表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/208

A07 前に進め

アズサ&ハズキルート編です。

こちらも物語を進めます。

 マイカたちの死亡連絡があった次の日、死亡したとされる人たち全員の追悼式があった。


 国王であるルーク・マキシム様やマイカの父親である現勇者のカミキ様、それにそれぞれの家族や関係者が出席していた。


 こっちの世界の追悼式とかいうものに初めて参加したアタシとハズキだったけど、正直出席するんじゃなかったと後悔した。


 死者を追悼する気はさらさらない。


 こっちの人たちは、死するということは無能だと言い張る。

 そして、死というのはそんな弱い自分が生まれ変わるための手段らしい。

 弱いやつは死んで当然、早く死んだ方がいいとさえも平気で口にしやがる。


 それを淡々と言い放つ方もそうだし、自分の子どもが死んだというのに、そこまで弱い人間だったのかと逆に罵倒する親族たちも頭がおかしいと思う。


 だけど、この世界はそういう世界なのだ。


 この世界の人たちからしたら、今こうやってアタシとハズキがマイカの死を悲しんで泣いている状態は異常なんだろう。


 追悼式が終わるまではアタシもハズキも我慢した。

 その後に寮の部屋に戻った瞬間にアタシたちは同時に泣き崩れた。


 つい先日まで一緒に過ごしていた友達が突然死んでしまったんだ……。

 そんなの耐えられるはずがない。


 それは現世でもこっちの世界でも変わらない。

 マイカは普通の女の子だった。

 このイカれた世界の住人でも唯一心が許せた存在。


 強さ?

 魔動力の高さ?

 爵位?


 くだらない。

 本当にくだらない。


 あの子は一人の人間としてとても立派だった。

 人のために物事を考えることができる優しい子だった。

 アタシたちの目的のために全力で協力したいと笑顔で言ってくれる子だった。


 大事だと思っていたそんな存在を亡くしてしまったんだ。

 悲しくないわけがなかった。


 その日、アタシたちは一晩中泣き続けた。


 次の日もいつも通りに授業が始まる。

 本当にいつも通りだ。


 でもアタシの隣の席にもうマイカはいない。

 ここに来るとなおさら実感してしまう。


『アズサ、ウチらに止まっている時間はあらへんぞ』

『あぁ、わかってる。マイカという存在はアタシたちの中で絶対に忘れないようにしよう』

『当たり前や。マイカのためにもウチらは前に進むんや。それがあの子のためになると信じとんねん。そう……思いたいねん』

『あぁ……』


 アタシたちはそう誓い合ってから、より一層強さを求め続けた。


 それも全ては、アタシたちの目標であるミサキとホノカを探すため。


 あれから2人の手がかりはなにも掴めなかった。


 アタシたちのように、どこかの貴族の家に生まれ変わっているのかと思って、学園の休みを利用していろいろな家に訪問をした。


 一応アタシらは伯爵家だけど、この世界では天才と呼ばれていて特別な扱いを受けている。


 だから他の貴族の家にも行きやすかった。

 逆にアタシらとの関係を作ろうと向こうの家の者も必死だった。


 自分たちの嫌いな権力を振り回す貴族と一緒みたいで非情に不愉快だったけど、2人を探すにはこれしか方法がなかったのも事実。


 アタシらと同い年か、もしくは年齢が近い歳の子に絞ってその貴族の家を訪問しまくった。


 そして、その子の前で『日本人なら返事してくれ』となにげなく日本語で喋りかける。


 それで反応がなければ、適当に理由を付けて帰るのを繰り返していた。


 この国の貴族の家は、長い年月をかけてほぼすべての家を回ったつもりだ。


 後は平民か、他の国の貴族なのか。

 それは長期の休みでもない限り探しに行くことは叶わない。


 だからアタシたちは今、魔動兵団の入隊を目指している。


 魔動兵団というのは人族全土で存在している魔族との戦争に備えた軍隊だ。

 その仕事はさまざまで、村の守備隊から王族や貴族の警備、他にも砦の防衛やギアメタルの開発などを行う部隊まで存在している。


 この世界で魔動兵団に入るということはとても名誉なことであり、人族全土で優遇される職務となる。


 このマキシム学園は、魔動兵団に入るための学園といっても過言ではない。


 それはこの国直属の学園であり、現勇者にして魔動兵団の総団長であるカス・カミキ様が理事長を務めているからだ。


 魔動兵団に入るためには、この学園の高等部であるSクラスに入ることが絶対条件と言われている。


 アタシらはまだ初等部だけど、ここでの成績も高等部のクラス選別に反映されるらしいから今ここで頑張る必要があるのだ。


 絶対に2人で魔動兵団に入るため、日々己を磨き続けた。


「今週はいよいよ課外授業ですわね」

「えぇ、遂にこの時がきましたの」

「マイカちゃんが命を落としたあの場所へ行くのですね……」

「ワタクシたちは絶対に生きて戻りますのよ。マイカちゃんのためにも」

「えぇ。必ず……」

「今日も秘密特訓、やりますでしょ?」

「もちろんですの! 一緒に頑張りましょう!」


 アタシらは授業が終わって一度寮に戻った後、いつも秘密の特訓を行っている。

 この学園はとても広くていろいろな施設や建物がある。


 そのほとんどがさまざまな訓練を行うための施設であり、使用の許可を取れば時間外でもそこを利用することができるのだ。


 放課後の時間を利用して、アタシらみたいに自分たちで訓練しているような貴族はいない。


 一日中嫌というほど訓練をやらされているから、時間外まで自主的にやろうとか思うもの好きはアタシらか、肩身が狭い平民の人たちくらいのものだ。


『ほんじゃ、いくで! アズサ!』

『あぁ、ぶちのめしてやんよ! ハズキ!』


 いつも通りの全力攻撃。

 ギアメタルを使用しての訓練はまだ初等部のアタシらは認められていない。


 危なくて普通に死ねるからね。


 だから訓練用として支給される、威力が最小限にされているものを使用して訓練を行う。

 それでも形は剣や盾、他にも銃や弓矢や杖などいろいろと存在していて、それが当たっても少し痛いくらいのもの。


 どうやらアタシには剣の形が性に合っているみたいで馴染みがいい。

 魔動力で、剣の威力を上げたり属性魔法を付与したり、剣先を伸ばしたりと使い勝手がとてもいいのだ。


 ハズキは両腕両足に装着するタイプの拳闘士スタイル。

 スタイルが違うだけで、基本的にできることはアタシと一緒。


「はぁあああ!」

「せいやぁあ!」


 今日もアタシの剣とハズキの拳が全力で交差する。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ