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155 それでもすすむ

 世界のリセット。


 世界は均衡によって成り立っている。

 それは善が多すぎても、悪が多すぎてもいけない。


 善のスマコと、悪の『対となる存在』。


 その両者の戦いは終わりを迎えることがないのだ。


 例え、スマコが本来の力を失ったとしても、その『対となる存在』には関係のないことであり、スマコと同じように力が弱まることはなかった。


 しかし、スマコを含めた神光ツキシス、神機マネシス、そして神邪アクシスの四人で力を合わせ、それに立ち向かっていたことで、なんとか均衡は保たれていた。


 そこに、闇へと落ちてしまったモロゴンという男の暗躍が始まり、先にマネシスが殺されて体を奪われ、その体でスマコとツキシスが殺された。


 そして、私たちが産まれ、今に至るというわけだ。


「終わらない戦い……」

「悲しみの連鎖を生む、世界のリセット……」

「ねぇ、本当にどうしようもないの?」

「今のところ、ない」

「だって、その闇落ちしたっていうあのモロゴンって人を止めたとしても、そこで終わりじゃないんでしょ?」

「そう」

「それじゃあ、負の連鎖が続くじゃない!」

「少なくともモロゴンについては、見てきた通り全部アタシのせい。できることならアタシが全て終わらせてあげないといけなかった」


 アクシスもまた、自分で責任を感じているのだろう。


「アタシが死んでそれで終わりなら喜んでこの身を差し出すわ。でも、それでは終わらない。ウラシスたちがいなくなってから、世界は悪へと傾き続けている。このままでは、世界が終わる」


 アクシスの言葉が重く圧し掛かってくる。


 おそらくアクシスからすると、スマコたちから力を受け継いだ私たちが唯一の希望なのだろう。


 だからこそ、ここまで私たちを守ってきてくれた。


 その恩には全力で応えたいけれど、私はスマコじゃない。

 そんな大それた力は残念ながら持っていない。


 私はどうしたらいい……スマコ。


 返るはずのない質問を、投げかけずにはいられなかった。



 それからしばらくの間、私たち三人は静かに過ごした。

 特に何をするわけでもなく、部屋の中にいた。


 私は、ほとんどベッドの上で寝て過ごしている。

 各々が考えをまとめているような感じだ。


 正直、このまま考えていても結論は出ないと思っている。

 それよりもまずは目先のモロゴン……彼を止めてあげることが大事だ。


 悲劇の被害者である彼のため……そして、アクシスのためにも。


 そう思い立って、ベッドからピョンと飛び起きると、ヒョイっと乙羽に抱きかかえられた。


「私、モロゴンとアクシスを救いたい!」


 どうやら乙羽も同じ気持ちのようだ。

 そして、マイカも。


「アタシは、マネシスの想いもみんなの想いも、そしてみんなが生きてきた証を大事にしたい。それは、今を生きるアタシたちにしかできないことだから!」


 二人は笑顔で手を差し伸べる。


(アタシ)たちなら、できるよね!」

「……うん……この三人なら」


 私は二人の手を取り、そしてハッキリとそう答えた。


 そして三人で部屋を出ると、なにやら四人が騒いでいるのが見えた。


「お、やっと出てきたな」

「ほな、聞かせてもらおうかいな」

「えっと……なにを?」


 乙羽と同じで、私とマイカも頭にハテナが浮かんでいる。


「おまえら仮にもアタシらの隊長だろうが! ちゃんと意思表明しやがれ」


 ドスの効いたアズサの言葉に、背筋がピンと伸びた気分だ。


「え、えっと……私は……あの……その」

「ハッキリせんかい!」

「ヒィ?! えっと……私は、全部を助けたい! アクシスも、あのモロゴンって人も、地球も、みんなも全部を助けたいの!」

「任せろ、バカ隊長が!」

「バ、バカぁ?!」

「モロゴンっちゅうヤツのことはよう知らへんけど、おまえがそう言うならウチらはそれをやるだけや!」


 乙羽に向かっていた視線が、今度はマイカへと移る。


「ふ、二人とも! ア、アタシに、だま、だまって……つ、つ、ついて、こい!」

「あははははは! ワタシらの隊長、オモシロイ……あはははは!」

「ププッ……あまり笑ってやるな。本人はこれでも一生懸命なんだと察してあげるヤツがここに約一名」

「が、頑張ったのに! アタシ、頑張ったのに!」


 顔を真っ赤にしているマイカは、とても恥ずかしそうだ。

 みんな仲が良くて、とてもいい感じだね。


 ん?

 みんな、どうして私を見る?

 まさか私にまで、あんな恥ずかしいことを言えと?


 私にそんなことを期待しても無駄だと、そろそろ気付いて……え?

 後ろ?


 ひぃいいいいい?!

 ビッッックリした!


 みんなが指をさすから後ろを振り向くと、恐ろしい顔で私を見下ろすネコがいた。

 気配を悟れずに、背後を取られた経験が少ないから、心臓が飛び出るかと思った。


「サクヤ、ネコはんにちゃんと謝った方がええで?」

「そうだよ、サクヤちゃん! サクヤちゃんが部屋に引きこもっている間なんて、子どもみたいにメソメソ泣いてて、かわいかった……じゃなくて、かわいそうだったんだよ?! 

ワタシがおかしで……うぎゃん?!」


 ミサキが雷に打たれて倒れた。


 余計なことは言うな、と無音の圧力で他の三人も睨みつける。

 あまりの迫力に口をふさぐ三人。


「……えっと……ごめん?」


 なんとかしてくれと、みんなからの必死な圧を感じたので、恐る恐る声を出した。


「……ふん。今度ワタシを追い出したら絶対に許さないから」


 ネコはそういうと、そそくさと私の影の中へ入り込んだ。


 どうやら許されたらしい?

 いつからこの子は、こんなヤンデレな性格になってしまったのだろうか。


 さて、いろいろとあり過ぎた数日間だったけど、みんなの方向性は決まった。

 そして、私らの船は目的の位置へと到着した。

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