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029 くっだらね

 おっと、そんなことを考えている場合じゃなかったよ。

 あの魔物と絶賛交戦中の人たちをどうするかだな。


 私としては普通ならガン無視したいところだけど、魔女っ娘が見たら助けるって言うんだろうなぁ。


 お人よしだしなぁ……こいつ。


 まぁ私も少し気になることがあるのは確かなのよねぇ。

 見たところ、そこまで強い魔物はいないようだし。


 スマコ、あのクマみたいな魔物は?


《アトラス・ベアール:アトラス大迷宮へ生息しているクマの魔物。強い力と鋭い爪は岩をも砕き、鋭い牙は肉が引きちぎれるまで離さない》


 えげつないわぁ。

 はぁ……仕方ない、行くか。

 あ、私も顔が見えないようにフードを被ってから行こうっと。


 スマコ。


《御意》


 私は転身機で大きめのフードを作り出してそれを頭から被った。

 それを見た魔女っ娘がまた驚いている。


「前から思っていたんだけど、あなたの服ってどうなっているの?! 一瞬で着替えちゃうし、破けても一瞬で修復しちゃうし……ずっと奇麗なままだし。それに今も私と同じようなローブを一瞬で……」


 話し出すと長いのよこの子は。

 こっちはもう早く移動しようとしてんだから黙ってくれるかな。


「……それにいつもいい匂いなんかさせてさぁ、私なんか水で一生懸命洗っても汚れや匂いがなかなか取れないし、何日か洗えないとそれが気になって……きゃああ?!」


 うるさいのでさっさと魔女っ娘を背負って移動した。

 そして、戦闘が起こっている近くの木の上に降り立つ。


「え?! 人?! マキシム学園の人じゃ……ない?! ルドラルガではあそこ以外に課外授業をやっているところはないはず……どういうこと?」


 なるほど、魔女っ娘も知らない人たちってことか。

 結構被害も出てんなぁ……こんなんこの子が見たら……。


「助けなきゃ!」


 やっぱりか。

 あんまり人前に出たくはないんだけどなぁ……なんて考えていると、2人の女の子が魔物に殺されそうだ。


「だめぇええ!」


 あ、バカ!

 せめてフードを被ってから行きなさいよ、全く。


 魔女っ娘は、火の弾丸が前方へと飛んでいく火魔法を発動する。

 それによりさっきの危ない2人は助かった。


 私は空中機動術で空中に立ったまま、下にいる5体の分身体をそれぞれ操り、魔物に向かって手裏剣を投げつける。


 魔物の全滅にまで、そこまで時間はかからなかった。


 ふぅ。

 だいぶ、5体の分身体を操ることにも慣れてきたね。

 でもこれをやると、ちょっと酔っちゃうのが嫌よね。


 魔女っ娘の様子は……お礼を言われているのか。

 まぁよかったよかった。


 ん?!

 ちょっと、どういうことよ!


 私は瞬時に、魔女っ娘の背後に見えない壁を出現させた。


 魔女っ娘が助けた2人とは違う、別の人が短剣を忍ばせて魔女っ娘の背後へと迫っていたからだ。


 それに、魔女っ娘と話しているその子らも気が付いたようだ。


『あ、やめ……』


 しかし、その者の短剣は私の見えない壁で弾かれた。

 そして、私はその者の背後へと瞬時に現れ、手裏剣を首元に突き付ける。


 魔女っ娘が助けた一人の子のローブが脱げた。

 その子は私たちと同じくらいの歳の女の子で、頭には2本の角が生えていた。


「え……ま、魔族?!」


 魔女っ娘が驚いている。


 へぇ、これが魔族かぁ。

 確かに人間と少しだけ気配が違うなぁとは思っていたんだよね。

 私がこいつらに感じていた違和感はこれだったんだな。


『ごめん……なさい……』

「え?! きゃぁあ?!」


 え?!

 魔女っ娘が攻撃された?

 今抑えているこいつに夢中で、そっちを見ていなかったよ。


 私の未来視は対象を見ていないと発動しないのだ。


 それにしても、助けたのに攻撃されるってどういうことよ!

 しかもこら、魔女っ娘!

 そんな攻撃、避けられないわけじゃないでしょ?!

 もうっ!


『忍法、木の葉隠れの術』


 私は瞬時に魔女っ娘を抱きかかえ、花びらを地面から舞い上がらせてその場から姿を消した。



 しばらくは分身体で魔族側の様子を見ていたけど、しばらく経つとその人たちはどこかへと歩いて行ってしまった。


 それを確認した私の分身体は、花びらに変わって消える。


 いきなり殺そうとするなんて、さすがにビックリしたねぇ。

 あの短剣にはたっぷりと毒が塗られていた。


 そりゃ、殺すのは魔法だけじゃなくてもできるもんね。


 それよりもさっきの出来事で、魔女っ娘がショックで寝込んでしまったよ。

 どうしましょう……。


 怪我自体はたいしたことなかったから、チャチャッと手当は済ませていた。(転身機とスマコが)


 実はこの転身機本体のマフラーを魔女っ娘の首にも巻くと、一時的に転身機をまとうことができる。


 そうすれば、私と同じように体の怪我などをスマコが治療してくれるのだ。


 怪我が治ってもなんか落ち込んでいる様子で、難しい顔をしている。


 いつもはうるさいと思っていても、いざこの子の元気がないとそれはそれでなんか調子が狂ってしまう。


 もう、どうしたらいいのよ、これ。


 でもこの場所にずっと滞在しているわけにはいかないからね。

 魔女っ娘次第だけど、少しずつでも進もう。


 背中のってくれるかな?

 あ、のってくれたわ。


 んじゃ、行きますかね。


 そして私はまた走り出した。


 それにしてもなんでこんなところに魔族がいたんだろう。

 魔族は人族と一緒で地上に住んでいるはずだよね?


 魔女っ娘が言っていた課外授業って雰囲気でもなさそうだったし。


 まぁ、今考えても仕方ないか。

 人族と魔族のいざこざなんて私の知ったこっちゃないし。


 その辺は、いまだに私の背中に顔を埋めているこの子たちが考えるでしょう。


『くっだらね』


 ……え?!

 こ、ここここいつ今……日本語しゃべりやがったぁ?!

お読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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