027 それでいいのか?
目を覚ますと、目の前には涙と鼻水を垂らしながら目を真っ赤にしていた魔女っ娘の顔があった。
「よかった……よがっだょぉぉおおお……えぇぇぇん」
う、鬱陶しい。
わかったから離れてほしいんだけど。
どうやら私は生きている?
あの後どうなったのかは全然わからないけど、胸からおなかにかけて開いていた大きな穴も今では完全に塞がっている。
でも、その部分の服が破けているということは、あれが実際に起こった出来事だと証明している。
近くにもうあの白虎の姿はない。
それにしても、さすがに胸とおなかが丸出しで少し恥ずかしいわ。
スマコ、転身機で修復して。
《御意》
徐々に裸が見えていた部分が修復されていく。
それを魔女っ娘が驚愕の目で見ていた。
スマコ、一体なにがあったの?
《解析不能です。あの後すぐに私や他の七つ道具も全て起動を停止しておりました。よって、音声や映像などのデータも残っておりません》
七つ道具が全部停止していた?!
今まで私がいくら眠ろうが気を失っていようが起動していたアナタたちが?!
《解析不能です》
マジかぁ。
魔女っ娘なら事の顛末を知っているんだろうけど……ん?
なんかあそこに落ちてるね。
私は地面に落ちていたその水晶のような物を見た。
あれって、白虎が首に付けていたヤツじゃない?
なんであれが壊れてんの?
「ビックリしたよねぇ……アナタがあの水晶を砕いた瞬間に、眩しくてなにも見えなくなっちゃったし」
水晶を見ていた私に、魔女っ娘がそう言う。
はい?
あれ、私が壊したの?
全然記憶にございませんが?
「でもあの姿カッコよかったなぁ! あ、まだちゃんとお礼を言ってなかったね。初めて会った時もそうだけど、今回もアタシを助けてくれてありがとう!」
あの姿とはなんぞ?!
私は一体なにをしたのだ?!
まぁいいか。
とりあえずは生きているんだ。
命があるならなんとでもなるさ。
さて、思いのほかクズ神が求める封印の解除とやらが高難易度だった。
あんな強い白虎を相手にするなんて聞いてないぞマジで。
生きていたからよかったようなものの、あれで死んでいたら乙羽を守れなかったじゃん。
まぁ最後のあれは私自身ですらも全くの想定外な行動だったけどね。
あの胸の痛みは恐らく白虎の特殊能力なんだろう。
いつそれをかけられたのか全然わかんなかったけど、今後はもっと気を付けなきゃだ。
それにしてもあのクズ神、本当に腹立つわぁ。
自分が封印されたノロマのクズな癖に、人にこんな命がけのことをやらせるなんて信じらんない。
あのクズ、クズ、クズ!
「そ、そそそそそんなにクズクズ言わないでくださいよぉ~。グスン……」
……え、クズ神?!
「どうせ私は惨めにも封印されたノロマなクズですよぉ~。ふぇぇ~ん」
それで?
アンタなんでまた接触できたわけ?
「ちょっとはフォローしてくださいよぉ! 本当にイジけてますからねぇ?」
わかったからさっさと要件を言え。
「ひ、ひどい……本当にドライなんですから。でもサクヤさんのおかげで、封印が解けました」
封印が解けた?!
じゃあ、もしかして白虎の首に付いていたあの水晶が封印だったってこと?
「はい! あれを壊しさえすれば、封印は解かれるのですぅ!」
おい……それを早く言いなさいよ!
それならもっとやりようはあったじゃん!
なんで命のやり取りをしなくちゃいけなかったのよ!
「だ、だってあの時は時間がなくて……そんなに怒らないでくださぁい。グスン。」
うるさいわアホ!
もともと、ここの場所まで3年もかかるなんて聞いてないし、着いた先にあんな凶悪なモンスターがいるなんて思ってなかったし、そもそもあんな水晶が封印だなんて思いもしなかったんだからね!
このクズ神!
「ご……ごめんなさぁああい。ふぇぇええん。この人怖いですぅうううう」
はぁ……まぁいいわ。
言いたいこと言ったらスッキリしたし。
それで?
封印が解けたのにアンタはどこにいんの?
「いや、あの……封印はまだ6つほど残っていまして……そのぉ……」
はぁあああ?!
1つじゃないわけぇええ?!
「ご、ごめんなさぁああい。許してくださぁあああい」
泣くな、鬱陶しい。
私がイジメてるみたいじゃんか。
「私イジメられてますぅ! えぇええん!」
それよりも、またあんな化け物と戦わなくちゃいけないの?
さすがにもう命が持たないよ。
「大丈夫ですぅ! もう先程の白虎のような、迷宮内を支配している四神獣と戦う必要はありませんのでぇ!」
四神獣?!
あの白虎、迷宮を支配している魔物だったの?!
そりゃあ強いわけだわ。
まぁ、でもそいつらと戦う必要がないなら安心だわ。
今からどうすればいいの?
「今からそこにいる美少女さんと一緒に地上へと向かってくださいますぅ? 封印がある場所をアイレンズに示しておきますのでぇ!」
地上に行くの?!
人間がいっぱいいる地上へ?!
嫌だ。
「お、おかしいですよぉお! 同じ人間が住む地上よりも、魔物がいっぱいの地下迷宮の方がいいだなんてぇ!」
だって人間嫌いだも――ん。
怖いも――ん。
「お、お願いしますよぉ! これもオトハさんのためだと思って、ね?」
はいはい。
行くわよ、行きますよ。
神様の仰せのままに。
「や、やっと敬ってくれる気になったのですかぁ? えへへへ、一緒に世界を平和にしましょう!」
うるさいわ、クズ神。
調子にのんな。
「ふぁい……。でもサクヤさん、くれぐれも気を付けてくださいね。私の封印が解かれたことで彼方側も焦っています。ここ数年でまた何かしら手段を取ってくるはずなので……」
はいはい。
肝に銘じておくよ。
「またしばらくはお話できませんが……あまり私の悪口を言わないでくださいね……」
あぁ、うん。
ほどほどにしとくよ。
「ちょっとぉお! 一応これでも私は神なん……ザザッ、プツン」
そこで切れるとは……それでいいのか、神よ。
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