表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/208

144 いっぽんのひかり

 二人が眷属の力を発動させると、それぞれに違った光の力が宿る。


 ハズキには、燃え盛る炎のような太陽の光。


 アズサには、水面に映る空のように透き通るような青い光。


 その二つの光はまるで、本人たちの人柄を表すような、みんなを照らす光だった。


「ほな、いくでアズサ!」

「あぁ、ハズキ!」


 そこからの二人は凄かった。


 大量に迫る黒い化け物はもちろん、さっきはビクともしなかったクズ神の触手でさえも簡単に破壊しながら進んでいる。


 その勢いは止まることなく、猛烈なスピードで突き進む。


 ただし、当然ながらこんなにも無茶な力を長く扱えるわけではなかった。

 二人はまだ眷属としての力を授かって日も浅いのだ。


「ぐぉ?! いつっ……体がバラバラになりそうだな」

「もう少しやったんやけどなぁ。ちと届かへんかったか」

「二人とも、無茶しすぎだよ! 眷属モードはまだ一分しか体が持たないってアクシスに言われていたのに!」

「オトハすまねぇ。力不足な眷属を許せ」

「ホンマならあっこまで連れていく予定やってんけどなぁ」

「二人とも……」


 さすがにこれは私が……と思ったけど、必要なかったみたいね。


 止まっていた三人に向けて敵の大群が押し掛けようとしていたところに、後を追って来た二人が追いついた。


「ハッハッハ! 真打登場! 眷属モード状態の我を止める術はなし! くらえ、ガトリングガン!」

「ハトさん、ぶっ飛ばしちゃえ!」


 ホノカは黒いロボットを巧みに操り、腕に持っていたガトリング砲で砲撃する。


 ミサキを背中に乗せている巨大なハトさんは、その立派な翼を大きく広げ、猛烈なスピードで走りながら大口を開け、そこからビームを発射する。


 いろいろとツッコミどころが多くて困るけれど、おかげでまた道が出来た。


「ホノカちゃん、ミサキちゃん!」

「前に進んでくれ、一番隊隊長!」

「ハトさん! アズサとハズキをお尻の中に入れてあげて!」

「できれば背中の上で頼むわ。ハトのケツの穴には入りとうない」

「オトハ早く行け! 二人の眷属モードも長くは持たねぇぞ」

「う、うん!」


 そして乙羽はホノカとミサキが作った道を一直線に突き進み、やっとクズ神のもとへとたどり着いた。


「まったく、どこまでもイライラさせるガキどもよの。まさかおまえたちヒヨッコの眷属になって力を付けていようとは……あれでは適当に作った人形ではさすがに太刀打ちできまいか」

「おあいにくさまだよ。こっちはあの隕石みたいなやつと一緒にあなたも倒すつもりで準備してきたんだから! まだ力を取り戻していないあなたがこの船を抑えたまま戦うつもりなら、今の私でもあなたを倒せるよ!」

「隕石みたいなヤツか……クックック。まぁ良い。どうやら優位に立ったつもりなのだろうが、適当な人形がダメならそれなりの人形を作れば良いだけだ。それに向こうで戦っているあの二人の眷属モードとやらも、もうじき切れそうだしの」


 乙羽の傍にいる分身体から聞こえてくる乙羽とクズ神の会話。


 正直状況は良くない。


 私(本体)は下準備をしつつ、今必死に戦っているこの子らのフォローもしないといけないから、今ここを離るわけにもいかない。


 さて、残りの時間もごくわずか。

 全ては乙羽次第だね。

 信じているよ、乙羽。 


「おい、光のヒヨッコよ。妾がこのまま動かなければ勝てると言っておったか?」

「そうだよ! そのためにここまで来たんだから!」

「クックック、やってるがいい」


 残念だけど、今の私たちが束になってもコイツを消滅させることなんてできはしない。


 そうなると最優先はこの船を捕まえている触手を切り落として船を脱出させること。


 だけど、あの太くて固い触手を切断するのも容易ではない。


 おそらくこれほど太い触手を切断できるのは乙羽だけだろう。


 だからこそ妹っ子はこの配陣を選んで指示を出した。


「私は桜夜みたいに器用なことはできないし、マイカみたいに強力な重装備を持っているわけでもない。でも、みんなを導くような一本の光に私はなりたい!」

「クックック、いいねぇ! その希望に満ち溢れた顔が、どうやって絶望に落ちていくのかを是非妾に見せてくれ」


 クズ神はさらに背中から触手を手のように生やし、乙羽に攻撃を開始した。


「絶望ならとっくの昔に落ちて這い上がってきたんだよ! 今の私は1人じゃないから!」


 そう、乙羽には私たちが付いている。


 乙羽に向けられた触手の攻撃は、私の分身体が糸で縛り上げる。

 こちらに向けられていない攻撃なら、今の分身体でもかろうじて防ぐことができる。


 今渾身の力を光の剣に溜めている最中の乙羽の邪魔はさせない。


「チッ、いいかげんおまえにはウンザリだよ。本当ならその人形ではなくおまえ本体を直接なぶり殺したいところだがの」


 さすがにこちらに攻撃を向けられると限界がある。

 分身がそろそろ原型を留めておくことも出来ない状態だ。


 ということで、後は頼んだよ。


「……乙羽」


「ありがとう桜夜! 光の力を受け継ぎし我は光の神子、乙姫! 悪しきものを切り裂く一本の光なり! うりゃあああぁぁぁ!」


 乙羽が手に持つ巨大になった一つの剣。

 それを思いっきり振り下ろす。


「なんだそれは?!」


 いまさら危機を察したクズ神が、私への攻撃をやめて乙羽の攻撃に耐えようとさらに触手を伸ばす。


 しかし時はすでに遅し、何重にも重なり一本の太くて固い触手になっていた触手が乙羽の巨大な光の剣で斬られていく。


「いっけぇぇ!」

「くそがぁぁ!」


 乙羽の剣が、船を抑えている触手を半分以上切断したところで、クズ神は他に回していた全ての力を乙羽の剣を止めるためだけに使いはじめた。


 それにより乙羽の剣と勢いが弱まる。


「もう! あと少しなのに!」

「この小娘が! この剣を止めた時がおまえの最後だ!」


 残念だけど、この剣が止まることはないよ。

 だって、私がいるからね。


「桜夜!」

「くそ! 本物か!」


 そりゃ、足止めを食らっていた大量の敵がいなくなれば私は来るわよ……ここに乙羽がいるんだから!


 それに、眷属モードが切れて動けないあの四人も今は脅威がないしね。

 今頃はマイカとネコが回収して船に乗り込んでいるところ。


「ということで……これ……はなせ!」


 私はクズ神の触手と拮抗している乙羽の剣を、勢いよく上から蹴り降ろした。


 その衝撃により乙羽の剣の勢いが爆発的に加速し、船を掴んでいたクズ神の巨大な触手を一刀両断にすることができたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ