121 ろぼっと
いきなり壁を突き破って私たちの前に現れた人型のロボット。
歩く度に蒸気を吹き上げながら、ガッシャンガッシャンと近づいてくる。
正直やかましい。
「オイオイ……この世界はロボットも出るんかいな」
「もうなんでもありだな。あれ、そういえばロボットに詳しいヤツがいたような気が……」
「あ、あれは……見た目が○○に出ていた〇〇超合金に似ているが、おそらく魔動力を原動力に〇〇を調和させて○○の〇〇を〇〇に……」
「アカン、あそこのロボットマニアが目をキラキラさせとる」
ホノカがなにを言っているのか全くわからないけれど、神成の力……アイレンズであのロボットを見てみると、かなり強靭な鉄分が複合されまくった鋼鉄を身に付けている。
そしてその鋼鉄の中身は、邪悪な気配の黒い物体。
それが中でロボットを動かしているみたいだね。
ここは私が一気に……て、えぇ?!
私が一気に片を付けようかと思っていたのに、ホノカの掛け声と共に玄武がいきなりそのロボット目掛けて突進を始めた。
「その姿で自分の前に現れたことは称賛に値する! 正直今までで一番テンションが上がりまくっていると告白する! しか~し! その程度のものでこのロボットだけにお小遣いをかけ続けたロボットマニアにして、もはやロボットそのものになりつつあるこの自分に勝てると思うでないぞ!」
「誰か止めてよ~ワタシはロボットのことなんてよく知らないよ~!」
ミサキが泣き叫んでいる中、二人を乗せた玄武とロボットが激突する。
途端に凄まじいほどの衝突音と衝撃波が私たちを襲う。
「ぬぅ~、このワレと同等の固さを持っておるとは……おもしろい! むすめ、主の言う通りのようだ、ワレに指示を出せい!」
「心得た! 今からそなたと自分は一心同体だ! 強度が同じなら狙うはただ一つ、関節部だ! いけ、ギガントアーム!」
玄武はホノカの指示通り、ロボットの関節部に向けて己の硬質な爪を突きたてる。
そこは、機械同士を連結させているゆえに、どうしても強度が落ちてしまう箇所なのだ。
しかし、ロボットもただ黙っているわけではない。
迫りくる玄武の爪から関節部を避けて左腕のボディでそれを防御し、代わりに右肘からジェットエンジンを噴かせながら殴り付けてくる。
「ここでロケッ〇パンチとはちょこざいな! ならばこちらも……己を燃やせ! バーニングブラスター!」
玄武の背中に二本付いていたバズーカ砲のようなものから炎が発射された。
ジェットエンジンで勢いを付けていたはずのロボットは、玄武の炎に押し負けて後方に吹き飛ばされる。
「ここは自分たちに任せて先に行け! 敵もなかなかのロボットゆえ、長期戦になる!」
「あ、そう? ならワタシもあっちに……きゃぁああ?! ホノカ止まってよ~! ワタシもあっちに行くの~!」
「……すまん、ミサキ」
「おまえの犠牲は無駄にせぇへんで」
まぁあの感じなら任せても大丈夫だろう。
思ったよりも玄武が強かったし、それにあれほどホノカと一心同体で戦っている姿を見ると、こちらが手を出すのもなんか躊躇してしまう。
『玄武なら大丈夫よ、先に進みましょう』
「……うん」
ネコもそう言うので、激しい金属音とミサキの泣き叫ぶ音を後にし、私たちは先を急ぐ。
しばらく進むと、また先ほどと同じような不審な気配が多数。
その数が尋常じゃない。
私が関知できるだけでも数百……いや数千を超えている。
一体一体の強さはさっきの巨大ロボには及ばないけれど、この数を相手にするのは骨が折れそうだ。
クズ神め……消耗戦に持ち込んできたというわけね。
『ワタシじゃ全部を把握しきれないけれど、数百?』
数千よ。
「クックック……朱雀、頭の悪いアンタでも不気味な虫に気が付いているんでしょうけど、数千らしいわよ?」
「ホッホッホ……白虎、臆病な化け物のアナタではその数には歯が立たないでしょう。今の内に逃げた方がよろしくてよ?」
「この、飛んでいるだけの無能なアホ鳥が! こうなったらどちらが多く始末するか競争よ」
「望むところです」
眉間同士を合わせて威嚇し合っている白虎と朱雀。
それを少し遠くから呆れた顔で見ている青龍。
「やれやれ……これはいつものパターンに入っちゃったね。キミたち、しっかりボクにつかまっておかないと、死ぬからね?」
「なんや?! 一体なにが起きとんのや?!」
「ちゃんと説明してくれ!」
「つまりねぇ……本当の戦いが始まったってことだよ」
私たちは迫りくる大群を、かなり広めのエリアで待ち構えていた。
そして、遂に大量の敵が姿を現す。
見た目は蜘蛛みたいに足がいっぱいあるものだったり、ムカデのように胴体が長かったりと様々な形をしている。
「ライホウ!」
「ホウオウ!」
そんなこと関係あるかといわんばかりに、いきなりネコと朱雀は同時に攻撃を放って敵を蒸発させる。
「今のはワタシの方が多かった!」
「違います! アタシの方が多かったです!」
「コウオウ!」
同じように青龍も攻撃を行い、瞬時に敵を凍らせていく。
「二人とも、しゃべっている暇があったら敵を倒そうね? まだまだいっぱい来るんだからね」
「ふん、このアホ鳥だけには負けないわよ」
「品の欠片もない化け猫なんかに後れは取りませんよ」
再び、にらみ合いながら多数の敵を相手にしていく。
とりあえずここは任せても大丈夫なようだ。
というか、さっさと先に行けという圧力がヒシヒシと伝わる。
「桜夜、行こう」
「……うん」
そして私たちは走り出す。
乙羽は光の翼を背中に広げて宙を舞い、私はいつも通りに空中を走り抜ける。