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028 それぞれのちがい

――アトラス大迷宮最下層


「こんな事態になるなんて……想像もしていませんでした」

「こうやって我々四神獣が集まるのも何千年ぶりか」

「あの白虎がやられるなんてね……」

「白虎は死んだのでしょうか?」

「わからん、ただ封印が解かれたということはそういうことだろう」

「これが異世界人の力ってことだよね」

「アタシたちはあの方の言う通りに行動するだけですわ」

「そう、今こそ事を起こすときだ。人類に滅亡を……」


*****


――クズ神との会話を終えた私は、涙目でワナワナしている魔女っ娘を見る。


 なんでこいつまで泣いてんの?

 さっきから黙って無視し続けたから?

 そんなのいつものことじゃんよ。


 まぁ、いいや。

 さっさと地上に行きますか。


 アイレンズには新たなポイントを示す表示が映っていた。

 そこはやっぱり地上を示しているようだった。


 まぁこれに向かっていけば地上に出られるんでしょうね。

 スマコ、頼むわよ。


《御意》


 とりあえず魔女っ娘を背負って歩き出す私。

 ていうか、もういい歳なんだから自分で歩けよな、コイツ。

 おんぶすると途端にニコニコするところなんか、まだまだお子ちゃまなんだから。


 それにしても白虎強かったなぁ。


 私もそれなりに強くなった気ではいたんだけど、手も足も出なかったわ。

 しかもアイツ、全然本気じゃなかったしねぇ。


 あんな化け物には二度と会いたくないわぁ。

 切実に思うよ、マジで。


 でもあんな化け物が、あと3匹はいるってことだよね?

 四神獣なんていっていたくらいだからさ。


 地球上でいう四獣って確か、「白虎」「青龍」「玄武」「朱雀」だっけか?


 まぁ白虎が出ている時点で多分間違ってはいないはず。

 こいつらがもし、仲間意識がメッチャ強かったらどうすんべ?


 私は覚えていないけど、白虎を追っ払ったのは私みたいだしさ……。


 急に、「白虎の仇じゃぁぁあああ!」とか「ウチのもんになにさらしとんじゃあ、われぇえ!」とかそんなノリで4匹が同時に出てきたらどうしよう。


 なにそれ、ちょ――怖い。


 早くこの迷宮を脱出しなければ……。

 私を追って地上に出てきても、そんなもんは知らん。

 大パニックで地上がえらいことになろうとも……私関係ない……はず。


 そんなことを思いながら私は迷宮内を進んでいく。



 ある深い霧が立ち込める森林地帯のエリアで休んでいると、妙な気配を察知した。


「どうしたの? 魔物?」


 私が身構えると、魔女っ娘がすぐさま反応する。


『忍法、分身の術』


 私は花びらで分身体を5体作り出し、それぞれに辺りを捜索させた。


 分身体の1人が、奇妙な格好をした人たちを見つける。


 人間?

 数は……ざっと30人くらいはいるかな。


 頭からもローブなんか被っちゃっていかにも怪しいわぁ。

 怖いわ――。


 あ、魔物が襲い掛かったよ。


 おぉ、やっぱり魔法を使うの……ん?

 あの人らは武器みたいな道具を持っていないんだね。


 魔物と同じように、魔動力を魔法スキルに介して発動させている。

 今の魔女っ娘もそれに近いやり方だけどね。


 まぁ、あのギアメタルっていうんだっけ?


 スマコの解析なら、あれは魔動力が少ないやつでもある程度の強力な魔法が発動できるように作られているのよ。


 当然、魔動力の総量を底上げするとか操作性を上達させるとかすることで、そのギアメタルの性能を存分に生かした強い威力の攻撃が発動できるようになるわけ。


 でも私にいわせれば、それは制限された力なのよね。


 ギアメタルの性能によって発動できる魔法の威力や種類が変わるから、言い方を変えればそのギアメタルが出力できるレベル以上の魔法は発動できないわけよ。


 この世界の一番強いギアメタルがどんなもんかは知んないけどさ、それ以上の成長はないってことじゃん?


 なんかそう考えるといまいちだよねぇ。


 それと、一部の魔物とか今見ている人たちとかが使っている魔法の発動の仕方も微妙。


 あの魔法スキルっていうの?

 それに魔動力を流し込んだら、勝手に術式が組み上げって魔法を発動することができるっていう、一見すると便利そうなやつなんだけど。


 これも、魔法スキル次第で威力が制限されるし、ギアメタルと同じで決まった魔法しか発動することができない。


 つまりは、両方とも共通して力がうまく制限されているってことなのよね。

 それはまるで、どちらかに強さがとび抜けた者が出ないようにしているみたい。


 この世界を作ったっていうあのクズ神は、平和を願っている神っぽいからそういうシステムにしたのかな?


 争いが起きないように、みんなが同じくらいの強さになるように。


 そう考えると、私や今の魔女っ娘がやっているような術式を自分で構築するやり方はご法度なんだろうなぁ。


 私の場合は、もともとの力が魔動力じゃなくて忍気だから、こういう使い方をしているだけであって、それを真似てしまった魔女っ娘が少し特殊なのよね。


 しかも、私はまだ術式の構築に成功していないというのに、魔女っ娘はもう成功させている。


 まぁ、もともと知っている魔法スキルの術式を自分で真似て構築しているような感じだけど、スキルを介した魔法よりも断然こっちの方が強力になるのよ。


 だから、魔法に関しては魔女っ娘の方が優秀なんだよなぁ。

 知らない間にメキメキ強くなっているような気もしてんだけど……。


 もし、あのクズの封印を解いて世界が平和になったとしたら、この世界に生きる者としては異物として望まれない子になるかもしれないね。


 まぁそんなもんは私の知ったことじゃないけどね!

 私と一緒に旅をしているせいでそうなったとか、そんなことではないはず!

 ないったらない!


 この子は根っからの善人みたいだしさ、力を持ったとしても平和を願うあのクズ神の力にはきっとなるだろう。


 私は世界の平和とか殺戮とか破壊とか滅亡とか、そんなもんはどうでもいい。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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