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023 びみょうなずれ

そのままマイカ視点です。

 しばらくの間、アタシが泣き止むまで黙って待ってくれていた少女。


 ちょっと怖そうな雰囲気の子だけど、実は優しい子なのかな?


 見たこともない服装に不思議な力を持っている女の子。


 多分だけど、同じ歳くらいだと思う。


 どこから来たのかな……なんであんな動きができるんだろう……聞いたら教えてくれるかなぁ……。


 そんなことを考えていたら、また魔物がやって来た。


 うそぉ?!

 また魔物?!


 しかもこんなに大群……これ以上はこの子に迷惑をかけることはできない。


 こんなポンコツなアタシでもこの子が逃げる時間くらいは稼げるはず。


 そう思って魔物の前に出る。


 今の内に、早く逃げ……え?!

 またこの花びら……うそ?!

 花びらにアタシが持ち上げられているの?!


 え、え?

 えぇええええ?!


 魔物が花びらに集められて、丸まったかと思ったらそのまま爆発しちゃった……。


 これもこの子の力……なの?!


『あなた何者なの?!』

『す、すごい……すごい、すごい! あなたすごいわ!』

『アタシの名前はマイカ・カミキ! あなたのお名前は? あ、まずは初めましてだね!』


「……」


 え……む、無視なの?

 しかもなんか……怒ってる?



 なにか怒らせるようなことを言ってしまったのかと思って、その子にいろいろと話しかけてみたんだけど、結局なにも返事はなかった。


 完全に怒らせちゃったと思ったアタシは、その子に置いていかれないように、必死にしがみついた。


 それでもアタシが背中に乗っていることなんかお構いなしに走り出してしまった。


 まるでアタシがいないみたいに存在を無視されているような気すらしてしまう。


『ねぇねぇ、アタシ重くないの?』

「……」

『ねぇねぇ、なにかお話してくれると嬉しいなぁ』

「……」

『それならアタシの話を聞いてくれる?』

「……」


『アタシね……』

「……」


 せめて返事をしてもらいたいという願いから、アタシはずっと喋り続けた。


 自分でもびっくりするくらいによく喋ったと思う。


 特にお友達2人の紹介をしているところなんか、お喋りしている間に楽しくなってきちゃって、もう止まらなくなっちゃった。


 それでもこの子は全く返事も反応もしてくれなかった。


 本当に時々、チラっと目を合わせてくるだけ。


 もしかしたらうるさいとか思われているのかな?


 でも目を合わせてくれるだけでも、本当に嬉しくなっちゃって思わず笑みがこぼれてしまう。


『ふにゃあ?!』


 びっくりしたぁ……いきなりすごいスピードで走り出すんだもん。

 心臓が飛び出るかと思ったよぉ。


 しばらくすると広いエリアに到着した。


 そこには絵本の中でしか見たことがなかったあの「メリドの実」があった。


 メリドの実は、アトラス大迷宮内でしか採ることができない、幻の果物と言われている貴重なもの。


 一度はお目にかかりたいと心から願っていたものが今、目の前に……。


 そう思うと、涙が止まらなくなってしまった。


 なんだかこの子にドン引きされているような気もするけど、アタシはメリドの実を口に含んでみた。


 あ、ああああああ甘ぁああああい!

 ひやわへだぁあああ。


 自分でもわかるくらいに顔がにやけていると思う。


 え、え?!

 この湧水って……まさかあの有名な湧水?


 この湧水は上層でも採取することができるけど、地上では高価で取引が行われるほどの貴重な水。


 普段は口にすることができない高級な水がこんなに……。


 い、生きててよかったぁ。


 これらをおなかいっぱいになるまで食べさせてもらった。


 それにしてもこの子の食欲が半端ない。


 いや、本当にびっくりした。

 どこにあんな量のメリドの実が入るんだろうって思うほどに気持ちよく食べていた。


 おなかがいっぱいになったことで安心したアタシは、どうやら眠ってしまっていたらしい。


 ふと、目を覚ましたらあの子はもうアタシの前からいなくなっているんじゃないかって不安になって飛び起きたら、超至近距離にその子のかわいい寝顔があった。


 本当にかわいい顔をしている。

 起きていたらあんなに無愛想なのに……。


 思わずそのギャップに笑みをこぼし、頬っぺたをツンツンしてみたくなった。


 人差し指をそぉっと近づけると、それを小さな口がパクっと咥える。


 え、え、えぇぇえええええ?!

 ちょ、ちょっと待って?!

 すすすす、吸われてない?!

 それ吸うものじゃないから!


 いたっ?!

 今度は噛まれたぁああ!

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!

 謝るから許してぇえええ。



 そして、突然目を開けたかと思ったら何事もなかったかのように、またものすごい勢いでメリドの実をパクパクと食べはじめてしまった。


 今度から寝ている時はそっとしておこうと心に誓った。


 どうやらそろそろこのエリアを出発するみたいで、メリドの実と湧水を特殊な入れ物に入れている少女。


 最初はアタシが持っているこの魔道具と同じものかと思ったけど、それとは違っていたんだよね。


 あれはどういう原理なんだろう。

 多分聞いても教えてくれないんだろうなぁ……。


 アタシが持っているこの魔道具は学園から支給されたものだった。


 持ち主によって入れられる容量が変わるらしいんだけど、これだけは先生に褒められたっけ。


 でも戦いにはあまり役に立たないから自慢にもなりはしないけどね。


『これくらい入れておけば、しばらくは持つよね!』


 とその子に言ったら、お気に召さなかったようで、ここにある全てのメリドの実をこの魔道具に入れられてしまった。


 その後、水専用の魔道具にも容量いっぱいの湧水を入れた後にそのエリアを出発し、またそこからこの子との長い旅が始まった。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マイカ視点で読むことによって、 色々と理解できて話を楽しむことができますね。 テンポが良いのでサクサク読めてしまいます!
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