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018 みがわり

 しばらく静かな旅が続いている。


 あまりに安定しているから、いろいろと七つ道具の力や忍術を磨く修行をしながら旅を続けているんだけど、怖いくらいに順調なのよ。


 順調すぎて私……少しだけ調子乗ってま――す。


 ふははは、絶好調であ――る。


 ワタシハ、ムテキダ――。

 はっはっは――。


 いやぁ――順調すぎるぜマジで。

 だってここいらじゃ私無敵なんだも――ん。


 ちょっと前までビクビク怯えながら進んでいたのがアホみたいだ。

 気配を消して行動していたらその辺の魔物じゃ私には気が付かない。


 それに分身の術がマジで使える。

 ある程度の敵なら分身体で倒せちゃうしね。


 まぁ奇想天外な動きだから、反則技ではあるんだけどさ。


 でもここまで気配にバレないと、逆にいつバレるんだろうって興味が湧いちゃった。

 というわけで、なんかいかにも弱そうなダンゴムシの魔物に気配を消した状態で後ろからそっと近づいてみたわけよ。


 あいつ動きも遅い上に群れないから、検証するならもってこいだったわけ。


 んで、その検証結果は……うん、全くバレない。


 いきなり後ろからタッチしてみたら、ダンゴムシが飛び上がって丸まっちゃったのにはこっちがビビったけどね。


 ある意味、期待を裏切らない動きだったわ。


 でもそっからが結構面倒くさかった。


 こいつ丸まるとちょっとやそっとじゃ倒せないくらいに防御力が高いのよ。


 忍気を発動した状態の糸でも切れないし、花びら爆弾でもびくともしなかった。


 腹立ったから思いっきり蹴り飛ばしてみたら、壁に当たって跳ね返ってきて大惨事だった。


 ピンポン玉みたいに弾みまくるからマジで死ぬかと思ったよ。

 これで死んだらマヌケ過ぎて死に切れん。


 壁や天井も崩れかかって危険だったから、そのまま逃げたけどねぇ。


 まぁそんなこんなで旅は順調よ。


 やっぱり私には、音もなく気配もなく気が付かれる前に暗殺するのが合っているみたい。

 そうやって昔は修行していたしね。


 それよりも気になっているのが、ここに出てくる魔物が全部地球上の生物に由来しているものだということ。


 異世界っていうくらいだからさ、奇想天外なもんが出てきても良さそうだけどね。


 まるでこの世界が地球をモチーフに作られているような感覚。

 いや、あるいはその逆なのか。


 どちらにしてもこの世界と地球はどこか通じている部分が多いと思う。


 確かに聞いたこともないような虫や動物の名前が多かったんだけど、それはどれも地球上に存在している生物だったんだよね。


 よくよく考えれば、あのクズ神がこの世界を作ったんだよね。

 んで、乙羽を狙っているという向こう側の邪神とやらが地球を作った?


 まぁ神同士のいざこざなんかにこっちを巻き込まないでほしいよ、マジで。


 とりあえず、地球とこの世界の関連性は置いといていいか。


 今は早くクズ神が示したこの場所に向かう方が先だね。


 それにしても遠過ぎるでしょ……。

 この調子なら本当に3年はかかりそうだ。


 これでもいろいろな面で成長しているからさ、その分ペースを速めているんだけどね?


 それすらもあのクズ神が見越しているようでメッチャ腹立つわ。

 今更だけど、腹が立っていることがわかるんだなぁ私。


 この胸の奥で沸々と湧き上がるような不快感。

 これは間違いなく怒りの感情なんだと思う。


 アイツのおかげで感情を理解しているのも腹立つ。


 アイツのこと本当に嫌いなんだろうな私って。

 それがわかるとなぜか面白い。


 ふふふ、自分のことながらわけわかんないや。



――それから約1年もの月日が過ぎたある日、人間と遭遇した。


 いやぁ~ビックリしたわぁ。


 あるエリアを通りかかった時なんだけど、その中で魔物とは違う特殊な気配を感知したのよ。


 だから気配を消したままそのエリアの中に入ってみたんだけど、そこにはたくさんの大人と少数の子どもの姿があったのよ。


 その人らが、尻尾が燃えているサルみたいな姿の魔物に集団で襲われていたわけ。


 私が到着した時には、もうひどい状態だった。


 子どもたちとおかしな格好をした大人たちは全員殺され、鎧を付けた強そうな見た目の大人たちが一人の少女を守るように固まって奮闘していた。


 私はその様子を、気配を消したまま木の枝の陰から見ていた。

 正確には私の分身体が、だけどね。


 この世界の人間はなんというか……まぁ普通だったわ。

 まんま日本人の姿ね。


 もっと別世界特有のさ、奇想天外な見た目をひそかに期待していたのに、見事に裏切られたわ。


 でも、この世界の人間の戦い方はすごいね。

 なにがすごいってやっぱり魔法を上手く使ってんのよ。


 人間側にもHPとMPのゲージが見えるっていうのには正直驚いたけど。


 魔物と同じように、体の中にある魔力をそれぞれが持っている武器のようなものに流し込むと、強力な魔法に変換されて発動される仕組みになっているみたい。


 その魔法は武器によってさまざまなんだけどね。


 基本、彼らが持っている武器は剣と盾と弓矢。

 それらの武器に魔法を付与して発動させているイメージかな。


 その中には背中の羽根みたいな機械を付けて、空を飛んでいる人もいたりする。

 なにあれ、ちょっとカッコいい。


 それにしても、なんかあの少女を守っている大人たちの動きがさっきから変なのよね……。


 あの少女はおそらく私と同じくらいの歳かな。

 まぁ、この数の魔物相手じゃ残念だけど全滅もあり得るね。


 ここで私がしゃしゃり出る理由もないし、運がなかったと思って諦めることだね。


 それよりも先を急ごう。


 私はそのまま気配もなく消えようかと思ったら、大人たちは突然少女を魔物の群れの方へと突き飛ばし、自分たちはその隙に逃亡をはかった。


 え、えぇぇ……ないわ――。

お読みいただきありがとうございます。

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