021 げーむなせかい
私は大量に実っていたメリドの実を腰のポーチに入れ、湧水をボトルに満タンに入れる。
しかし、この魔女っ娘のと合わせて2人分となると節約しても1週間持つかどうか……。
と悩んでいたところで、魔女っ娘が変な袋を取り出した。
見た目は小銭入れくらいの小さな袋。
その袋にメリドの実を突っ込もうとしている。
こいつアホなの?
ついに気でも狂ったのかと心配していたら、まさかその袋にメリドの実がどんどん吸い込まれていく。
いやいやいやいやいやいや、おかしい。
それ、どんだけ入るの?
私のポーチに入れた量を遥かに超えてんだけど。
「*******」
はっ?
まだ集めろって?
忍気開放、20スロットル!
私は木々を飛び回り、メリドの実を魔女っ娘の方に投げていく。
魔女っ娘はそれをどんどん小さな袋に吸い込ませて収納する。
私もここまでくると、どこまで入りきれるのか興味が出て来た。
途中からは手裏剣まで使って、さらに速度を上げて実を落としていくと、魔女っ娘がすごくワナワナし始めた。
さすがにそろそろ限界か?
ふふふ、さすがに私も大人げなかったぜ。
つい、むきになってしまった。
んじゃ、そろそろ止めよう……か、と思ったけど、もうメリドの実がないや。
あんなにたくさんあった実を全部狩り尽くしてしまったのか。
誰のせい?
私?
絶対に違うはず。
まぁいいや、とりあえず出発しよう。
それにしてもどんだけの容量があんのよそれ。
どこかの青いロボットの猫が持ってるポケット的なやつ?
なにそれ、ほしい。
結局魔女っ娘が持っていたさっきのオレンジ色の袋には大量のメリドの実が入り、青色の色違いの袋にはたまっていた湧水が枯渇するほど入り込んでしまった。
マジでどういう原理なんだろうか。
まぁ、魔法やらがあるこの世界で原理もくそもないか。
この袋にもなにかしらの魔法の力が働いているんだろうしね。
そう考えないとやってられん。
ということで、大量の食料を確保した私たちはまた歩き出した。
思わぬ大量の食料確保で、心に余裕ができた私たちは足を速める。
と言っても魔女っ娘は足が遅いからいつもおんぶしてんだけどね。
地をかけ、時には空中をかけ抜け、一心不乱に突き進む。
途中で魔物と戦闘になってしまうこともあるけど、やっぱり倒せないほどのもんじゃない。
そうそう、私の忍気発動可能スロットルが50まで上がっていたよ。
継続時間は30分ってところかな。
50スロットルの力なら、車くらいは持ち上げられると思うよ。
垂直ジャンプなら10mを越せるね。
家とか小さな建物だったら軽く飛び越えられるわ。
なにそれ、ちょっとカッコいい。
だんだんと人間離れしてきた今日この頃、はたして私は人を名乗ってもいいのでしょうか……。
そういえばこの魔女っ娘、どうやらマイカっていう名前らしいよ。
いまだに言葉は通じていないんだけどね。
この子と旅を初めてからもう半年以上は立つのよね。
ずっと耳元で喋りかけてくるから、なんとな~く繰り返される単語からその言葉の予測はしている。
スマコもこの世界の語源はインストールされてなかったみたいだから、独自に魔女っ娘の言葉を解読している感じ。
なんだかんだで、魔女っ娘にも慣れてきたね。
一緒にいても別に気を使わなくなったし。
それに、最近は以外と魔女っ娘もやるのよ。
私が魔物と戦っている時なんか、じっくり観察しているなぁとは思っていたんだけど、どうも私の動きを真似している感じなのかな?
もともとこっちの世界の人と、力の使い方が違うから無駄でしょうよって思っていた私の度肝を抜いたのが、武器無しで魔法を発動した時かな。
この世界の人間は魔力……こっちでいうところの「魔動力」というものを武器に流し込んで魔法を発動していた。
私も忍気を自身にまとったり、七つ道具に流し込んだりして使っているから似たようなもんね。
でも、あのチャタテムシがやっていたみたいにさ、魔動力を体内で操作して、術式に流し込んで魔法を発動させるやり方を覚えたみたい。
厳密にいえば魔物の魔法の使い方とは少しだけ違うんだけどね。
私の背中で、なんか魔動力を動かす練習みたいなのやってんなぁって思ったら、ついに魔法を発動しやがったよ。
それはあるエリアでの出来事。
いつも通り、魔物に見つからないように食料を回収しようかなぁと忍び込んだんだけど、そこにいる魔物が結構強かったのよ。
チャタテムシよりも遥かに強いくらいかな。
一応、私もあれから修行を続けていたこともあってレベルはかなり上がってるし、大丈夫かなぁとか思っていたら結構苦戦したわけ。
相手はゴリラに羽根を生やしたような厳つい魔物だったんだけど、ムキムキの腕が6本もあって厄介だったのよ。
50スロットル状態でも、一発もらえば死亡のやつね。
んでだいぶ追い込まれてさ、ムキムキの腕に捕まっちゃってね。
やっべぇ、これ死んだかもって思った時に、魔女っ娘が覚醒した。
一応、変わり身の術を用意して身構えていたんだけど、ゴリラが私を攻撃する前に火の球がゴリラに直撃したわけ。
何事?!
って感じで見たら、魔女っ娘がプルプル涙目でゴリラを睨んでいた。
怒ったゴリラの咆哮で白目むいちゃったけど、その隙のおかげで私の糸はゴリラの首を刈り取った。
その時だけは、気絶している魔女っ娘の頭をそっと撫でてあげたよ。
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