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B06 Special power

乙葉ルート編です。

残り数話で話をまとめます。

「さく……や」


 まともに目を開けることもできないおぼろげな視界のまま、私は最後まで心の支えになってくれた愛しい人の名前を呼んで目を覚ました。


 思わず発した自分の声は想像よりもひどいものだった。


《本当にキミという人は……ボクに似て、あきれた根性の持ち主なんだよ》


 突然、聞き覚えのない女性の声が直接頭に響いてきた。


「……え? 誰……なの?」

《やっ! こうして会話をするのは初めてだね。ボクは神光(かみあり)ツキシス。キミの中で眠っていた聖なる光を司る神だよ》


 これがアクシスの言っていた、私の中で眠っているという神の力というやつだね。


「……お目覚めでございますか、天使様」

「ひゃいっ?! ビックリした……心臓が止まるかと思ったんだよ」


 今度は耳から聞こえてきたおじさんの声にビックリして、声がした方向へ視線を移す。


 すると、私を囲うように膝を屈している2人の人物と、その後ろでひれ伏している三匹の大きな化け物がいた。


 この人たちがアクシスの眷属だという。


「お初にお目にかかります、我は勇者として人族側を統一しているカス・カミキと申します」

「同じく魔族を魔王として統一しているオス・グランデだ」

「我々はこのアトラス大迷宮の魔物たちを統一している朱雀、青龍、玄武です」


「はじめ……まして。光月乙羽です」


 丁寧に挨拶をされたから、一応私も挨拶を返した。

 今しっかりとしゃべって気がついたけれど、私の声……おじさんみたいな声になっている。


「アクシス様から話は聞いております。我々はあなた様を天使様と呼ばせていただきますので、今後は我らのトップに立ちご指示ください」


 私のことを全員が天使様と呼ぶのは、神をこの身に宿して神の使いをしているからだという。


 まぁそこは正直どうでもいい。

 好きなように呼んでくれて構わないけど、天使というのは少し恥ずかしい。


 この人たちは基本、私にもやさしくしてくれた。


 まず人族側の勇者をやっているカスさん。


 この人は親しみやすいおじさんといった感じの柔らかい雰囲気の人だ。

 結構面倒見が良くて、私にも気を使ってくれる。


 魔族側の魔王であるオスさんは、一見すると怖そうな雰囲気を出している。


 だけど、話してみると意外におしゃべりなところがあったり、オチャメな一面があったりして面白いお兄さんみたいな人だった。


 魔物のみんなも私をよく慕ってくれている感じ。

 結構畏まられているから、私としては少しやりづらいけど。


 5年前まで白虎という魔物を含めて四神獣と呼ばれていたらしいけれど、その白虎が持っていた封印が破られてから姿を消してしまったらしい。


 その時に死んでしまったのか、もしくはなにか訳があって姿を消しているのか……いまだにわかっていないらしい。


 だけど、この三匹たちは後者だと信じているようだった。


 普通なら裏切ったとか逃げたとか思われても仕方がないと思うんだけれど、魔物同士の仲の良さがなんとなくわかった。



 そして、私がここに来て数日が経った。


 一刻も早く桜夜のもとに行きたかったのだけれど、まずは自分の力を開放していく必要があった。


 でも、それは意外とすんなりいったみたい。


 力の根源であるツキシスの言う通りにしているだけだったのに、この光の力はあまりにも強すぎた。


 変幻自在で伸縮自在の光の力は、その姿を剣にも盾にも思い描けばどんな姿にも変えてしまう。


 しかも、その光に触れるとどんな物質でも溶けてしまうほどのエネルギーを放出する。


 おまけに、その身に光を纏えば光の速度で移動することも、自身や相手を治癒させることもできるという超万能型。


「おいおい、マジかよ……俺ら全員の攻撃でもびくともしねぇのかよ」

「むぅ……しかも攻撃したこっちの剣が蒸発しておる」

「ア、アハハ……なんかあの……ごめんなさい」


 これが俗にいうチート能力ってやつなんだろうけど、こんな力を私が持っていていいのだろうかとかなり恐縮してしまう。


《まぁそれだけの苦しみに耐え抜いたってことだよん。普通、あの苦痛に耐え抜くなんて正気の沙汰とは思えないからね》

「人を異常者みたいに言わないでくれるかな! まぁ確かにあれはもう二度とごめんだけど……」


 その結果、今このとんでもない力を使えているのはよかったのかもしれない。


 正直な話、これならマネシスにも対抗できるんじゃないかと思ってしまったけれど、それはやっぱり甘い考えだったみたい。


《マネシスが本気を出せば、今のキミでもデコピン一発で頭が消し飛ぶよ》


 なんてツキシスに言われてしまった。


 だから予定通りに私は桜夜が封印を解くのを邪魔しつつ、陰ながら守ろうと決めた。


 ただ、白虎が持っていた封印が解かれてしまったことで、今の封印は不安定になっているという。


 この5年はアクシス自身が力を強めたり、陰ながら人間たちを暗殺したりして封印を保ってきたらしい。


 まぁこっちで5年経っていても、アクシスがいる向こうの世界では1,2週間だけどね。


 それでも、アクシスのあの様子からして長く力が保てないのは明白だ。


 とりあえず私たちは人類滅亡のための行動を急ぐ必要がある。


 桜夜は今、カスさんの領域で動きを制限しているとのことだ。


 このアトラス大迷宮内をさまよっていた桜夜は、カスさんの娘と出会ってしまったらしい。


 その娘は実の娘ではなく、マネシスの因子が埋め込まれた人間だという。


 産まれてすぐに危険な力を察知したカスさんはその子を引き取って監視していたらしい。


 そして、その内なる力が目を覚まそうとしたから、このアトラス大迷宮内で暗殺を試みた。


 だけど、偶然にもその場に桜夜が現れてその子を救い出してしまった。


 にわかには信じられないことだけど、それからその子と桜夜は一緒にこの広大な迷宮内を旅して地上まで戻ってきたというのだ。


 ただ、その子がいることで桜夜の行動がかなり制限されているのをカスさんは見ていた。


 マネシスの因子をそのまま放置しておくのは危険だけど、今は桜夜の行動を制限する方が先決だと判断したらしい。


 結果的に桜夜は、カスさんの管理領域である学園内に閉じ込めているという。


 それを聞いてもいまだに私には信じられない。


 あの桜夜が他人と一緒に旅して、一緒に過ごして、一緒の学園に通っている?!


 それを考えるだけでも、途轍もなく心がざわつく。


 とりあえず、まずは一目でもいいから今の桜夜を見てみたい。

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