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104 いんねん

 全身へと広がっていく悪寒に内心焦りを感じている。


 それがどんどん強くなっていて、私の意識を奪おうとしているからだ。


 多分、このまま目を閉じればもう目を開けることができなくなるはず。


 それだけはダメだ。


 最後に見たマイカの顔が頭から離れない。


 ここで私が本当に死んでしまったとしたら、マイカも二度と帰ってこないような気がする。


「なんで?! どうして私の回復魔法が効かないの?!」


 先ほどから乙羽が私の傷口を回復させようとしているみたいだけど、多分効果はないみたい。


「アハハハハ! このワタクシが自ら神の力を使ったのですよ~? そんな仮初の力が通用するわけがないでしょう! 心配せずともあなたも同じようにしてあげますよ~」

「くっ……」


 クズ神は私に向けていた拳銃を乙羽の方へと向けた。


 そんなこと……させてたまるものか。


「っ?! ……まったく恐ろしい子。今にも死にそうなくせに、そこまでの殺気を放ちますか。あなたはアクシスよりも先に、ここで殺しておいた方がよさそうですね~」


 昔とは違って、自分が死んでもいいなんて今は思っていない。


 今の私には乙羽がいる。

 そしてマイカがいる。

 みんなが……いる。


 だから……死にたくない!


《よく言ったわサクヤちゃん! その想い、今は私が叶える!》


 え?!


 スマコがそう言った瞬間に、私が感じていた苦痛がフッと無くなった。


 それと同時に体の感覚までもが全て無くなった。


「いた……い」

「なん……だと?! おまえは!」

「さ、桜夜……じゃない! 誰なの?!」

「……久々の生身で……これは……堪える……な」


 乙羽もビックリしているけれど、私もビックリだよ~。

 目は見えるけど、体が勝手に動いているし。


 それよりもクズ神の方が驚いている気がするね。


「サクヤちゃん……です」

「ぇ……えぇ?」


 言葉までしゃべり出したよ……なにこれ、凄く怖い。


 それよりも乙羽がドン引きした目でこちらを見ているのがとても気になる。


 今までそんな目で見られたことはないよ?!


 視界しかないから自分が今どんな顔でどんなポーズを取っているのかもわからないから怖い。


「はっ?! う、うそ?! ちょ、ちょっと! ツキシス……」

「……」

「ウ~ラ~シ~ス~~~~! 会いたかったよぉおおおお!」

「……近い」


 急に乙羽が乙羽じゃなくなったのは多分気のせいじゃないはず。


 私と同じようにスマコみたいな別人格がいたということかな?


 それにしても、私じゃない私の手で顔を抑えられている乙羽は可愛い顔が非情に台無しだ。


「んな?! そっちはツキシスですか……。まさかお二人が表に出てくるとはさすがのワタクシでも予想外でしたよ」


「きゃぁ~ウラシスだぁ~! こうしてまたキミに会えることを願って、ず~っとキミのことだけを想い続けてきたんだよ!」

「……重い……」《ちょっと離れてくれませんか? 傷口が痛いのですが……》

「そんな冷たいこと言わないでさぁ~キミもボクに会えてうれしいでしょう? ねぇ、うれしいでしょう?」

「……うる……さい」《それよりも本当に痛いのです。これ以上やるとサクヤちゃんの体が壊れます》

「あ、このままちょっと二人でお出かけしちゃう?! 愛の逃避行! ねぇ、どうかな!」

「……」《こうなってしまったツキシスになにを言っても無駄ですね。サクヤちゃんごめんなさい。死にそうです》


 いや、勘弁して?!

 そんな理由で殺されたんじゃ、たまったもんじゃないよ?!

 ていうかそれをちゃんと言葉で伝えなさいよ!


「ワタクシを……無視するなぁああ!」


 完全に二人だけの世界に入り込んでいたスマコとツキシス? っていう人に向けてクズ神が拳銃からとんでもない高出力なエネルギー砲を発射した。


 それを無言のまま、片手を差し出して弾き飛ばした乙羽の姿のツキシス。


「ちょっと……ウラシスに当たったらどうするの? 殺すわよ?」


 先ほどの無邪気な笑顔は消え去り、とても恐ろしい顔になったツキシス。


 あの顔は時々乙羽もするけれど、威圧感が半端ではない。


「ふん……いくら強がってもその姿が長持ちしないことはわかっていますよ? 体をもとの主に戻したその瞬間にあなた方も終わりで……がはっ?!」


 マイカの姿をしたクズ神が話している途中だったけど、ツキシスは拳を光らせたかと思ったら、それをクズ神の腹部へめり込ませる。


 その刹那、スマコは一瞬でクズ神の背後に回っており、ツキシスの攻撃でくの字に曲がっていたクズ神の背中を膝で蹴り上げる。


 両方から挟み込むような鋭い打撃にマイカの体から、人間から鳴ってはいけないような音が聞こえた。


 ちょ、ちょっと!

 マイカの体を傷つけないでよ!


《大丈夫ですよ、マイカちゃんの体は私たちと違って完全にマネシスに取り込まれていますので、このくらいではびくともしません》


 そ、そうなの?!


 そう言いながら無言でスマコとツキシスはクズ神に打撃を与え続ける。


(ベキ……ボキ……バキ……グチャ……)


 ねぇ……本当に大丈夫なんだよね?!


《はい、大丈夫ですよ。一応神なので》


 いや、それでも最初はさ、お互いに様子見するものじゃないの?

 いきなり二人で全力ボッコボコはあまりひどい気が……。


《サクヤちゃん……それは、私とツキシスがこのマネシスの手でどんな目にあって殺されたのか知らないからですよ》


 え……あなたたちはこいつに……クズ神に殺されたというの?!


《そうです》


 いまだにスマコとツキシスの猛攻は続いている。


 乙羽の体であるツキシスの顔はどんどん憎しみの感情が溢れ出しており、それと同時に攻撃の速度も威力も増しているような気がする。


 私の目ではこの三人の動きが異次元過ぎてとてもついていけていない。


 ただ、その中でも言葉を介さない無言のやり取りが行われていることだけはなんとなくわかってしまった。

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