099 まもりたいおもい
魔王や天使、それに四神獣の襲来から数日間は比較的安定した生活を送っていた。
毎日やってくる魔物にも妹っ子の指揮のもと、連合軍だけで対処ができていたから私らの出番はなかった。
人だけならたくさんいるこの領土は、砦を守る人が途切れることなく入れ替わり立ち代わりに防壁を守っている。
そればかりか、この領土内の生活環境も妹っ子は見事に安定させていく。
今では、ここに住む大量の人たち全員がきちんと自分の役割をこなし、お互いに助け合いながら日々を過ごしている。
もちろん私らもできる限りのことは手伝ったけれど、それら全てを先頭に立って導いたのは紛れもなく妹っ子だった。
ここ最近で本当に化けたわね、この子。
この司令部の机に座って指示を出している姿がすっかり板についてきたと思うよ。
相変わらず私の分身体は妹っ子にこき使われているけどね。
それにしても、なんか私本体よりも分身体のスマコとの方が仲良さげだと思うのは気のせい?
時々私に聞こえないチャンネルでこそこそ会話をするのはやめてほしい。
いつからスマコと妹っ子は会話を交わすほどの間柄になったのだろうか。
知らない間に私よりも仲良くなっているのはどうかと思うよ?
《だってサクヤちゃんは仲良くなる気がないでしょ?》
ぐはっ?!
そこに気が付くとは……さてはアンタ、天才ね?
《長い付き合いですからね》
ワタシのことを知り尽くしているスマコには敵わないわね。
それよりもさ、あの時白虎にいろいろ教えてもらったから前より神成の力を扱えるようになったけど、最初からアンタが教えてくれたらよかったんじゃないの?
《だって私、最初から普通に使えましたし》
ぐっ……。
《誰かに教えるなんてことをしたことがありませんでしたので、どう教えたらいいのかわからなかったのですよ》
なんかムカつく言い方ね。
《それに……あんな思いは二度としたくありませんでしたので》
あんな思い?
《なんでもありません。こちらの話ですよ》
そう……。
じゃあ、ネコの方がアンタよりもアンタの力のことを理解しているってことよね?
《そうなりますね。特別猫ちゃんに教えたことはなかったのですが……あの子が死にかけていたので実験がてらに助けたら、知らない間に私の力の一部を使えるようになっていましたし》
実験がてらね……なんかネコが気の毒になってきたわね。
《まさかの最終奥義がレールガンとは思わなかったですね。ふふふ……あのドヤ顔を思い出しただけでも……くっくく》
あのレールガンって結構凄かったと思うけど?
私も忍気全部持っていかれちゃったし。
《私の一番得意とした技であることに間違いありませんが、人間でいうところの呼吸をするのと変わらないくらい簡単にできる技でしたので面白みがなくて……》
神様っていうのは暇人で奇妙な感性の持ち主なのね
《そんなに褒めないでくださいよ》
嫌味だよ!
それよりもさ、もう一回くらいネコと話してあげてもいいんじゃないの?
あれ以来ネコから質問攻めに合っている私の身にもなってよ。
《サクヤちゃん、それは私がアナタにあの4人やメイナちゃんと会話しなさいと言っているようなものですよ? できますか?》
……無理ね。
《そういうことです。アナタは私でもあり、私はあなたでもあります》
なるほどね。
上手く言いくるめられた気もするけど、まぁいいわ。
それよりも……。
《はい、次が最終決戦といったところでしょうね。それも近いうちにくるでしょう》
そう、スマコの言う通り近いうちに天使たちとの最終決戦になると思う。
向こう側の戦力は魔物の軍勢と白虎を除いた四神獣3匹、それに魔王と天使。
魔物の方は中級レベルくらいならこの防壁はビクともしない。
だけど、アトラス大迷宮の下層にいる上級レベルの魔物が攻めてきたらどうなるかわからない。
それに問題となるのは四神獣の3匹と魔王に天使。
この強力な3匹と2人をどう抑えるかがカギになると思う。
妹っ子が今、一番頭を悩ませているところだ。
悪いけど、私には封印を全部壊すという目的がある。
あれからクズ神からの連絡はない。
アイツが復活できている気配はしないとスマコは言う。
もし復活できていたとしたら同じ神同士だからわかるらしい。
でも限りなく封印の力は弱まっていて、クズ神の力が強まってきているのは感じているらしい。
だから、どちらにしても迫りくる最終決戦で全てが決まると思う。
私は必ず封印を解いてみせる。
それが乙羽も、マイカも……この世界の人たちも含めて全てを助けることに繋がると思うから。
《サクヤちゃん、あなたの信じた道を進みなさい。どういう結果が待ち受けていようとも、私はあなたの味方ですよ》
うん、ありがとう。
「しょうがないからワタシも付いて行ってあげるわよ」
あ、ネコ。
アンタいたの?
《最初からそのつもりでいたくせに、素直じゃないですね猫ちゃんは》
「なっ?! 久しぶりに口を開いたと思ったらアナタは……」
「サク……アタシ……」
「……大丈夫……私がいる」
途中からマイカもこの話を聞いていた。
最終決戦が近いことは妹っ子だけじゃなくて、マイカもわかっていたことだ。
向こうは多分マイカのことを狙って来ると思う。
この子にはもうあの力を使わせてはいけない。
だからその分は私がやる。
手の届く範囲ならまだこの子を守れる。
絶対に守ってみせる。
そう思った私は、体に寄りかかっているマイカの体をギュッと強めに抱きしめた。
次の更新、少しだけ遅れます。
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