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048 ざんぎゃく

少し表現を修正しました。5/7

 え?!

 聞き間違い?!

 あの子ら日本語しゃべらなかった?!


《親愛なるサクヤ様、間違いなく日本語をしゃべられました》


 だ、だよね?!

 聞き間違いじゃないよね?!

 一体どういうことなの?!


《以前、クズ神様との会話にてあの爆発事故で死んだ者の魂がこちら側の世界に来ていると聞いています。即ち、あの爆発事故で死んだ者たちの中の2人だと推定されます》


 なるほど……私と同じように日本からこっちに来た転生者というわけね。


《はい。今のところはその可能性が高いかと》


 まぁ同じ日本人に会えたからと言って、そこまで騒ぎ立てることもないね。


 私からしたら赤の他人なわけだし。


 一応は同じ日本人だったというよしみで気にはかけておこうかな。


 でもこの子らの魔動力は人並み外れているから今のところ心配はなさそうだけど。


 そこまで2人の様子を見たところで私の分身体は花びらと化して姿を消した。



――次の日。


 校舎に吊るしていた芋虫君2号が、登校する生徒の目に晒されてクスクスと笑われているのを確認した。


 その後、今日は例の日とかいう合同の実戦訓練ということで、私たちは共用の大きな訓練場へと来ている。


 そして、なぜか中央に並ぶ柱のようなものにDクラス全員が縛り付けられた。


「それではこれより、合同実戦訓練を始める! いつも通り、的に向かって全力で攻撃を仕掛けろ! そして経験値を上げるのだ!」

「「「はい!」」」


 いやいやいや、はっ?!

 これは一体なんの冗談?

 的ってもしかして私らのことかい?


「はぁあああ!」 「ぐはっ?!」

「そらぁああ!」 「おぅっ?!」

「あはははは!」 「いだいっ?!」


 ないわぁ――。


 まさかこのクラスを的に使って訓練をさせるなんてね。


 しかもあのAクラスからCクラスのやつらイキイキしていやがる。


 楽しくてしょうがないって顔だね。


 痛さと苦しさで悶え苦しむ顔が見たいのか、その攻撃に一切の躊躇はない。


 しかもたちが悪いことに、傷ついた体を常に魔法で無理やり回復させてんのよ。


 だからDクラスの子たちはずっとこの苦痛に耐え続ける必要があるわけだ。


 一応私は転身機のおかげで痛くもかゆくもないけどさ、生身で攻撃を受けているこの子らの痛みはたまったもんじゃないだろう。


 さすがの私も胸糞悪いね。

 全員、絞めたろうか……。


 おぅ?!

 ……魔女っ娘、その顔はどうしたの?!

 なんでアンタがそんな血だらけになっているの?!


「みなさま、とてもいい的がありましたよ?」


 あいつは……なんでAクラスに?!


「あれは、マイカ・カミキご令嬢様ではありませんか?!」

「えぇ、どうやら()()()()はみなさんの訓練のために的になってくれているようですの! それが自分にできる唯一のことだからと言っておりましたわ」

「まぁ、さすがはメイナ様の姉上様でございますね! それでは、わたくしたちはそのお気持ちにお応えするといたしましょう!」


 魔女っ娘は生身の人間だ。


 いくら魔動力で少し防御力を上げているとはいえ、私みたいに全身に力を纏わせることはできない。


 しかもなんの冗談か、魔女っ娘だけは回復させてもらっていない。


 アイツの仕業か、魔女っ娘の妹っ子め。

 なんでアイツがここにいるんだ?!

 普通にAクラスの生徒として訓練に参加していやがる。


「お姉さま、あたくしの全力を受けて下さいまし! はぁあああああ!」


 うぉ?!

 あれはやばくないか?!

 殺す気満々の攻撃じゃないの!


『忍法、桜華乱舞(おうからんぶ)の術』


 わからないように透明の花びらを大量に舞わせ、妹っ子の攻撃に当ててその勢いを弱らせる。


 完全に防ぐこともできるけど、今それをやってしまうとますますエスカレートしてしまうだろうからね……少し我慢してよ魔女っ娘。


「きゃぁあああ?!」

「あははははは! さぁ、次に行きますわよ!」

「あ“ぁああああ?!」


 その地獄のような時間は一日中続いたのだった。


「そこまでっ! もう回復担当たちが限界だから終わりだ。折角の的たちが死んでしまっては困るからな」


 先生のその合図を聞いたAからCクラスの者たちはそのまますぐに教室へと戻って行ったのだった。


 全員……気絶しているわね。


 あの回復担当とかいうやつらは2時間前から回復をやめていた。


 その間はこの子たちが自力で耐え抜いていたのだ。


 私は気絶している全員を桜飾の花びらで持ち上げて移動する。


 途中でDクラス担任とすれ違った。


「誰も……死んでねぇか?」

「……」

「そうか……わりぃが、みんなを頼む」


 私が静かに頷くと、目に涙を溜めていた先生はどこかへ行ってしまった。


 その後、Dクラスの男子どもを平民の寮へ全員放り込んだついでに、そのボロボロの体を私の持てる医術を用いて治してやった。


 今日だけは特別だよ。

 ちょっとだけあんたら見直したわ。


 その後に魔女っ娘の部屋へと返ってきた。


 さて、この子が一番重症だね。


 アイレンズ、スキャン。


 右腕と左足が骨折、左腕は肉が抉れて骨まで見えている。

 それに体のあちこちで内出血多数か……。


 これは私の手に負えない。

 だからスマコ、手を貸して。


《親愛なるサクヤ様。私はあなたの専属AIです。どんな時でもあなたのお望みのままに》


 ありがとう。


 私は転身機を解除して、そのマフラーを広げて魔女っ娘にかけた。


《それでは緊急オペを開始します》


 私はスマコによって自動で行われているオペを手伝った。


 私には回復魔法が使えない。


 だからこの傷ついた体を治してあげることができない。


 だからスマコたちを頼る。

 アイレンズで見て、スマコが判断して転身機で治す。


 私には力強い味方である、この七つ道具たちがいるのだから。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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