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145 みえないたたかい

 船を拘束していた巨大なクズ神の触手を切り落とすことに成功した。


 それにより、自由になった船が一気に加速してその場を離れる。


 私は事前に船へ繋げておいた糸と、さっき乙羽の腰に回しておいた糸を引き寄せることで、船と共にその場を離れることに成功したのだ。


「ブアイソ、無事なんでしょうね?! ブアイソ! 早く返事しなさい!」

「桜夜に返事を求めるのはさすがに無理だと思うよ、メイナちゃん。大丈夫、ちゃんと無事だから」

「そ、そう……なら早く船の中に入りなさい! もうすぐこの本拠地全てが爆発してしまうわ! その勢いを利用して一気に離るから、外にいたら爆発に湧き込まれるわよ!」

「……それは無理かなぁ」

「ど、どうして?! なにがあったの?!」

「あのね、ものすご~く怖い顔をしたクズ神が後ろから迫ってきてるんだよ」

「なんですって?!」


 さてさて、さすがに困ったな。


 あそこまで怒り狂ったクズ神に、またこの船が捕まれば今度こそ離してはくれなさそうだ。


 あの顔、怖いわぁ……。


 そうなると、それこそ爆発に巻き込まれて全員が終わりだから私たちが船の中に入るわけにはいかない。


 だけど、さすがの私たちでもその爆発に巻き込まれれば普通に死ねる。


 乙羽も力を使い果たしていて戦闘フォームが解けているし、私も訳あってほとんど力を残していない。


 乙羽と糸に吊られた状態のまま顔を見合わせる。


 あれ……これ詰んでね?


「さ、桜夜! どどどうしよ……もうクズ神がそこまで」

「……つんだ」

「やっぱり詰んだ?! 私たち詰んだ?!」

「まったく、世話のかかる隊長たちね」


 私の糸を電線代わりにして高速で移動してきたのはネコだ。


「ネコちゃん!」

「誰がネコだ」


 いつものやりとりをしながらも、ネコはクールな瞳でクズ神を見据える。


「神成眷属の名の下に、雷豪砲神(らいごうほうじん)


 ネコは両手の間に物騒な雷豪の塊を発動させたと思ったら、それをクズ神に向けて一直線にぶつけた。


 その威力は凄まじく、クズ神の胴体を半分ほど消滅させてしまったほどだ。


 しかし、すぐに元の状態に戻ろうとしており、たいしたダメージを与えたわけではなさそうだ。


 それでも、クズ神の動きがしばらくピタリと止まったことで、時間をかせぐことには成功した。


「ふぅ、スッキリしたわ。さっ、今のうちに船まで戻るわよ」

「あ、あの……ネコちゃん? 私たちより強くなってない?!」

「ふふっ、気のせいよ」


 正直私も開いた口が塞がらないわ。

 声を大にして言いたい、ないわぁ。


「アンタ……言ってもないし、口も開いてないでしょうが」


 いや、そうだけども!


 そんな驚く私たちを両脇に抱えたネコは、糸を伝って船まで戻ると、そのまま私の影の中へと入り込んでしまった。


「艦長、私と桜夜は船に入ったよ!」

「よし、艦隊後方部へサテライト障壁フル展開! もう少し先へ……ハルカさん、舵そのままでフルスロットルです!」

「了解! ぶっ飛ばすわよ! フルスロットル!」

「各自ショックに備えて! 爆発するわ!」


 お母さんの声を最後に全方が眩く光り、衝撃波により船が大きく揺れた。


 その凄まじい衝撃により上下左右の感覚はなくなる。


 艦内の通路にいた私たちは、柱に糸を巻きつけて自分たちの体を固定して難を逃れていた。


 しばらくして艦内も落ち着きを取り戻したので、みんながいる艦長室へと戻り全員の安否を確認すると、すぐに周りの状況を確認した。


 船の全方を映し出すモニターを確認すると、月(本拠地)があった場所にはもう何も残ってはいなかった。


「あぁ……本拠地が」

「艦長、悲観するよりもまずは地球を救うことが先よ!」

「ふぅ、シズクさん、地球への被害予測は」

「マギ……はいないので私のおおよその計算ですが、約70時間後にさっきの衝撃波が地球に到達すると思われます」

「被害予測は?」

「地球の約60%が焼失すると予測」

「時間も解決策もない……か。一体どうしたら」


『正確には72時間24分56秒後に地球の67.3%を焼き尽くしちゃいますね。わぁ、怖い怖い。まさに地球の崩壊……世紀末のはじまり……うふふ』


「……え? 誰?!」


 突然聞こえてきた声と、前方の画面にデカデカと映し出された花柄パンツに全員が驚く。


『ワタクチの華麗なおパンツに目が釘付けなのは仕方ありませんが、まずはこの問題をどうにかしましょう。ワタクチの親愛なる桜夜様、準備はよろしいでしょうか?』


 急に話題をフルのは本当にやめてほしい……みんなに注目されるじゃん。

 ここにいる全員が()()()のことと、私らの()()を知らないんだからさ。


 だけどまぁアンタの言う通り、今は一刻を争う事態だしね。


「……うん」

『ホワァ?! は、はじめてワタクチに生のお声を……危うく昇天するところでした。これでしばらくはワタクチ、夜のオカズに困ることはございません。ごちそうさまです。ありがとうございます』

「……早く」

『あ、はい。こちらで計算した観測データを電磁パルスに乗せてサクヤ様に送ります。ワタクチの愛を受け取って下さいまし!』


 愛はともかく、データは助かる。


 だいたい私の読み通りか……ずっと下準備を進めておいて良かった。


 いまこそ、その全てを解き放つ時だ。

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