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B07 Peep

乙葉ルート編です。

 と、いうことでやってきましたカスさんが管理している人族領土。


 今私たちがいる場所は、表向きが教職塔という名の人族領土の監視塔。


 ここでは人族領土の様々な場所の監視ができるようになっていて、各国の情報が筒抜けになっている。


 正直ここまで国家機密が筒抜けだとドン引きしてしまう。


 これらの情報をもとに、裏で世界を動かしているカスさんはさすがだと思った。


 しかし、世界の国家機密なんかよりも私が知りたいのは、今の桜夜の状態。


 さすがに寮の部屋にまで監視カメラは無く、ノゾキ見をすることができないという。


 まぁ設置できなくはないけど、今の桜夜レベルだとすぐにバレるだろうとのことだ。


 でも、そこはカスさんがなんとかしてくれた。


 カスさんが使徒と呼んでいた者に連絡を入れると、突然桜夜が寮の屋上に現れた。


 久しぶりに見た桜夜の顔は、フードで隠されていて良く見えない。


 今直ぐにでもそこへ向かって抱きしめたい衝動を全力で我慢していると、誰か屋上にやってきた。


 その子が桜夜になにか話し掛けているようだけど、カメラが遠くて聞き取れない。


「ウチの娘の暗殺を秘密裏に依頼し、屋上へと向かうように手配しました。全く参考にはなりませんが、戦闘姿は見られるでしょう」

「なるほど……感謝する」


 あ、一応今の私の声はおじさんだから、口調も変えているよ。


 桜夜の動きをじっと観察していたつもりだったのに、一瞬でその子の背後に回って腕の関節を締め上げた。


「はっ?! なんだあれは、速すぎないか?!」

「まだ動きが速いだけで、そこまでの脅威はありませんが……厄介ですね」


 さらに桜夜は、どこから出したのかわからない糸でその子をグルグル巻きにした後、それを肩に担いで移動し、校舎の屋上へ吊るしてしまった。


 単純なスピード勝負なら多分ギリギリ私が勝つと思う。

 だけど、桜夜の場合は瞬発的な動きが速すぎる。


 その動きはまるで稲妻の如く、気が付いたら目の前から姿を消し、気が付いたら背後にいる。


「もはや忍者じゃん……」

《まだまだ遅いけど、まさしくあれこそウラシスの動き……いつもあの動きで逃げられるんだよ》

「逃げられる?」

《あ、いや……なんでもないよ》


 私が知っている桜夜の姿とはあまりにもかけ離れていて、開いた口が塞がらない。


 でも元気そうで安心した。

 少なくとも、昔感じた孤独そうな雰囲気を感じられない。


 桜夜はこっちの世界に順応しているんだね。

 そう感じると少しだけ複雑な気持ちになってしまう。


 それから次の日も桜夜の様子を観察した後、私はその場を離れてアトラス大迷宮に戻った。


 あれ以上、桜夜の様子を見ていると気が狂いそうになるからだ。


 私が思っている以上に桜夜はこの世界の人たちに馴染んでいる。


 特にあのカスさんの娘さん……マイカちゃんって言ったけ。


 あの子に対しては特別な感情を持っていると思う。


 本来ならその特別は私が良かった。

 私だけが桜夜の特別になれるものだと思っていた。


 いや……そうなりたいと願っていたのは私の方。

 でもそうじゃなかった。


 桜夜にとってあのマイカちゃんも特別な存在になってしまった。


 私が見てもいい子だと思う……容姿も性格もかわいいし……。


 とてもマネシスの因子が組み込まれた人間だとは思えない。


《今のキミは嫉妬だけが心の中で渦巻いて、とても酷い顔だね》

「……うるさい」

《気持ちは痛いほどわかるよ。ボクも同じだったからね》

「それはどういう……」


 会話の途中だったけど、人が近づく気配を感じたから口を閉じた。


 ほどなくして扉が開かれ、オスさんが室内に入ってくる。


「天使様よ。少しマネシスの因子が組み込まれた人間を見てきていいか? あと、封印を解こうとしているアホも」

「……許可します。しかしオス、もしその2人を手にかけたら……いくらあなたでも殺しますよ?」

「っ?! わ、わかりました」


 オスさんは焦ったように部屋を出て行った。


《無闇にそんな殺気を放つもんじゃないよ? 下層にいる迷宮中の魔物が怖がって上層に向かっちゃったじゃないか》

「知らないよ……」

《乙女心は難しいね》


 私が何日か不機嫌に過ごしているとオスさんが戻って来た。


 カスさんの使徒が実行したマイカちゃんの暗殺計画にのっかり、チラッと様子を見てきたようだ。


 作戦の中で、使徒さんがこちらの秘密をバラしそうになったからその人含め関係者全員をオスさんが殺してきたらしい。


 その時、桜夜に反撃されて動けなくする程度には手を出してしまったと素直に謝ってきた。


 そんなことは隠していればわからないというのに、意外と素直な一面があるオスさん。


 とりあえず、私が直接バツを与えるのはやめてその辺はカスさんに任せた。


 部下がたくさん死んで困るのはカスさんなわけだしね。


 それよりも私は人間滅亡計画を進めていた。

 まず初めは人族と魔族の戦争を引き起こす。

 その作戦の要となるのが、この戦艦。


 人族と魔族は平等に殺していく必要がある。


 これはアクシスの最終目的である、世界滅亡のための生命エネルギーを、一時的にこの世界で蓄えていく必要があるからだ。


 人族の生命エネルギーは人族領土側で、魔族の生命エネルギーは魔族領土側で集めるようになっている。


 片方の生命エネルギーを大量に蓄え過ぎると、世界のエネルギーバランスが崩れて封印が崩壊してしまい、作戦が失敗に終わってしまうらしい。


 この辺の詳しいことを説明されても、私にはよく理解できなかった。


 とにかくこの大量の空飛ぶ戦艦を使って魔族が人族に戦争をけしかける。


 そうすることで均等に生命エネルギーを集めていき、最終フェーズに持ち込む。


 大丈夫……やれる。

 いや、やる!

 私は桜夜の命を助けるためだったら、なんでもすると決めているから。

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