、まさか魔動力にこんな使い方があるなんてね」

「もう僕たちがこのリンチに怯える必要はないんだ!」

「あぁ、悔しいが嬉しいぜ!」


 魔法を散々受けても全く動じないDクラスの生徒たち。


「これは驚きましたねみなさん!」

「メイナ・カミキ様!」

「みなさん、Dクラスの方々は本当に立派でございます! こちらもそれに全力で応えなくては失礼ですわ! ギアメタルのリミッターを解除いたしましょう!」

「確かにその通りですわ! こちらも全力を出さないと相手に失礼です!」


 おぅおぅ……いろいろやってくれんじゃん。

 しかもおまえが持っているそれはヤバいだろ?


 本格実戦用に開発された銃型のギアメタル。

 見た目は大きなスナイパーライフルだね。


 それをこの日のためにアンタが裏で作らせていたことはわかっていたのよ。


 もちろんそれで普通の生徒を狙えば、いくら鍛えたこのDクラスの人間でも普通に殺せるわ。


 でもアンタが狙うのは間違いなく……


「あははは、ワタクシの全力を受けて下さいね、お姉さま!」


 妹っ子は、身の丈以上もある砲身を真っすぐに魔女っ娘へ向けて、躊躇することなく引き金を引いた。


 同じようにギアメタルのリミッターを解除した、たくさんの生徒の攻撃が他のDクラスの生徒へと迫る。


 リミッターが解除されたことによって、先ほどとは比べ物にならないほどの威力の魔法だったけど、それすらもDクラスの生徒は耐え抜いた。


 その中でも一際大きな衝撃派と威力を持った妹っ子の銃弾は、魔女っ娘が自身の魔動力を全開に放出してそれを打ち消してしまった。


「は、はぁあああああああ?! うそでしょおお?!」

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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