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012 おんなはこんじょう

 今までもスマコ単体で、予測やシミュレーションを行うことはできていたけど、それはあくまで事が起こった後の被害や影響などのシミュレーションであり、不確定要素などによる予測のズレなども発生していた。


 あの前世で起きた爆発事故での天井の崩れとかね。


 それがこの未来視だと、なにか事が起きる前にそれがわかるらしい。

 爆発事故を例にするなら、爆弾が爆発する前にそれがわかるってことだ。



 ていうかスマコさ……これまずくね?!


《はい。大ピンチです》


 だからなんで嬉しそうに言うのよ!

 忍気発動、20スロットル!


 今私が見ている未来視の映像には、天井からこの場所を目掛けて怒涛の如く降り注ぐ、チャタテムシの大群の姿が映っていた。


 それは、これから実際に起ころうとしている少し先の未来。


 このエリアは、他のエリアと比べて少し天井が低いなぁと思ったくらいで、そこまで気にはしていなかったんだけど、今ならわかる。


 このエリアの天井全てが、チャタテムシの巣なんだ。


 リアルタイムな視界には、天井に開いた無数の穴から大量の赤い目がこちらを覗いている。


 その数ざっと300匹近く。

 それらが一斉に私を目掛けて飛び降りて来た。


 ……えぇ、こちらアトラス大迷宮からお送りしております。現地リポーターのサクヤです! 本日のアトラス大迷宮のお天気はおあいにくの天候となるでしょう! 虫、ところにより大岩が大量に降ってきますので、みなさんくれぐれも外出はお控え下さい!


 以上、現場からお伝えしました。


 て、言うてる場合かぁあああ!


 ひぃいいいいい?!

 避けろ、避けろ、避けろぉおおお!

 虫、虫、虫、岩、虫、虫、虫、岩ぁああああああ?!


 先に落ちたチャタテムシは、後から落ちてくるチャタテムシと大岩の下敷きになって潰され、瞬時にHPゲージが無くなり死んでいってる。


 それらをすべて避けながら私はどんどん上に上がっていく。


 動きは単純に上から落下してくるだけだから避けやすいけど数の暴力とはよく言ったものだ。


 未来視で先読みしながら忍気の20スロットルで避けていなかったら、今頃私も下で死んでるこいつら同様にぺちゃんこだったよ。


 とは言っても本当にギリギリなの!

 マジでギリギリなの!


 ちょっとでも気を抜いたり、先を読み間違えたりするとそれで終わり。


 懐かしいなぁ。

 私は今、小さい時に無理やりやらされた修行を思い出しているよ。


 あの時はいきなり崖から突き落とされるわ、ついでに大量の岩を上から降り落とされるわで全然生きた心地がしなかったもんねぇ。


 空中で岩に飛び移りながらそのまま登って来いなんてさ、普通6歳の少女にそんなことさせる?


 「人間死ぬ気になれば火事場のクソ力が出るもんよ。根性出しなさいサクちゃん」とかお母さんは言ってたっけ。


 私がその時「ないわ――」って呟いたのは言うまでもない。


 さて、あの時の修行のおかげでピョンピョンと虫から岩へ、岩から虫へと飛び移りながら全ての落石と落虫を回避していく。


 これならまだなんとかなるかも……って、えぇええ?!

 なにこれなにこれ?!

 なんでアンタら全身氷のトゲトゲになって降ってきてんの?!


 アイレンズに映る未来視では、全身に氷の棘を生やしたウニのような個体がたくさん降って来て、私がめった刺しにされている。

 なにこれ、グロい。


 これが氷魔法ってやつ?!

 ないわ――。

 あれじゃあ、確かに飛び乗れないじゃん!


 この未来を回避するには……あっこの岩までジャンプしなきゃいけないの?!

 アホか!

 ムリに決まっとるやん。


 ヤバっ、囲まれた?!

 もう逃げ場ないじゃん!


 こんな感じで未来がわかっていても対処できないこともあるよねぇ。

 まさしく、絶体絶命ってやつだわ。


 こうなったら……ぶっつけ本番であんまり自身がないけど、やるしかない!

 頑張れ、私!

 女は根性だぁああ!


『忍法、空中機動術!』


 私は七つ道具の一つである空輪を起動して、目に見えない透明な円形の壁を空中で自分の足元に出現させた。


 それを足場に素早くジャンプして、迫りくるウニの大群を躱すのと同時に、すぐに次の着地地点に、再び見えない壁を出現させる。


 それを繰り返しながら空中を飛び回り、降り注ぐ魔物や大岩を避けて天井まで上っていく。


 忍法、空中機動術……これは私が修行中に考え出した技で、こんな感じに見えない壁を出現させる空輪を使っていつでも空中を飛び跳ねたり、走り回ったりすることができるんだけど、これも転身機と同じように明確なイメージが必要で扱いが難しいのよ。


 例えば、どの位置にどのタイミングで、どれくらいの強度でどれくらいの継続時間を持たせて、どれくらいの大きさの壁を出現させるかとかね。


 自分が乗れる強度とか大きさとかはイメージしやすかったんだけど、発現させる位置とかタイミングってのがなかなか難しいのよ。


 特にこんな空中を高速で飛び跳ねている最中になんて修行でもやったことなかったしね。


 今私が出現させている壁は円形で直径30cmほどの見えない壁なんだけど。

 これは修行の中で、自分の頭の中に固定したイメージを作り上げた。


 あとはこのイメージにアレンジを加えるだけ。


 『自分から1.5m先の空中に0.5秒後に固定イメージの壁を出現』みたいなね。


 これでも最初の頃は距離が足らなかったり、タイミングが合わなかったりしてそのまま地上に落下していた。


 正直、この修行が一番難しくて、時間がかかったかもしれない。


 でも、その甲斐はあったみたいだね!


 我ながら上手く壁を発動させながら空中を走り飛び回っている!


 ヤバい、ちょっと楽しくなってきたぞ。


 さて、アイレンズで確認できる天井にいたチャタテムシの数も残りもう少しだ!


 頑張れ、私!

お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければブクマや評価をしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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