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132 ぜんりょくぜんかい

 朝食を済ませた私たちは、地下の訓練場にやってきた。

 この訓練場は特殊な造りになっており、ある程度どんな衝撃にも耐えられる構造になっている。

 私もよく小さい時はここでお母さんや()()()()に訓練を付けてもらっていた。


 お父さん……と思っていた人物が、実はお母さんが作ったアンドロイドだったとは思わなかったけどね。


「うぉおおおお! 俺の愛しの桜夜~~~~! 会いたかったグヘッ?!」


 忍者のごとく颯爽と迫りくるお父さんを、私は華麗に躱した。

 その勢いのまま壁に激突するお父さん。


「アハハ……相変わらず豪快だね、桜夜のお父さん」

「お、お父さん?! あれがサクのお父さんなの?! 中身、ロボットだよね?!」

「私も今までは気が付かなかったよ。今衝撃の事実に驚いているところ……多分、桜夜もだよね?」

「……うん」


「桜夜が動いている……俺の桜夜が……生きている。ボカァ、幸せだ……じゃ! さらばだ!」

「泣いてる?! 拝んでる?! 消えた?! ちょっと、アタシの頭じゃ処理が追い付かないよ!」

「大丈夫だよ、マイカ。私もだから」


 大丈夫だよ、二人とも。私もだから。


 あの人のことは昔からよくわからない。

 滅多に姿を見せなかったけど、会うといつもあんな感じだしね。


「はぁ、また勝手に持ち場を離れて……困ったものね」

「チッ、相変わらず逃げ足だけは早いわね。仕留め損ねたわ」

「ハルカ……その物騒な拳銃はしまっときなさい。シズクもいいかげんにアレの電源は落としたらどうなの?」

「そうしたくとも、その前に逃げられてしまうのですよ……まぁそれよりも、話を進めましょう。みんなもこっちに入ってくれる?」

「すご~~~い! ひろ~~~~い! わ~~~~い!」

「先ほどまでロボットの気配が……どこにいったのだ?! 全力で探し出そうとしている奴がここに約一名」

「お前ら落ち着けって! 広すぎて探すのがマジでめんどくせぇんだから、動くんじゃねぇよ!」

「ここは木も崖もあるんかいな……アトラス大迷宮を思い出すな」


 お母さんと乙羽のお母さんを先頭に、アクシスといつもの四人、それと妹っ子がぞろぞろと訓練場へ入ってきた。


 その中には魔王と四神獣たちの姿はない。


「さて、さっそく始めましょうか」

「そだね。桜姫、まずは……よっと、これを()()で破壊してみて?」


 そういってアクシスが取り出したのは、枝が手足のように生えたヘンテコな見た目の太い丸太。


「桜姫ってサクヤのことか? いまだに慣れんわその呼び方。もうウチらは三人のことをオト、サク、マイって呼ぶわ」

「それいいな。短くて呼びやすいわ。つ~か、それただの丸太か? 枝が手足みたいになってて……無駄にかわいいじゃねぇかよ」

「アズサって意外とあぁいう変なの好きだよね」


 アクシスがどこの四次元ポケットからそんなものを取り出したのかよくわからないけれど、私が見てもただのデカい丸太。

 まぁただの木じゃないことはなんとなくわかるけど、正直私がやる必要あんの?

 正直めんどくさいんだけど、この邪神が不敵な笑みを浮かべて挑発しているのはマジでムカつく。


 お望みとあらば、その挑発に全力で応えてやろう。


 今まで私は全力を出したことがない。

 特に私の場合は、瞬発的に技を連発しながら戦うスタイルだからゆっくりと力を煉って大技を出す余裕がないわけよ。


 戦いに勝つだけなら力の全てをぶつけるよりも効率的に効果的な立ち回りをした方が楽だからね。


 今なら本当の意味で全力を出せるかな。

 たくさん休んでいっぱい食べて体力も全回復状態だし、こうしてゆっくりと力を煉っていけるからね。


「ちょ、ちょっと桜夜?! 本当に全力を出しそうな顔しているよ?!」

「お、落ち着いてサク! サクが本気を出したらこの施設が倒壊しちゃうよ!」

「マジか?! マジなんか?! おい、ロリ神! いますぐサクを止めるんや!」

「アハハハ、これはアタシも予想外だわ。あれは力を試したくてウズウズしているウラシスそのもの……シズク、ココ壊れちゃったらごめんね」

「そ、そんなぁ! オトちゃん、なんとかしてぇ!」

「だ、だってなんかもう攻撃体勢に入っちゃってるよ?! とりあえずみんなは私とマイカの後ろにきて! 神光の力、開放! 光壁!」

「具現せよ、ガルガドス! みんな早く、ガルガドスの後ろに!」


 よし、みんなはとりあえず大丈夫そうだね。

 いつものポーズからゆっくりと半身になり、両足を大きく開いてどっしりと腰を落とす。

 その勢いで地面は捲れ、周りに衝撃波が襲う。

 さらに自分の体を纏っている雷撃がその勢いを抑えられずに周りの壁を次々に破壊していく。


 まだ……まだ煉れる。

 神成の力を今出せる最大出力で放出しながら、それを体の中心に集めてどんどん高速回転させて煉っていく。


 体の内側から暴発する寸前まで高めたその力を手と手の間で凝縮させ、そして目標に向かって一気に押し出した。


超電界磁砲(レイオールガン)


 私が放った砲撃は、眩い光と迸る雷鳴を鳴り響かせながら目標のデカい丸太を直撃した。

 そのとんでもない衝撃波により、近くに生えていた木々や巨大な岩土を軽く巻き上げる。

 砲撃の道筋は地面が大きく抉れ、目標を中心に大きなクーデターを作っていた。


 ……しかしあろうことか、その肝心の目標には傷一つ付いていなかったのだ。

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