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141 おもかじいっぱい

またまたスマホ投稿

誤字脱字あったらごめんなさい

 私たちは無事に月の本拠地へと到着した。


 地球の簡易基地は、地下にこの巨大戦艦がまるまる埋まっていたようなものだったけれど、この本拠地は月の内部がまるまる基地になっているから本当に広い。


 この戦艦が無事にメインシステムへドッキングすると、お母さんたちがシステムを立ち上げていく。


『おかえりなさいませ、ご主人様』

「ただいま、マギ。相変わらずその服がお似合いよ」

『恐れ入ります。ハルカ様もご機嫌麗しゅうございます』

「久しぶりね、マギ。また会えてうれしいわ」


 突如として前面の大きなモニターに現れたウサギ耳を付けたメイド服姿の少女。


 その姿で、メイドカフェ入店時の決まり文句を発したのはマギの本体だ。


 ただ、私の知っているマギよりもかなり流暢な口調でしゃべっている。


「マギ、今アナタの子機にある情報全てをそっちに送ったわ」

『承りました。全システム開放と並行し、システム権限をそちらの船へ移管、直ちに必要な物資の準備を始めます』

「えぇ、よろしく。みんな、しばらくはコードFよ」

「了解、各自対応をよろしくお願いします」

「了解、艦長!」


 会話が終わると、お母さんたちの前にあるモニター画面が著しく切り替わりながらそれを真剣な顔で操作していく。


 親たちや妹っ子はみんな忙しそうにバタバタしているけれど、アクシスや私たちはめっちゃ暇だった。


『暇そうにアホ面を晒しているそこのみなさん。こんにちは、こんばんは、おはようございま―す。どうも初めまして、本体のマギです』

「うぉ?! な、なんだ?!」

「いきなり画面の中の姉ちゃんがしゃべりかけてきよったぞ! しかも超絶饒舌な毒舌で!」

『超絶饒舌な毒舌……なかなか良い反応をされる方ですね。必要とあらばこのスカートをたくし上げて女の花園でもお見せいたしましょうか? チラ、チラ。あ、もちろん有料ですよ? そこのコイン入れに100円を入れてもらえればお手軽にR指定モードへと移行いたします。しかし、ワタクチは親愛なるサクヤ様のように優雅でおしとやかなで上品な人物像を模範として作られております。ですので、なるべくならR指定モードはお控えいただけると助かりま―す』

「パンツ代安いな! しかもお金入れてへんのに、スカートチラチラさすなや! R指定モードはどこいったやねん! ていうか、それ誰得なんや! 優雅でおしとやかで上品な人物像の設定はどこに置き忘れてきたんや?! ミサキも100円入れようとすな!」

『……』

「あ、コイツいまサクヤの存在に気が付いたな」

「いまさらサクヤの真似して無口になっても遅いねん! 似てんのはその無表情だけや! はぁ、はぁ、ツッコミしんど」

「ハズキもヒートアップしてんなぁ」


 私を見て冷や汗をかくくらいなら、私を模範というその設定は是非とも修正するべきだね。


 しかもサラッとハズキに私の顔がディスられたのは気のせいじゃないよね? 


 それにしても……マギの本体は私も初めて会うけど、こうも普通に会話ができるものなんだね。


 ちょっと引くわぁ。


 でも、このマギがこの本拠地すべてを管理しているメインシステムでもあり要でもあるのよね。


 今までお母さんが作り上げたものの中で、一番の最高傑作だと自分で自慢していたくらいだし。


 だからこそ……悔しいだろうなぁ。


『全システム開放完了。この時を待っていました……システムダウン』


 マギがそういった瞬間に、この船すべてのシステムが停止して真っ暗になる。


「な、なんや?! 急に何が起こったんや?!」

「真っ暗でなんも見えねぇ!」

「コワイヨコワイヨコワイヨコワイヨ」

「お、落ち着けミサキ! 自分がここにいるのだ! 大丈夫なのだ!」

「そうか、ミサキは暗い場所がダメだったな」

「大丈夫やミサキ。みんなここにおる」


『サテライトキャノン、標準ロック。エネルギー充電まで残り80%』


 全面のモニターだけに光が灯り、そこに現れたマギがそう告げる。


「これは一体なんのつもり? マギ」

『ご主人様、誠に申し訳ございませんが、ここで全員仲良く死んでいただきます』

「あなた……やっぱり侵されていたのね」


「おろ? 随分と貧弱になったな……アクシスよ」


 聞き覚えのあるこの声は……クズ神だ。


 まさかここに現れるなんて。


 アクシスの背後から首元に鋭い爪を突き付けているのが見えた。


「アナタがここにいたなんてね。さすがに考えていなかったわ」

「アレと一緒に向かって来ているとでも思っていたのだろう? クックック、だからおまえたちはここに来た。全てはワシの思惑通りだとも知らずにな」

「ここはマギが守っていたはずだけど?」

「見ての通り、コイツのすべてを侵してやったよ。まったく、ただのコンピューターに手こずらされたものだけどね。ただ、()()()の力は全てを侵食する」

「あの方とやらの正体が気になるところだけど、教えてくれるのかしら? さっきから息が高調していて気持ち悪いんだけど」

「あぁ……あの方は全知全能の主君であられるのよ……あぁ、尊い」

「ちょっと、爪が刺さって痛いじゃない。それにアンタの生暖かい鼻息も当たってるし、一体なんの拷問よ!」

「あのお方が目指す世界におまえの存在は邪魔なのだよ、死ね」


 そういうと、クズ神は自らの手を思いっきりアクシスの体に貫通させた。


 アクシスの体をくじ刺しのまま天へ掲げるように持ち上げる。


「なっ?! ロリっ子?! クソ、ハズキいくゾ!」

「嘘やろ?! やられたんか?! おんどれが、許さへんぞ」


 ドスの効いた声で怒鳴りながら向かっていこうとする二人を、乙羽とマイカが静かに止める。


 あそこまで怒ってくれるなんて意外と好かれてんのね、アンタ。


「ウフフ、うらやましい? アタシはこうやって桜姫にお姫様抱っこされている方が好きだよ」


 胸に顔を押し当てるな。

 どさくさに紛れてへんなところを触るな。

 このまま突き落とすよ?


「チッ! またおまえかぁあああ!」


 クズ神がアクシスと思っていたものを乱暴に振り払って腕を抜き取ると、その瞬間にそれは桜の花びらと化す。


「桜姫風に言うとね、分身の……術」


 私の真似なんだろうか、顔を無表情にしてポーズを取り、ボソボソとそう言うアクシス。


 なんだかとても腹が立つところだけど、今はそれどころじゃない。


 もっと苛立っている怖い顔のクズ神が背中から触手を生やして攻撃しようとしている。


 私はすぐに妹っ子へ相槌を打った。


「総員、全速前進!」


 妹っ子の掛け声でこの巨大戦艦が無理やりな急速前進を行った。


 その反動でクズ神がよろける。


「緊急脱出用ハッチを開放! ジェットエンジン、フルバースト! 主舵いっぱい!」


 妹っ子の掛け声で船は急速な旋回を行い、さらにクズ神へ強力なGをかける。


 私はアクシスを空中へ放り投げると、そのまま空中をかけながら妹っ子が開いた外に通じる緊急脱出用ハッチからクズ神を蹴り飛ばした。

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