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A11 激闘の先で

別ルート編です。

 魔族の子2人と別れたアタシとハズキは、アトラス・ティックという魔物が暴れている場所へと向かう。


「君たちっ?! 見つかって良かった、無事だったんだね! 早く隠れるんだ! この魔物は君たちの手には負えない!」


「おほほほ、それはやってみなければわかりませんわ! ねぇ、イエスタリご令嬢様?」

「えぇ、アブリエルご令嬢様! ワタクシたちの力を今こそ見せつけてやりましょう!」


「っ?! やめるんだ! 僕たち魔動兵でも敵わない魔物だぞ!」


 魔動兵のお兄さんの言うことには耳を貸さず、アタシらは自分たちのギアメタルを起動させる。


 アタシは魔動力で刀身から出した水を全身にまとった状態で飛び上がる。

 それに合わせてハズキがギアメタルを起動し、その拳にアタシの足を乗せた。


「アズサちゃん! いきますの!」

「えぇ、ハズキちゃん! お願いですわっ!」

「フレイムブラストォオオ!」


 ハズキの拳から放たれる炎とアタシの水が一気に気化して辺り一面を濃い霧が覆う。


 うわっちぃ!

 ハズキのやつ本気出し過ぎだっつ~の!

 アタシまで火だるまにする気かアホ!

 後で覚えてろよ、マジで。


 この霧はすぐに拡散して消えてしまうだろうけど、この一瞬の時間を作ることが1つの目的だった。


 辺りが見えなくなったこの瞬間に、さっきの魔族の子2人がここでにらみ合いをしていた魔族の人たちを逃がしている。


 そしてもう一つの目的は、アタシが一気に加速して魔物の近くへと接近するためのものだった。


 接近するのは支部隊長さんが魔物の動きを抑えてくれている今を置いて他にない。


 水と炎が一気に気化する爆発的なエネルギーによって、アタシは弾丸の如くアトラス・ティックへと突っ込む。


「なにっ?!」


 驚く支部隊長さんを他所にアタシは空中で身を捻りながらアトラス・ティックへと攻撃を仕掛ける。


「アクアバイブレーション!」


 刀身から水を発生させ、その刃先を超高速で振動させる。

 そうすることで、この刀はとんでもない切れ味へと変貌するのだ。


「はぁああああ!」


 吹き飛ばされた勢いと体の捻りを利用して、そのままアトラス・ティックの体にその刃を全力で振るう。


 すると、バリッと肉が剥がれる感覚を感じ取ると、アタシはそのまま刃を体に這わせて大きく引き裂いた。


 アタシが引き裂いた魔物の体は、その箇所から徐々に水が浸透していき、次第に肉が引き裂かれるように広がって中身が現れていく。


 アトラス・ティックは深紅の赤い体をしているけど、それは自身の体液によるものだと魔族の子たちに聞いていた。


 それは表面がベトベトしていて弾力があり、その下は固くコーキングがされている。

 この2重の防護耐性を持ち合わせている関係で並大抵の攻撃ではそれを破壊することはできないらしい。


 しかし、それは水に弱いという弱点が存在していた。


 あの粘液は水をかけると簡単に溶けて剥がれ落ちるという性質があるから、最初に放ったアタシの斬撃はきちんとあの赤いボディにダメージを与えていたのだ。


 それがわかればあとは、アタシが突っ込んで水の刃で斬り裂く。

 しかし、これだけの勢いを持ってしても、その下の硬くコーキングがされた部分までは残念ながら刃が通らなかった。


 だから、アタシは咄嗟に刃を滑らせ、大きく引き裂くように切り込みを入れるやり方へと変えたのだ。


 それと同時にその切っ先から出来る限りの水をぶちまけて、表面の赤いベトベトの体液を剥いでいく。


 アタシの役目はこれでほぼ終わりだな。

 てか、支部隊長パネェ……。

 アタシだけじゃ、この化け物の体液を完全に剥ぐことはできなかった。


 瞬時にアタシの攻撃が有効的なことを見抜き、アトラス・ティックが怯んだところでアタシの剣筋に合わせ、より強力な自身の刃を合わせて2重に切り込みを入れていたのだ。


 だからこそアトラス・ティックの赤い体液は完全に剥がれたのだった。


 しかも、勢いのままに吹き飛ぶアタシを空中でキャッチするとかいう離れ業まで披露している。


「今だっ! 全員で総攻撃を仕掛けろ!」

「「「はっ!」」」


 大きく体勢を崩しているアトラス・ティックは、赤い色の体液コーティングを剥がされて茶色の裸体を晒している。


 そこへ向けて魔動兵の人たちがそれぞれの魔法で総攻撃を仕掛ける。


 アトラス・ティックも口から赤い体液を吐き出してなんとか応戦しようとしていたけど、勝負はついた。


「怖くない、怖くない、怖い……じゃなかった、怖くないですのッ! 全力全開ど根性ですのぉおおお! フレイムブラストォオオ!」


 ハズキから放たれた一際大きな拳の形をした炎は、見事にアトラス・ティックへと命中してそれが最後のとどめとなった。


「お……終わりましたのね」


 はっ?!

 そういえば魔族の人たちは……ちゃんと逃げたみたいだな。


 さっきまでいた場所から姿を消している魔族を確認するとホッと一息つく。


「おまえ……何者だ?」

「あ……こ、これは失礼いたしました。アタクシはアズサ・アブリエルと申します。支部隊長様、先ほどは助けていただきありがとうございました」


「いや、いい」

「……あ、あのぉ? そろそろ降ろしていただいても構わないでしょうか?」

「おまえ、歳はいくつだ?」

「えっと……今年で10歳になりますが」

「もう5年ほどか……よし、おまえ俺の嫁にこい」

「…………はい?」


 アタシは支部隊長の発言に、目が点になっていた。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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