A09 戦闘
今日は忙し過ぎて本編更新できなかったわぁ。
ないわぁ…ということで、別ルート編です。
「それでは早速課外授業を始めるぞ。まずは授業の中でも紹介したあのアトラス・ボアを殺してもらう。比較的突進しかしてこない弱い魔物だから、よく動きを見て対処しろ」
やっぱり見た目はイノシシだな。
教科書で見た時から思ってはいたけどさ。
離れた場所で草を食べていたアトラス・ボアに向けて、槍のギアメタルを構えた生徒の一人が勇敢にも向かって行った。
すぐにその生徒に目を向けたアトラス・ボアは前足で何度か地面を蹴ると、その生徒に向けて突進を開始した。
『イノシシだな』
『あぁ、イノシシやな』
ボソッと2人でそう会話しながらも、その戦闘を見届ける。
「はぁあああ、死ねぇえええ!」
その生徒は、槍のギアメタルをアトラス・ボアの頭に向かって突き立てるが、その槍は簡単に弾かれた。
一緒に体ごと弾かれて地面へと倒れた生徒に向かってアトラス・ボアは突進を仕掛けるが、それを先生が阻止する。
「授業の中でも教えたが、突進しかできないこの魔物は頭が強化されていてとても固い。そこに真正面から槍を突きたてようと、今のお前たちの魔動力では簡単に弾かれてしまうぞ。さぁ、教えた通りにちゃんとやってみろ」
先生によって、遠くへ飛ばされたアトラス・ボアは怒り狂いながら再び突進を仕掛ける。
地面から腰を上げた先ほどの生徒は、槍の先端を地面に突き刺して土魔法を発動させる。
すると、アトラス・ボアが走っていた地面が盛り上がり、体勢を崩して横向きに転倒した。
すかさず、その倒れたアトラス・ボアの腹部に槍の先端を突きたてると、今度は弾かれることもなくその槍の先端は深々と突き刺さった。
何度もそれを繰り返していると、いずれアトラス・ボアは動かなくなった。
「ふむ。今のように表面は固いが内側、つまり腹部は弱い。そこをきちんと狙うことで確実に殺すことができるぞ。それは魔物に限らず魔族に関しても同じことが言えるからな、覚えておくように」
「「「はい!」」」
「それでは、各自この辺りのアトラス・ボアを殲滅させろ」
先生の合図で、それぞれがアトラス・ボアと戦闘を始めた。
それを魔動兵のみなさんが見てくれているので、安心して訓練をしている。
「本当に、命の尊さとか関係ない世界ですわね」
「今に始まったことではありませんの。ここはそういう世界なのですから」
「そうですわね……アタクシたちも参りましょう」
「えぇ、ワタクシたちの目的のために」
アタシらに躊躇はなかった。
習った通りに魔物を殺し、無心でその命を刈り取る作業を繰り返していく。
その命を刈り取るたびに体の内側から漲る力を感じることができる。
これが多分レベルアップとかいうやつなんだろう。
明らかに学園での訓練よりも自分の力が上がっていくことを実感できる。
「やっぱり君たちはすごくセンスがいいね。魔動力の高さもさることながら、上手くそのギアメタルの特性を生かして魔法を発動できているよ。その調子で頑張りなよ!」
「あ、ありがとうございます!」
「アズサちゃんったら、見られているからって少し張り切り過ぎではありませんこと?」
「そ、そそんなことありませんわハズキちゃん! アタクシはいつも通りです!」
「そんなに真っ赤にならなくてもよろしいですの。また来ますわよ?」
「えぇ!」
次々に現れる魔物をアタシとハズキは殺しまくる。
アタシは静かな川の如く流れるような動きで敵を切り裂き、ハズキは怒れる獅子の如く敵を燃やし尽くす。
時間を忘れ、ひたすらにそれを繰り返していく。
最初は先生や魔動兵の方々が気にかけて見てくれていたけど、次第にアタシらは見ていなくても大丈夫だと思われたのか、いつの間にかみんなと逸れてハズキと2人っきりになっていた。
「はぁ、はぁ……ちょっと疲れましたわね」
「あら? 他の方々はどちらに行かれたのでしょうか?」
「え?! もしかして……アタクシたち逸れてしまいました?」
「どうやらそのようですの。困りました……ここはどこですの?」
辺りを見渡してみても木々が続いていて、どっちに進んだらいいのかわからない。
『ハズキ、これまずくねぇか?』
『せやなぁ、まさかここで遭難するとは思わへんかったわ。とりあえず無闇に動くんは危険や。この辺りで見つけてもらうんを待った方がええと思うで』
『だな。アタシもそれに賛成。疲れたし』
『おまえ張り切りすぎなんやて! あの兄ちゃんにアピールするんなら色気見せろや!』
『う、うるさいわバカ! そんなんじゃねぇっての!』
「「え?!」」
アタシとハズキは同時に身構えた。
なにか来る……森の奥からズシンズシンと近づいてきている地響き。
これはアトラス・ボアとかよりも遥かに強いと本能的にわかってしまう。
やがてそれが姿を現した。
「あれは……誰か追われておりますわ!」
「えぇ! 助けましょう……ひぃいいいい?! なんですのっ?! あれはなんですのっ?! 虫ぃいいい?!」
そう、ハズキの言う通り見えてきたその巨大生物は虫のような見た目だった。
それにフードを被った人たち10人くらいが追われている。
「あれはいけませんの! あれはダメですのぉ!」
「お、落ち着いてくださいまし、ハズキちゃん!」
ハズキは昔から虫だけは苦手だった。
いつもはいろいろと頼りになるやつなのに、部屋に虫が出た時とか半泣きで一目散に逃げ回るくらいに情けなくなる。
アタシが知る限りあの姿はダニ?
テレビのCMとかでよく見かけていたあの姿と、こちらに近づいて来ているその姿が重なる。
アタシも別に虫が大丈夫なわけではない。
あの小ささだったからそこまで拒絶反応が出なかっただけで、さすがにそれが巨大化していれば全身の毛が逆立つ思いだ。
とりあえず追われている人たちを助けたいけど、ハズキもこんな状態だしアタシだけじゃ無理かもしれない。
そんなことを考えていると、追われていた人の1人がダニの足で一突きにされてしまった。
それを見たアタシはたまらず剣を抜いていた。
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