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013 げきとう

 はぁ、はぁ、はぁ……頑張ったよ、私。


 300匹くらいいた魔物の数はもう残り極わずかになり、上から大量に降ってくることはなくなった。


 私は今、空中機動術で空中に立って浮いている状態。

 下を見ると無残につぶれた魔物の死骸と岩の残骸だらけ。


 よくもまぁこれだけのものを避けて生き延びたもんだよ。


 天から飴とかお札とか降ってきたらいいなぁって思ったことはあったけどさ、まさか虫が大量に降ってくるとは誰も想像しないよね。


 ちょっとした隕石だったわ。

 いまだに思うけど、なんだよチャタテムシって……腹立つわぁ。

 今まで知らない虫だったけど、これから一生忘れることはないかも。


 さて、アイレンズ上に映る天井の魔物はもう残り1匹だけ。


 こいつは自ら飛び降りてくるような自殺志願者ではないようだ。


 さっきまで穴からじっくりと私のことを観察していたけど、静かにゆっくりと虫の死骸と岩の残骸だらけなこの場所に降りてきた。


 私はそれを空中から見下ろしている状態で対峙する。


 こいつ……やっぱ強いなぁ。

 他のヤツとオーラ的な、なにかが違うような気がする。

 多分群れのボス的な存在なんだろうねぇ。


 これと戦うの?

 いや、ムリじゃね?

 少しも勝てるビジョンが見えてこない。

 これはさすがに逃げるか?


 え、え?

 なんか……寒っ!


 急激に周りの気温が低下し、私とこの魔物の周辺一帯の四方を氷が覆って四角い部屋ができ上がってしまった。


氷間(ひょうかん):氷魔法の一つ。ある一定空間内を氷で覆い、生命が活動不能な環境へと変える。また魔法を発動した主の任意でさまざまなものを氷の中へ取り込む》


 氷間……なんて厄介な。

 息をするたびに肺が凍りそうで上手く呼吸ができない。

 体の方も、あまりの寒さに全身の血管が凝縮して血液が回ってないから動きが遅くなっている。


 確かにこれは生物が生存できる環境じゃないわけだ。

 転身機をまとっていなかったらまともに動けていないだろうね。


 こいつは本気で私を逃がすつもりはなさそうだ。

 私を殺そうとする強い殺気がヒシヒシと伝わってくる。


 はっ、ヤバいっ!


 咄嗟に後ろに飛びのいて、「未来視」で見た攻撃を未然に避ける。


 そのすぐ後に、私が先ほどまでいた場所を氷の槍が地面から伸びて貫いた。

 一見空を切っているだけに見えるけど、私が立っていた見えない壁を簡単に貫いていた。


 うそっ?!

 氷の地面に降りたらそうなるのぉ?!


 私は地面に降り立つのを急遽やめ、再度空輪を起動して空中に降り立つ。


 降り立つ予定だったその地面では、私が氷の上に足を付けた瞬間にひざ下全てを氷の中に取り込まれ、上半身を無数の氷の槍に貫かれる様子が「未来視」に映っていた。


 あぶなぁ……。

 この四方で囲われた氷全てが危険なんだ。

 これに触れないように、空中であんな化け物と戦えって?

 ムリくね?


 あ、こいつまた魔法を発動しようとしてんじゃん!

 これは多分さっきの魔法だ。

 にしても魔法の発動スピードが速いって!


 アイレンズのおかげで、相手が魔法を使おうとしていることがわかる。


 流れる魔力? みたいなものが、術式? みたいな型に流すと魔法が発動するみたい。


 アイレンズ越しだとその流れる魔力みたいなものが見えているから、魔法を発動しようとしていることはわかる。


 だけど、こいつは魔法を発動するスピードが速すぎんのよ!


 次々に四方から伸びてくる氷の槍を、なんとか見えない壁を壊されながらもギリギリで躱していく私。


 あっぶなぁ――い!

 気を抜くと一瞬で串刺しだわ。


 実はスマコ曰くこの見えない壁はさぁ、車やトラックが衝突しようがピストルで撃たれようがそれを簡単に弾き返すほどの強度はあるらしいのよ。


 しかも、忍気発動状態ならさらに強度は上がって、バズーカでもミサイルでも壊れないくらいにはなるらしいよ。


 それをブスブスブスブス簡単に貫いてくれっちゃってさぁ……。


 まぁこの世界の魔法がそれほどまでに強いってことだよね。

 自分の常識がこの世界じゃ通用しないから、認識を変えないといけない。


 それにしたって、いつもギリギリなんだよ!

 気が休まらないよ!

 しばらく私に休暇をくださ――い!


 はぁ……一人で愚痴ってもしょうがないか。


 その間にアイツはもう次の魔法の構築を始めちゃってるもんねぇ。


 もうこいつに勝つなんてムリくね?


《我主、サクヤ様なら可能です》


 はいはい、ありがとさん。

 なんでアンタはそんなに嬉しそうに言うの?

 状況わかっている?


 はぁ……ということでやりますか。


 私は両方の太ももに巻いている手裏ポーチからそれぞれ手裏剣を5枚ずつ取り出し、それを全てチャタテムシに向かって投げつけた。


 すると、チャタテムシは手裏剣全てを地面から伸びる氷の槍で防いだ。


 手裏剣はそのまま氷の中に取り込まれてしまったので、再度手裏剣をポーチから取り出す。


 手裏剣は忍気を発動している状態ならいくらでも作ることはできるけど、忍気の消費量が上がってしまう問題がある。


 ちょお?!

 そんなのありぃ?!


 チャタテムシはお返しと言わんばかりに、氷魔法で空中に10本の氷の矢を出現させ、それを高速で飛ばしてきた。


 おぅっ?!

 にゅわっ?!

 ひぃいいいい?!


 次々に壁を作って空中を移動しながらそれを回避し、こちらも手裏剣をどんどん投げつけている。


 途中から気が付いたけど、アイツが魔法を使うたびにMPゲージが減ってるんだよね。


 あれは、私でいう忍気みたいなもんで、魔法を使うのに必要な力みたいだ。

 つまりは、あれが無くなればもう氷魔法は使えないということ。


 今はまだ3分の1くらい残っている状態だね。


 それでもこっちはもう忍気が少ないから、なんとか逃げ回っているだけなんだよなぁ。


 あ、ヤバい!

 これはさすがに避けきれないわ!


 せめて体を捻って勢いを殺して……はんぎゃああああ?!

 いったぁあい!

 あの氷の矢がちょっと腕にかすっただけで、肉がえぐれたんですけど?!

 転身機で守られていてもこのダメージなんて反則じゃん。


 あぁもぉ、嫌になるなぁ。

 てかなんで私がこんな目に合わないといけないわけ?


 とりあえず落ち着け、私。


 もう少し……あともう少しだ。

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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