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041 ふろさいこ―

久々に本編です。

 結局、今日はなにも仕掛けてくる気配がなかった。

 というよりも、その必要がなくなったからだね。


 少し前に使用人から聞いたんだけど、あのおっさんのせいで私まで魔女っ娘と同じ学園の生徒にされてしまったらしいわ。


 あのおっさんはこの国一番の実力の持ち主であり、魔動兵団とかいう超重要な部隊の総団長を務めているのだとか。


 さらに、魔女っ娘が通っていた王国直属の学園であるマキシム学園の理事長を務め、自分の部下や先生、生徒の教育に力を入れながら、己自身も常に鍛錬を重ね続ける勇者の称号を持つ者らしい。


 これは使用人たちの会話や、魔女っ娘の説明で理解した。


 そして、明日には魔女っ娘がこの屋敷を出てマキシム学園へと戻る。

 つまりはあのおっさんがいる学園に行くわけだ。


 そこでなら、部下も多いだろうからいくらでも私の監視を行うことができるからね。


 私が自由に動ける立場だったら無理だったろうけど、そこはもう同じ生徒にしてしまうという先手を打たれてしまった。


 そんなん無視したろうかと思ったけど、おそらくそこの先生とか生徒とか誰が刺客なのかもわからない状態だったら魔女っ娘から離れるわけにはいかない。


 だからここは生徒として潜入する他ないという判断。


 今のところは、まだあのおっさんの手の平で転がされていよう。

 きたる時にはあの封印のクリスタルを破壊して、そのついでにきっちりとこの礼をしようじゃないか。



 それにしてもさっきからこの魔女っ娘のテンションがうざい。

 私が同じ生徒になるって聞いてからずっとその学園の話をしている。


 初等部と高等部では校舎が違うとか、寮は同じ部屋がいいだとか、寮のご飯はおいしいだとか、久しぶりに友達と会いたいとかずっとそんな話。


 ぶっちゃけどうでもいい。


 私が確認したかったのは、あのおっさんがそこの理事長ということで常にその学園にいるということ。


 ならば、私もそこに行く意味がある。

 あのおっさんは私の目的を知らないからね。


 魔女っ娘への刺客たちを退けつつ、あのおっさんの動向を掴む。

 そのためには私としてもその学園に潜入しておくのは好都合だからね。


 今日はもうゆっくり休もう。

 さっきまで魔女っ娘が横でうるさい中、おなかいっぱいにご飯を食べさせてもらった。


 なんか使用人たちから驚愕の目で見られて、料理を運ぶのが忙しそうで悪いなぁとは思ったけど、途中からなんか楽しそうにしていたから気にしなくてもいいかな。


 その後は風呂に行けって部屋を追い出されたんだけど、ヤバいくらいに広いお風呂だったわ。

 普通に泳げるくらいに。

 ってか普通に泳いだわ。


 なんか使用人たちが身体を洗おうとしていたから必死に抵抗したけどね。

 魔女っ娘もなんか必死だった。


「この子はアタクシが洗うのです! あなたたちは下がりなさい!」

「いえいえいえ、ここはいくらお嬢様でもお譲りできません。私どもが洗わせていただきます」

「絶対にだめです! 絶対にアタクシが許しません! あの子の体に触れていいのはアタクシだけです!」


 なんかそんな感じで言い争っていたから、その間に自分でさっさと洗った。

 乙羽もそうだったけど、この魔女っ娘といい使用人のお姉さんといい、なんで身体を洗いたがるのかな?


 わからない。

 私にはよくわからない。


 今わかることと言えば、風呂サイコー。

 久々の湯舟、マジ半端ねぇっす。


 日本人ならやっぱ風呂だねぇ。


 ずっと転身機の洗浄機能か、水浴びしかできなかったもんなぁ。

 転身機の洗浄機能もさ、あの体の隅々まで弄られる感覚がいまだに慣れないのよね……。

 確かにそれが終われば体は奇麗さっぱりするんだけどさ。


 でもやっぱりお風呂が気持ちいいわぁ。


「ちょっとぉ、なんで一人で入ってるの? アタシは置いてきぼりなの?」


 こいつ……2人になるとこの口調に戻るのね。

 てかアンタらが勝手に言い争ってただけじゃんよ。


 無視して泳ごう。

 この風呂は私に泳げと言っている……ような気がする。

 ということで平泳ぎじゃ。


「あははは! なにその格好! 変だよぉ」


 万国共通平泳ぎじゃい、アホめ。


「ちょっと、あんまり足を広げると……ぐほっ?!」


 えっ?!

 な、なになに?!

 血?!

 まさか、刺客がいたの?!


 これでも警戒していたんだけど、気配を見逃した?!


《親愛なるサクヤ様、大丈夫です。魔女っ娘様は未知の領域を己の目で見てしまい、脳内処理が追い付かずに鼻血を出されただけでございます》


 ……うん、全く意味がわからん。

 要するにのぼせたってことでオッケー?


《オッケーです。サクヤ様》


 その後私は、のぼせて目を回している魔女っ娘を抱きかかえてお風呂を後にした。


 目を覚ました魔女っ娘は、私の顔を見た瞬間に顔を真っ赤にしてまた少し鼻血を出していたけど、なぜが全力でお礼を言われた。


 そんなよくわからない魔女っ娘の奇行も、明日学園に戻れるという嬉しさから来るものだと結論付けて、ベッドに寝転んだ。


 このベッドもふわっふわで、しかもデカい。

 キングサイズってやつ?

 2人が大の字で寝てもはみ出ないじゃん。


 だからさ、もっとそっちで寝てくんない?

 なんでそんなにくっ付くの?


 これじゃあ迷宮の通路で寝ていた時となにも変わらないじゃんよ。

 しかもこいつもう寝てやがるし……。

 すっかり私は魔女っ娘の抱き枕だよ。


 ないわぁ……おやすみ。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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