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020 あらたなたび

 またしても私にしがみ付いて、離れなくなってしまった少女。


 魔物を倒した後に、なにやら興奮して喋っていたかと思ったら、またくっ付きムシになってしまった。


 子ども心はよくわからんのよ。

 なぜか昔から子どもにはバカにされるのよねぇ。


「やぁ~い、ブアイソ、ブアイソ、ペッタンコ~! 胸がまな板のブアイソ妖怪がきたぞぉお! にげろ~」


 なんて言われていたっけ。


 これでも一応は乙女の端くれ、ブアイソと呼ばれるのは仕方がないにしても、この小さい胸を気にしていなかったとは言い切れない。


 まぁ子どもの言うことだからと思ってほっといたんだけど、乙羽だけは何故か異常に怒っていたなぁ。


 その子が泣くまで怒鳴りつけていたのには本当に驚いたっけ。


 おっと、今は思い出に浸っている場合じゃなかった。

 このくっ付きムシをどうにかしないとね。


 でも……めんどくさい。


 もういいや。

 離れないなら、付いてくればいい。


 この子は家まで送ってもらうつもりなのかもしれないけど、連れてってやんない。


 私にはどうしても行くべきところがあるからね。


 それにさっき、「オムネペッタンコ」って言われたことを少し根に持ってないこともないこともない。


 まだ私5歳児だし、今から大きくなるんだから。


 ということで、私は歩き出した。

 背中に重たく……生暖かい荷物を背負ったままで。


「****?」

「……」


「*****」

「……」


「*****」


 いや、こいつどんだけ喋るの?

 私が離れないって安心したのか、さっきからずっとこんな感じ。


 ニコニコず~と一人でお喋りしている。


 多分、私がこの会話の内容をわかっていると思っているんだろうなぁ。


 残念ながら全くわかんないからね?


 こっちが気配を消しながら細心の注意を払って行動していることなんか、まるでわかっていないんだから……全く。


 改めてこの少女をよく見る。


 髪は青? じゃないね、緑が掛かった青? 碧色っていうのかな?

 とにかく透き通るような奇麗な髪色をしていて、それを肩まで伸ばしている。

 服装はハロウィンで仮想した魔女コスプレの女の子って感じ。


 この羽織っているローブなんか高そうだわ。


 前世にいたら間違いなくチヤホヤされるくらいに可愛いね。

 小さな顔もぷっくり健康的だし。

 頬っぺたツンツンしたい。


 目を合わせると、すんごいニコニコするところなんかちょっと乙羽を思い出してしまう。


 私はまた目線を逸らして走り出した。


 近くに魔物がいない天国エリアを見つけたからだ。


 そろそろ水と食料がなくて困っていたところだったから助かったよ。


 でも今後はこの子の分も含めて確保しておく必要があるのよねぇ。

 ちょっと対策を考えなきゃね……。


 そんなことを思いながらその天国エリアへと到着した。


 あ、メリドの木があるじゃ――ん!

 ヤバ――い!

 ちょっとテンション上がるわぁ!


 あのエリア以来、食べられなかったからなぁ。


 あのチャタテムシがいたエリアのウルルの実もマンゴーみたいで美味しかったけど、私的にはメリドの実が好きかな。


 ということで早速採取だぁ!


 ん?

 どうしたよ、魔女っ娘?


 メリドの実を見ながらワナワナしている。

 え、泣き出した?!

 そんなにお腹空いていたの?


 あ、食べ出した。


 な、泣くほど美味しいの?

 まぁこの私でもテンション上がっているから、気持ちはわからんでもないけど……。

 そこまでなの?


 まぁいいや、私も食べよ――っと。


 うん、うまうま。


 あっこに溜まっている水は……飲める水?


《湧水溜まり:自然と自噴する地下水が溜まったもの。人的有害性なし。普通の飲料水として使用可能》


 飲み水ゲット――!

 ラッキー。


 このポーチに入れてっと……ゴクゴクゴク、うん、普通!


 パクパクパクパク、ゴクゴクゴク。

 パクパクパクパクパクパク、ゴクゴクゴクゴク。

 パクパクパクパクパクパクパクパクパク、ゴクゴクゴクゴクゴク。


 う――ん、うまうまうま。


 ん?

 どうしたよ、魔女っ娘。

 そんなに目を見開いて。

 ただでさえ目がパチクリしてんだから、それ以上開くと目玉落っこちるよ。


 はぁ、それにしてもメリドの実は美味しいなぁ。

 うん、うまうま。


 あら、気が付いたら魔女っ娘寝ているわ。

 おなかもいっぱいになったことだし、私も少し寝ますかね。


 スマコ、見張りよろしくね。

 おやすみ。


《御意、よい夢を。サクヤ様》



 クンクンクン。

 なにやら美味しい匂いがする。


 おぉ、目の前にすごいご馳走があるじゃない。

 これ食べていいんだよね?

 いっただきまーす。


 パクパクパクパクパクパク。


「***?! ****?! *****!!!!」


 なんだよ、魔女っ娘。

 うるさいよ、少し黙ってよ。


「****!! ***********」


 んもう、アンタなんで泣いてんのよ。

 一緒に食べたらいいじゃん。


 ……あれ?

 いくら食べてもおなかいっぱいにならないね。

 なんで?



「*****?!」


 おはようございます。

 どうやらさっきのは夢だったようです。


 あ……私の口の中に魔女っ娘の指が入っている。

 なんだよコイツ、人の口の中に指を突っ込むなんてへんな趣味。


 あら?

 だいぶ涙目?


 もしかして私寝ぼけて襲ったとかそういうオチじゃないよね?

 そんなわけないじゃん、私に限ってねぇ……はっはっは。


 スマコ、何時間くらい寝てた?


《31時間ほどです》


 いつも思うけどさ、私寝すぎじゃない?

 なんで?


 私こんな寝る子じゃなかったと思うんだけど?


《授業中はいつも寝ておられましたが》


 ……さて、体力も忍気も全開になったところで、出発しますかね。


《……》

お読みいただきありがとうございます。

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