157 しんじるもの
「さて、アズサさんとハズキさんのオ初体験を赤裸々に語っていただきましたので、ワタクチはまた一つ、オ賢くなりました」
「もう殺してくれ……」
「二人とも元気だそうよ! 一度の失敗で逃げちゃダメだよ! 成功の先には無限の宇宙が広がっているんだから!」
「今の二人には、火に油だと思うヤツがここに約一名。ちなみに無限の宇宙をすでに体験しているヤツがここに約一……うぐっ」
「ミサキさんたちの話も気になるところですが、ホノカさんそろそろご準備を」
「了解だ! ゆくぞ、ガルガⅡ! 変態、ドリルモード!」
私らは今、ホノカの黒いロボットに乗っている。
この中で一際大きなこのロボットが、腕の先端をドリルの形状に改造し、穴を掘っていく役目だ。
「みなさんはオ武装をして、オ外へ」
ホノカをロボット内に一人残し、それ以外の全員は外に出る。
「ハトさん、お願いしま~す!」
今度はミサキの頭にのっていたハトさんが巨大化し、その背中にみんなが乗る。
「おまえの力を見せてみろ! ドリルインパクトォオオオオ!」
ホノカのロボットは、自身もろとも、高速回転を始めて、巨大なドリルへと化した。
そして、この超巨大な隕石に、いとも簡単に穴を空けてしまったのだ。
私たちが乗った、ミサキのハトさんもその後を追う。
まるで、大きな暗い奈落の底へ落下しているような感覚だ。
おそらくこのハトさんの必死な羽の羽ばたきは、意味を成していないであろう、
このハトさん……飛べないからね。
がんばれ、ハトさん。
とんでもない力と回転力で穴を掘り進めていくホノカ。
しかし、その地面は掘り進めるだけ、どんどん固くなっていく。
「ワタクチの計算では、このあたりから地面硬化強度がかなりオ高くなっているスポットがございます。そこを刺激すると、表面全体の地盤が揺れて内部からあふれ出し、噴出します。つまりはGスポ……いえ、Gポイントです!」
どうやらそのGポイントとやらにホノカのロボットは突入したらしく、先ほどとは違っ
て進行の勢いが少しずつ落ちていく。
「ここはかなり固いぞ! このまま進めていいのかと質問するやつがここに約一名」
「このGポイントを抜けたら、表面の柔らかい部分だけでなく、内部の非常に強固となっている部分も多少は脆くなります。まずはここを突破しなければオ話になりません」
「心得た! ガルガⅡの回転は落ちていないけど、打撃が足りない! ミサキ、頼む!」
「ハトさん! ホノカのお尻を思いっきりシバいてあげて!」
ミサキの指示通り、アヒルさんは自身の羽で思いっきりホノカのロボットのお尻をシバいた。
思いのほかこの打撃が有効なようで、勢いがなくなっていた進行が再び動き出す。
だけど、シバかれる度に変な声を上げているホノカは一体どうしたのだろうか。
シバく度に、変な息を上げているミサキも一体どうしたのだろう。
私には不可解なことだ。
「おっと、こちらのカップルはアズサさんたちよりもかなり進んだオプレイをされているようで……オっほっほっほ、ごちそうさまです。あ、Gポイントを抜けます」
オハメがそう言ったその瞬間、一際大きな揺れを感じるとともに何かが崩れるような音が響く。
「戦艦からのスキャンにより、全体層の揺れを観測。第二難関、来ます」
オハメの言う通り、私たちの背後には小さな隕石が迫っている。
小さいといっても、もちろん人間サイズの私たちからすると、それもかなり巨大なわけで、引力に引かれた無数の隕石たちが一斉に降ってきた。
これも一応は計算済み。
そのためにこの子たちがいる。
「やっとウチらの出番やな、アズサ」
「あぁ……さっきのうっぷんを思いっきり晴らしてやるぜ」
「派手にいくでぇ!」
「バカ野郎、クールにいくんだよ!」
性格に反して、水が流れるような華憐な動きで、隕石を切り刻んでいくアズサ。
煮えたぎるマグマの噴火のように、豪快な拳と爆炎で粉砕していくハズキ。
二人は迫りくる無数の隕石たちを次々に粉砕していく。
いくら迫りくる隕石が大きくても、表面層のモロくなっている石の塊だ。
今のこの子らならこの程度のこと、特に問題はない。
しかし、いくらなんでも数が多すぎる。
今までホノカが粉砕してきたものに加え、表面層のものがこの穴になだれ込んできているようなものだ。
表側では、戦艦の砲撃で極力表面層を粉砕しているけど、とても間に合わない。
ジリ貧にも感じるけど、これから先に進むためには仕方のないこと。
今は、この子らの耐久力を信じるしかない。
「ワタクチの計算よりも、内部層の硬化強度がオ高いです。このままでは中心部に届く前に、ガルガⅡが停止してしまいます」
「もうガルガⅡのドリルが限界値を超えていると慌てるヤツがここに約一名」
「もうハトさんの羽が抜けちゃって力が出ないよ~」
ハトさんの羽はもげて、もはやガルガⅡのお尻をシバけない。
それにより、ガルガⅡは急激な減速を始める。
「クソが! こっちも気を抜くと一気に生き埋めにされんぞ!」
「踏ん張るんや、アズサ! ウチらがへばったらみんなが死んでまう!」
ホノカとミサキの進行は弱まり、アズサとハズキも少しずつ後退している。
「あとオ少しなのですが……これ以上はもう……」
オハメの言う通り、これは厳しい状況だ。
もともとこの子らの眷属モードとやらの継続時間は、ここまで長いわけではなかった。
クズ神との闘いの時には、数分間だけの諸刃の剣だったのに、この四人はまた努力を重ねていた。
私たちがアクシスの過去を知るために行動していたり、妹っ子たちがこの日のためにたくさんの作戦会議やシミュレーションを重ねたりしていたその間に、この四人は自分たちだけでたくさんの修行をしていたのだ。
この力の継続時間を延ばし、それをさらに生かして役に立つために。
そんな彼女たちだからこそ、妹っ子はこの作戦を任せた。
「まだよ! アンタらならまだやれるでしょ?! しっかりやりなさい!」
全員のイヤリングを通して、妹っ子の声が響き渡った。




