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042 がっこうへいこう

 おい……重いぞこのやろう。

 人の上で白目を剥いてピクピクしているこの不審者は誰だ?


 魔女っ娘だよ!

 つーか、マジで重いよおまえ!


 これは一体どういう状況?!

 なんでこの子裸なわけ?

 そして、なんで私まで裸なわけ?


 夜に一体何があった……。

 全く覚えてないわぁ。


 スマコ?


《なにも異常はございませんでした、はい。》


 なにその棒読み。

 壊れたの?


 まぁいいや。

 よっこいしょっと。


 マフラー……マフラー……あった。

 ふぅ、転身!


 私が瞬時にいつもの制服姿へと転身した瞬間、扉の奥から使用人さんの気配がした。


 コンコン。


「お嬢様、お客様、お目覚めでございますでしょうか? そろそろお時間となりますので、ご支度の方をお願いいたします」


 そんなこと言ってもそのお嬢様がまだ白目向いてるのよね……。


 そろそろ起きてくれないと私も困るんだけど。


「お嬢様、失礼いたし……きゃぁあああ?! お、お嬢様?! 一体これは……え?! ま、まさか……」


 おいおいおいおい!

 なにその目は!

 やめてよ、私のせいじゃないのよ?!

 こっちだってこの状況に困ってんだからさ……。


「……ふにゃ……そこは……だめだよぉ」


 え?

 なんの夢見てんだろう……。


 白目から一転、究極のニヤけ顔で枕にスリスリしている魔女っ娘。


「あ……生きて……私はてっきり……」


 どうやらこの使用人、私が魔女っ娘を殺したと思い込んでいたようだ。


「お、お嬢様! 起きて下さいまし。お嬢様!」

「……ふぇ? あ、クリス……おはよう」

「おはようじゃないですよぉ! お嬢様、早く起きて下さいまし! どうして裸で寝ていたのですか!」

「え? それは……あっ……」


 そこでなんで私の顔を見るの?

 どうしてそこで赤くなるの?


 まるでアンタが裸になった理由が私にあるみたいじゃん?


 私なんも知らないからね?


「やはりあなたが……」

「ち、違うのよクリス! これはその……そ、それよりも早く着替えを出して下さい!」

「は、はい。かしこまりました」


 どうして魔女っ娘のやつ私と目を合わそうとしない?

 一体どうしたっていうの?

 スマコ?


《なにも異常はございませんでした、はい。》


 だからなんで棒読みなのよ!

 もう知らん!


 とっとと支度してあのおっさんがいる学園とへ向かおう。


 それから私たちはご飯を食べて身支度をし、学園と向かった。


 屋敷を出る時は、魔女っ娘のお母さんもあの性格の悪そうな妹も姿を見せることはなかった。


 使用人たちに見送られ、私たちは馬車へと乗り込んだ。


 馬車って乗ってみると、以外と振動が凄いわね。

 最初はこの初体験が新鮮だったけど、もう飽きたわ。


 それにしても本当にここは異世界なのね。

 建物も景色も人の服装も、日本とは全く違った雰囲気と匂い。


 まるでどこかの外国に来ている気分になるわ。


 実は私って海外にいったことなかったのよね。


 両親は仕事で世界中を飛び回っていたけど、私は病気のせいでスパイ活動もろくに出来なかったから行かせてもらえなかった。


 まさか死んだあとに海外旅行をする羽目になるとは思わなかったわ。


 海外というより、異世界だけど……。


「あ、そろそろ見えてくるよ! あれがマキシム学園」


 あぁ――うん。

 でっか。

 ひっろ。

 感想以上!


 さすが王国が直に管理している学園だけはあるわ。

 膨大な敷地にどでかい建物。

 それに、なにかの競技場的な観客席があるスタジアム。


 周りの穏やかな雰囲気とは全くのミスマッチな圧倒的な存在感だわ。


 私らが乗った馬車が学園の門に近づくと、門番が出てくる。


「失礼。カミキ家の紋章はおありでしょうか?」

「こちらです」

「確かに。どうぞ、お通り下さい」

「ありがとう」


 魔女っ娘が胸ポケットから手帳のような物を取り出してそれを見せていた。


 学園内へと入り、使用人が馬車を止めたので私たちも外に出る。


 中も広いしメッチャ綺麗じゃん。

 これは凄いわぁ。


 ん?!

 なんかこっちに2人走って向かって来ているね。

 殺気は……ないか。


「はぁ……はぁ……はぁ……マイカちゃん!」

「ちょ、ちょっと……待ってくださいまし……」

「アズサちゃん! ハズキちゃん!」

「よく……よく生きていてくれました」

「ワタクシたち2人は……奇跡を信じて……わぁああああん」

「えへへへ、お2人と約束……しましたからね。絶対に生きて戻ると」


 うんうん、感動の再会だね。

 あの子らが魔女っ娘の話に出ていたお友達か。

 確かに天才と呼ばれるだけあって……強いね。


 今はその子らと一緒にいなさい。


「あ、紹介しますね! こちらがアタクシの命の恩人さんです!」

「……えっと、マイカちゃん?」

「アタクシたちの目にはその……そこには誰も見えていないのですけれど?」

「え……えぇええええ?!」


 おっと、なんか魔女っ娘の叫び声が聞こえた気がしたけど、まぁいいや。


 今は大事な友達との再会を喜んでいなさい。


 何かあっても今のあなたなら私が戻るまではなんとかできるはずだから。


 私は私のやるべきことをやろう。


 スマコ、まずはこの学園全土をマッピングするわよ。


《御意》


 あのおっさんのいる位置はわかっている。

 正確にはあの封印の位置だけどね。


 まぁあんなに大事そうに持っていたから、その辺に置いておくことはしないはず。


 それをやってくれれば私も楽でいいんだけどさ。


 アイレンズが示すその場所がなんの建物でどういった構造をしているのか、また人員配置や、その構成などを調べる必要がある。


 今の私に足りないものは情報なのよ。


 あのおっさんに勝てる力を付ければ一番いいけど、それは正直無理。


 そんな時間は正直ないと思う。


 初めてクズ神と話した時、向こう側の神が力を取り戻すのは十数年後だと話していた。


 あの時私は5歳で、今が12歳だからもう7年は経っているのよね。


 あいつの言う十数年後が11年後なのか19年後なのかわからない。


 多分あのクズにもそれは分からなかったんだと思うの。


 どちらにしても封印を早く解くことに越したことはない。


 それができなけれな乙羽がまた狙われてしまう。


 今の私にできる全力を、ここには存在していない乙羽のためだけに使おう。


 それがこの世界で生きる私の唯一の理由なのだから。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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