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047 いもむし

 その日、何事もなく授業がスタートする。


 普通、前世だったら全校集会か、休校になってもいいくらいだと思う。

 だって生徒が校舎からぶら下げられていたなんて教育委員会が黙っているはずがないし。


 ここではそんな心配はご無用みたいね。

 みんな面白がってしばらく見物した後は、何事もなかったかのように教室に入っていくし。


 それでいいのか学園よ……もっと生徒の道徳精神を育むべきではなかろうか。


 え?

 宙吊りにした本人が言うなって?


 まぁそうだけどさぁ、もっと問題になったらいろいろと騒ぎになるかと思ったわけよ。

 そしたらあのおっさんがいる職員塔に、騒ぎのどさくさに紛れて忍び込めるかなぁって少しだけ期待があったんだけどねぇ。


 けど、結局なんもなかった。

 あの子は無駄に目立っただけだな……うん、ごめんね! てへっ。


 まぁ、可哀想だから気絶しているあの子は拘束を解いて、ベッドが置いてある保健室らしきところまで運んでおいたよ。(分身体がね)


 それにしてもこのDクラスの男子ども、なんで今日はこんなに怪我をしているの?

 しかも魔女っ娘や私をめっちゃ避けている。


 昨日は妊娠させようとしていたくせに、今日は一体どうしたというのだろう。


「今日はなんだか、みなさんがよそよそしくて少し寂しいですわ。一体なにがあったのでしょう?」

「……」


 私に聞くなよ。

 それを今考えていたんだから。


「あのぉ……」

「ひぃいい?! よ、よるなぁ! 悪魔に殺される!」

「えっとぉ……悪魔ですか?」

「そうだよ! 昨日2人の悪魔が現れて俺たち全員ボコボコにされたんだよ!」

「今度お前ら2人にちょっとでも触れたら殺されるんだよぉおお!」


「ほぇ……アタクシにはよくわからないのですが」

「うるせぇぞクズども。口を開くな、くせぇから。さっさと席に着け」


 教室へ入ってくるなり、いきなり口悪いなこの先生は。

 まぁでもこの先生さ、実はすごい生徒思いなのよ。


 放課後とか私の分身体が探索ついでにいろいろと校舎内を見て回っていたんだけど、汚いこの教室内とか、訓練場とかを影で掃除して回っているのよね。


 古い教室だから汚れも落ちないのにさ。


 でもいつも機嫌悪そうな先生が、ニヤケながら掃除している姿は私の中だけでとどめておこうではないか……ちょっとキモかったし。


「おいクズども、明日は例の日だ……しっかり死なないように鍛えろよ」

「はい、先生っ! 例の日とは一体なんですか?」

「……おまえら2人は初めてか。明日はAからDクラス合同で実戦訓練の日だ」

「そうなんですね! 実戦訓練とは一体どのようなことをするのですか?」

「実際にギアメタルを使用して魔法を発動し、その性能を伸ばす訓練だ」

「おぉ! それは楽しみですぅ!」


「……くそが」

「何も知らねぇで」


 その日はいつも通り体を鍛える筋トレだけで一日が終わった。

 ただ、昨日よりも明らかにクラスの雰囲気はどんよりしている。


 一日が終わると、みんなはそそくさと教室を去っていく。


「一体みなさまどうされたのでしょう?」

「……」


 だから私に聞くなよ、答えると思ってんの?

 まぁそれは明日になればわかるでしょ。

 なんとなく、嫌な予感しかしないけどね……。


 その日、放課後には再び魔女っ娘の友達2人が訪ねてきたから、私はまた屋上へと逃げていた。


 そしたらまた出やがったよ。


「おまえもカミキご令嬢の暗殺を依頼された者か?! それならば一緒に……あぁあああああ?!」


 はい、グルグル巻き完了っと。

 キミには芋虫君2号というお名前をあげるよ。


「放せぇええ……っ?! モゴモゴ……」


 はいはい、少し静かにしてね。

 うるさいから。


 それにしてもあのおっさんは一体なにがしたい?

 明らかに私をオチョクっているとしか思えないのよね。


 私を魔女っ娘のそばに、はりつけておくだけの目的ならもっと強いやつを寄越すよね?


 ご自慢の暗部を一瞬で拘束しちゃったわけだし、ある程度私の実力はわかっているはずなのよ。


 しかもこの程度なら私が守らなくても魔女っ娘自身で対処できるレベルだし。


 あぁ……魔女っ娘の実力はわかっていないのか。

 砦の破壊も私のせいにしてくれちゃっていたし。


 あれは、アンタの娘がやったんだよ!

 むしろ私も被害者だっ!

 損害賠償を求めるっ!


 あぁ考えても仕方ねぇ。

 とりあえずおなか空いたなぁ。


 あ、魔女っ娘のお友達はまた放課後の訓練に行ったみたいね。

 あの子らは実力もあるのによく頑張っているわ。


 うちの魔女っ娘も少しは見習ったらいいと思うよ。

 でも待てよ……そしたら私まで連れ出されることになるんじゃないか?!

 そんなことは絶対にあってはならない!

 私の大事なご飯の時間を奪われてたまるか!


「……ということで、行くよ」

「ひゃああああ?! 急に現れないでよぉおおお! 口から心臓が出るかと思ったよぉおお! もぉおお! え、今しゃべったぁああ?!」


 さっきの芋虫君2号は分身体がまた校舎へと吊り下げに行ったので、私は魔女っ娘の部屋へと戻って背後から声を掛けた。


 それからうるさい魔女っ娘を無視しながら、私たちはご飯を食べお風呂に入って眠りについた。


 そういえば、あの魔女っ娘の友達の2人はこんな時間だというのにまだ訓練をしていた。


 よく頑張るなぁ……この学園内ならトップの実力を持っていると思うんだけど、どうしてあんなに必死なんだろう?


 あの子らはこの学園内でも天才として有名だ。

 常に強さを求め続けて訓練に励んでいる。


 普通は貴族で天才ともてはやされていたら、もっと偉そうに踏ん反り返っていても不思議じゃないけどね。


 この子らにはそういった貴族臭さというものが一切ない。

 殺戮と破壊と強さだけを求めるこの世界の子とは思えないわね。


『はぁあ……今日も疲れたわぁ』

『おまえ本気出し過ぎやねんて』


 え……はぁああ?!

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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