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122 げんそはんのう

 迫りくる大量の虫型ロボットたちの中を、なるべく数を減らしながら進む私たち。


 私はスマコのいう、雷桜の力というものに目覚めたけれど、基本的なスタイルはなにも変わらない。


 昔は七つ道具の力だと思い込んでいた、神成の力。

 実は地球で使っていた七つ道具の力をスマコが神成の力で作り出していたのだ。


 今ならそのこともわかるし、自分で作り出すことだってできる。


 アイレンズと思っていたのは、辺り一面に微細な電磁波を放出してそれを視界化させていただけだし、空輪の見ない壁は空気中の水分を風の元素で凝縮させていただけ。


 また、雷丸と手裏や転身機と桜飾は、元素同士の反応で物質を生成して炎と水と風の元素で圧縮強化したものを物体として具現化させたもの。


 もはや元素を操れば錬金術みたいなこともできるわけだ。

 これぞまさに神の力。


 だけど残念ながら私はまだスマコのように元素の力を扱えないから、この力を持っていてもなんでもできるわけじゃない。


 だから基本スタイルはなにも変わらない。


 元素の力を使う時は、決まった印を結んで発動する遁術を使うだけ。

 前に比べて変わったのは、技の威力が上がったことと、動きが速くなったことくらいだと思っている。


 それに比べて乙羽は正直反則だと思う。


 光の力を使うことは特に変わっていないのだけれど、ただでさえ反則級に強い変幻自在の光の力に乙羽自身の力である、(おつ)の力が加わっている。


 乙の力は、普通の光と違ったもので成形される。

 そもそも光や闇というものは、スマコの元素を操る力を持ってしても具現化できるものではない。


 光は全てを焼きつくし、闇は全てを消滅させる。

 どちらとも使い方を間違えれば、全てを無に返してしまえるほどの究極の力だ。


 乙羽はそんな力の一つを手にしていながらも、その光の形をある程度自由に形成できるようになっている。


 それが乙の力。


 いくら変幻自在の光の力とはいえ、光は発動すれば光の速度で通り過ぎてしまうから、形を形成することなんて普通はできない。

 だから、光は発動し続けて初めて目で目視できるものなんだけど、乙の力はそんな光を一つの創造物として具現化させることができるのだ。


 つまり、乙羽自身は光で自由に生き物や武器などの形を作り出すことができるということ。

 しかもその一つ一つが相手を燃やしつくす攻撃にもなり、爆弾にもなる。


 そして今、乙羽はその力を使って光の翼を作り出し、空を高速で飛び回りながらその羽根を無数にちりばめ、広範囲に迫りくるロボット集団を一斉にハチの巣だらけにしている。


 こんなの、私は手も足も出ないじゃん。

 だから素直に言わせてもらおう……「ないわぁ」


「ふぇ?! 今それ私に言っているのかな?! それはこっちのセリフだから! 桜夜の力は反則だから! 反則! もう桜夜のバカ~!」


 異議ありっ!

 なぜだ、どうして私が怒られる?!


 でも、だからこそ……

「まったくもって、頼もしい相棒なんだから」


 私らはまだ神の力とやらを完全に使いこなしてはいないけれど、お互いに本気で背中を預けられる。


 それだけの信頼と絆が私たちにはある。


 夥しい数の敵の大群も、私たちの連携の前には成す術がない。

 すると、戦っても無意味だと悟ったのか敵の動きが急にピタッと止まり、離れていく。


 代わりにドロドロとした黒いスライムのようなものが現れた。


「なんか嫌な予感しかしないね」

「……同感」


 そのスライムは、私たちに向かって黒い液体を吐き出してきた。

 乙羽はさっきと同じように光の羽根でそれを防いだ。


「いたっ?!」

「っ?! 乙羽!」


 スライムの黒い液体を浴びた乙羽の光の羽根はその部分が溶け出していた。

 しかも、光の力を侵食して乙羽自身に苦痛を与えたのだ。


「これは……私の天敵かも」


 乙羽はすぐさま攻撃された部分の羽根を振り払い、新しく羽根を広げる。

 先程まで余裕の表情だった乙羽が、額に汗を浮かべるくらいに焦っていた。


「ここは……私が」

「桜夜?」


 私は空中をかけながら、いつもの印結びの形をとる。


『火遁、砲火の術』


 手の平から放った炎の元素は、黒いスライムを飲み込む。

 私が出せる炎温度は約4000℃。

 この温度に触れて、物質が形状を保つことは不可能である。


 だけど、この黒いスライムはそうではない。

 私の炎を元素もろとも少しずつ吸い込み始めたのだ。


「桜夜、そいつからは闇の力を感じるよ! 多分元素そのものを吸収してしまう!」


 そうだろうね。

 でも乙羽が闇に触れると、直接ダメージを受けてしまう。

 それに、私もこれで倒せるとは思っていない。


『水遁、龍流の術』


 私は再び印結びを行い、水遁の術を発動させる。

 すると、自分の周りに龍の形をした水の化身が現れた。

 私はこの龍を操り、黒いスライムに巻き付くように覆い尽くした。


「桜夜、元素は……え?! どういうこと?!」


 黒いスライムをアイレンズで見た時、底なしの闇の力とそれを形成している水分と金属の物質を感知していた。


 これは紛れもなくあのクズ神(マネシス)が作り出したもの。


 邪神であるボケ神(アクシス)やどういう経緯で神邪の力を手に入れたのかわからないクズ神ならまだしも、力を封印されているアイツがその力に似せて作り出したものだ。


 それは即ち、完全なる闇の力ではないということ。


 だからさっきの4000℃の炎で熱したスライムの体に、今度は氷点下に近い水を一気にぶっかける。


 すると、スライムを形成していた物質が元素同士の反応によって一気に固化し脆くなる。

 私の思惑通りに黒いスライムは形状を維持できず、ボロボロと表面から崩れていった。


「なんかすっごく難しいこと説明してくれていたような気がするけれど……私には理解できないかも」

「……」


 なんだか少しだけ寂しい思いを抱えながらも、私たちは再びクズ神の元へと移動を始める。

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