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B02 truth

かなり間隔が空いてしまいました。

乙葉ルート編です。

 突然宙に浮いた小学生くらいの見た目をしている不審な少女に声を掛けられた。


 漆黒の長い髪をなびかせて、黒いセーラー服に身を包み、不気味な笑みを見せるその子は、とてもこの世の者とは思えなかった。


 死神なのだろうか?

 よく見ると、大きな鎌に座って宙に浮いている。


 だけど、そんな少女が目の前に現れたからといって私には正直どうでもいいし興味もない。

 視線をその子から再び病室の天井に移したところで、またその子が話しかけてきた。


「うふふふ、とてもいい表情ですわぁ。美少女が絶望に陥っているさまは見ていてとても興奮してしまいます。さて……死ぬ覚悟はおありですか?」


 死ぬ覚悟もなにも、とうにできている。

 自ら死にたいとも思っている。

 だけど、私は死ぬわけにはいかない。


 桜夜がそれを望んでいないから。

 あの子がくれた、この左手薬指にはまった指輪がそう言っているのだから。


「なるほど……その指輪の誓いがアナタを縛っているのですね」


 いつの間にか目の前まで迫っていた死神の少女が私の左手を掴み、指輪をまじまじと見ている。


「ほうほう、なるほど……面白い指輪ですねぇ」

「……触らないで」


 久しぶりに出した声は酷いものだった。

 それよりも、振りほどこうとした左手がびくともしない。

 見た目は小学生くらいの少女なのに、とんでもない力だ。


「いいですねぇ! その顔、とてもいいですよぉ! あぁん、興奮しちゃう」


 ボキッ。


「……ぐっ?!」


 突然嫌な音がしたと思ったら、遅れて左手薬指に激しい痛みが生じた。


「ふむふむ……すご~い。指の骨を完全に折ったつもりだったのに、曲がった程度で済んでいるのね……ホイッと」

「いっ?! ……え?」

「ごめんなさいねぇ、少し実験をさせてもらいました。指はきちんともとに戻したので許してくださいな」


 曲がってはいけない方向へと曲がっていた指はもとに戻っている。

 痛みもない。


「あなたは、誰?」

「あ、ご紹介が遅れました。アタシは神邪(かみじあ)アクシス。この世界を管理する邪神です」

「そう……その邪神が私になんの用なのかな?」

「うふふふ、アタシは今のオトハちゃんのように腐れ切ったような目をしている人間を死へと誘う死神なのです」

「それで私を殺しにきたの?」

「はい。しかしそれはあなた自身が自ら望むことになるでしょう」

「……どういう意味なのかな?」

「サクヤちゃんに、命の危険が迫っていますよ」

「……え?」


 桜夜の名前が出てくると胸が締め付けられるように激しい痛みが襲い掛かる。

 それはさっき指を曲げられた痛みよりも断然に苦しい痛みだ。


 あの子は私の目の前で死んでしまった。

 私を守るために自ら犠牲になって……あの光景を思い出してしまうと激しい嘔吐を繰り返して、過呼吸を起こしてしまう。


 なにも口にしていない胃からでも、必死に体はなにかを吐き出そうとする。

 止まらない激しい鼓動に合わせて呼吸が荒々しく加速していく。


「落ち着きなさい」


 少女が私の胸の上に手を置いて、そう呟く。

 すると、不思議と呼吸は落ち着きを取り戻していった。


「サクヤちゃんは、生きていますよ」

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 まだ会話をすることができない私は、目で少女に問いかける。


「あの時、アタシはサクヤちゃんをギリギリのところで助けました」

「……」


 それからこの世界を管理している神であるアクシスは、私たちに起こった出来事の真相を話し始めた。


 まずあの爆発倒壊事故は全てが仕組まれていたものであり、この私だけの命を狙って引き起こされたものだった。


 あの爆発は別世界から私をターゲットに発動された召喚術式の一種らしく、その力が地球上に存在する力へと変換されて具現化したものらしい。


 召喚術式とやらを発動したのは、こことは違う別世界の凶悪な神によるもの。

 その名は神機(かみおり)マネシス。


 神機マネシスと、ここにいる神邪アクシスは昔一緒にこの世界を管理していた仲間同士だったらしい。


 だけど、マネシスは神同士で定められた掟である禁忌の1つを犯してしまった。


 その禁忌というのは仲間殺し。


 本来、禁忌を犯した神は即座に消滅させられて存在を消される運命になる。


 だけどアクシスはマネシスを消滅させることが叶わず、やむなく地球によく似た星がある別世界へと封印したらしい。


 その世界はアクシスが独自に作り出していた世界であり、この地球と同じように人間が豊かに暮らしていて、他の神が干渉できない領域にあるようだ。


 その場所にマネシスを封印してしまったらしいけど、同格レベルの神を封印しているというのは膨大なエネルギーの消費を伴うものらしい。


 もともと世界を維持させるためには、その星の生命たちが一生をかけて培った生命エネルギーを世界へ還元させながら存続させている。


 一生を終えて生命エネルギーを還元したその生命の魂は、再び新たな生命としてその世界で誕生するというサイクルを繰り返しているみたいだ。


 しかし、マネシスを封印している向こうの世界では、そのサイクルだけでは世界の存続と封印の維持を行うことができなかった。


 そこで、アクシスは地球と同じように平和で豊かだった向こう側の世界を、戦いと殺戮に満ちた世界へと変貌させた。


 まず人間を人族と魔族の2つに分け、自身の息のかかった眷属をそれぞれのトップへと配置し、それらが互いの種族を滅ぼすべき相手だと暗示をかけ続けた。


 すると、そこの人間たちは相手を殺すための技術と力を習得するため、鍛錬を積み続けることになる。


 効率的に生命エネルギーを蓄えたころを見計らって戦争を行い、効率的に死者を出してその生命エネルギーを還元させ、無理やり封印を維持することに成功した。


 だけど、そんなことを続けていると生命が持つ魂の損傷が激しく、転生に耐えることができなくなってしまう。


 すぐにその世界の人口が激しく減少を始め、封印の維持はおろか世界の存続までも危うい状態まで陥った。


 そこでアクシスは、この地球で死んだ人たちの魂を向こう側の世界へ転生させるという暴挙に出た。


 それにより、なんとか封印を維持したままで両方の世界を存続させ続けていたけれど、どんどん生命は減少していく一方だった。

中途半端に切ってごめんなさい。

次話に続きます。

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