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A06 別れ

別ルート編です

――それから約1週間が過ぎた。


 アタシたちのクラスは今、野外で魔動力操作の訓練をやろうとしているところ。


 支給された風車のようなものが付いたギアメタルを手に持ち、先生の話を聞いている。


「それでは、本日は魔法訓練を始める。まずこの学園で魔動力を感知できない者も魔動力の操作ができない者もいないと思うが……まずは自分の魔動力を操作して支給したギアメタルにそれを流し込みなさい。すると、このように青く発光して風車がまわります」


 おぉっと少しだけ歓声が上がる。


「魔動力を多く流せば流すだけ風車がよくまわり、風が強くなります。まぁ君たちの年齢なら、風車はまわらずとも青く発光させることができえれば上出来です。さぁ、やってみたまえ」


 それぞれが自分の中で魔動力の操作を始めた。

 確かにそのほとんどは、風車がまわるどころか青く光ることさえしていない。


 そんな中、わざとらしくビューッと風車を高速回転させて風をアタシに向けてくるハズキ。


 あ、この顔は、風でアタシの髪型を変にしてやろうとか考えている時の顔だ。


 アタシも負けじと集中して魔動力を操作し、ギアメタルにそれを集めて風車をまわす。


「やりますわねぇ。アブリエルご令嬢様?」

「アナタ様もなかなかですわ、イエスタリご令嬢様?」

「「おほほほほ」」


 お互い意地になって風と風をぶつけ合い、気が付いたら周りから歓声が上がっていた。


「これは驚いたなぁ。君たちはあの有名な2人の天才様だね。こんなにも簡単にこのギアメタルを起動させるとは……私がここに就任してから初めての偉業だよ?」


 アタシらに向けてそんな話をしている先生に向かって、1人の少女が申し訳なさそうに口をはさんだ。


「あ、あの……すみません。魔動力の感知も魔動力の操作もまだできないのですが……どうしたらよろしいでしょうか……」


「え、えぇえ?! その歳でかい?! あ、君は……失礼した。君はあっちの方で魔動力を感知する訓練をやっていなさい。やり方はわかるだろ? 3歳児でも知っていることだ」


「はい……」


 そういうと、トボトボと一人で隅っこにいき、魔動力を感知する訓練を始めたカミキ令嬢。


「いまだに魔動力を感知できないなんて信じられます?」

「ありえませんわね」

「さすがわポンコツ令嬢様ですこと」


 こそこそと陰口が聞こえてくる。


「はいはい、みなさんも時間まで訓練を続けてください」


 先生がそれを遮り、生徒たちを訓練へと促した。

 再び、それぞれが訓練を始めた。


『くっだらね』

『同感や』


 アタシが思わず日本語で愚痴ってしまったことに、ハズキが同じ日本語でそう返してきた。


「カミキ様、もしよろしかったらご一緒しませんか?」

「お1人よりも3人の方が効率よく訓練できると思いますの!」

「いえ、あの……お構いなく……」


「あら? アブリエル様とイエスタリ様がポンコツ令嬢のところで何かお話されていますわ」

「さぞかし呆れられていらっしゃるのでしょうね」

「お気持ちわかりますわぁ」


 クラスメイトのガキどもは、アタシたちがカミキ様をバカにしていると思っているんだろう。


 そして、それはカミキ様自身も。


 そんなことをアタシたちは気にしない。


「魔動力の感知には、自分の中でイメージをしっかり持つことが大事ですの!」

「例えば、あたくしは自分の中の魔動力を水と置き換えていますわ」

「わたくしの場合は炎をイメージしておりますの。このようにまずは……」

「あのっ! ……本当に結構ですから。あ、あたくしに構わないで……ください……」


 カミキ様は普段よりも少しだけ大きな声を出してアタシらを遠ざけようとした。


「……嫌ですわ」

「……嫌ですの」


 アタシとハズキは同時にそう言った。


「……え?」


「せっかくこうやって同じクラスメイトになれた方が困っていらっしゃるのです」

「自分たちになにかできることがあるのなら、それをやってあげたいと思うのは当たり前のことではありませんか」


「……当たり前のこと?」


「はい、わたくしたちにとっては当たり前のことですの」

「カミキ様、あなた様はあたくし達よりも爵位が上の侯爵家。あなた様からしたら身分が下の者からの教えは屈辱ですか? 迷惑ですか? そんなものは関係なく、仲良くしたいと思われるのはお嫌いですか?」


「……ひぐっ……ひぐっ……嫌じゃ……ないです……仲良く……してほし……いです……」


 アタシとハズキはその言葉を聞いて頷き合い、同時に同じ言葉を言った。


「「お友達になりましょう」」


 アタシらが差し出したその手に、震える手を近づけるカミキ様。

 怯えながらも近づけるその手をアタシとハズキはギュッと握り絞めた。



 それからアタシたちがマイカ・カミキとお友達になって、半年の月日が経っていた。


 アタシら3人がずっと仲良くしているおかげで、マイカへの陰口もかなり少なくなった。

 いまだにアタシらがマイカをイジメていると思っているヤツも何人かいたりもするけど、そんなものをいちいち気にしてはいない。


 この学園では定期的に、アトラス大迷宮という場所で少数班にわかれての課外授業が行われる。

 そこでは実際の魔物を相手に訓練を行い、自身のレベルアップをはかる目的があるらしい。


 ちなみに、魔族と魔物はなんの関係ないらしいよ。

 変な話だよね。


 まぁなんにしても、その課外授業の班にマイカが選ばれてしまった。

 あれからアタシらと訓練をしていたマイカは、それなりに魔動力を扱えるようになってはいたけど、それでもやっぱり心配だった。


「マイカちゃん、しばらくの間お別れになりますけど、課外授業頑張ってくださいましね!」

「はい! アタシ頑張ります! 今よりたくさん強くなって、アズサちゃんとハヅキちゃんの力になりたいので!」

「そんなにも嬉しいことを言ってくださるなんて。でも約束ですのよ? 絶対に無理をしないこと、無事にここまで必ず帰ってくることを約束してくださいまし」

「はい! 約束します!」



 それから数日後、アタシらのもとに届いたのはマイカを含めた課外授業に行っていた者たち全員の死亡連絡だった。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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