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095 やきとりとあおへび

メイナ視点です。


 忽然と姿を現した四神獣の朱雀と青龍。

 あんな化け物までやってくるとはさすがに予想外すぎる。


 この防御壁を突破したのは間違いなくこの世界の守り神である四神獣の攻撃なのだろう。


 こんなもの相手に一体どうしたらいいのよ。

 勝つことはおろか、逃げ延びることさえも難しいわ。

 策?

 あんな化け物相手にそんなものが浮かんでくるはずもないじゃない。


 やっぱりワタシは……無力だ……。


「すんげぇなぁ~あれが朱雀と青龍かぁ? よっミサキ! 頭大丈夫か?」

「痛かったよ~! とても痛かったよ~! タンコブできたよ~!」

「ヨシヨシ。よくこれだけの人たちを守り切ったと褒めてあげる奴がここに約1名」

「まるでデカい鳥と空飛ぶヘビやんけ。ヘビはちょっと気色悪いな」

「あのデカい鳥見て思い出したけどよ、久しぶりに焼き鳥食いたくね?」

「焼き鳥、良き! 焼いた鳥、略して焼き鳥!」

「いや、そのまんまやんけ!」


 そんなワタシを他所にノンキな会話をしている4バカ。

 こんな時までいつも通りにバカで本当に呆れるわ。


 でも……助かった。


 今、本当に心が折れそうだったから。

 わざわざ通信をONにした状態でバカな会話をありがとう。

 ムカつく気遣いをされていちゃ、司令官失格ね。


「コラ、4バカ! その「焼き鳥」と「青ヘビ」をちょっとの間でいいからどうにかしなさい!」

「お、先生にそう言われちゃ~なんとかするしかないっしょ」

「相変わらずムチャぶりが過ぎるで先生! んでもまぁ、やったるわいな!」

「い~や~だ~! おうちにか~え~る!」

「と言いながらもしっかり魔法を発動しようとしているヤツがここに約1名」

「うしっ、じゃあ行くぞ!」


 4人は勇ましくも化け物へと立ち向かっていった。


 とりあえず壁を修復しないと魔物が中に入り込んできている。


 それを食い止めているのは、予備の兵として待機させていたあの変人集団のもとDクラスたちだ。


 ブアイソやお姉ちゃんに鍛えられたその変人どもは、素手だけで魔物たちと渡り合えるほどに強く、その辺の兵士たちよりも断然使い道がある。


 だけど、これ以上壁の穴を増やされたら、いくらこいつらでも抑えられなくなる。

 そうなると戦えない人たちは無残に殺されてしまうことになる。


 絶対にそんなことはさせない。


 ワタシはとりあえず、連合軍全体に指示を出しまくる。

 負傷者の手当や壁の修復に魔法結界の再構築、戦えるものは魔物の殲滅。


 そしてある程度指示を出し終えたところで、自らも消滅した砦の修復へと向かうために足を動かしたその瞬間、突然声が聞こえてきた。


 その声はブアイソにもらった通信機からではなく、頭の中に直接聞こえてくるような感覚だった。


「君が指揮官かな? 申し訳ないけど、君には死んでもらうね」

「え?」


 遠くの方で朱雀が空中へと飛びあがり、ワタシが立っていたこの国王の城を閃光のような炎を口から吐き出して攻撃してきたのだった。


 気が付いた時には建物が完全に倒壊を始めており、全身が燃えるような熱さの爆風に巻き込まれながら、地上へと落下しているところだった。


 よくよく考えれば2匹とも空を飛べるじゃないのよ。

 全く嫌になるわね。

 でもまぁ、狙われたのがワタシでよかったわ。


 この建物を破壊した朱雀がまた地上へと降りていったところを見ると、おそらくワタシだけが狙われたのだと思う。


 この建物の中やその周辺にはワタシ以外に誰もいないはずだし。


 ブアイソにもらった通信機越しにいろいろな声が聞こえてくる。

 それは全部ワタシを必死に呼ぶ声。


 なによ……みんなそんなに心配してくれるの?

 こんなワタシを……。


「メイナ! メイナ! そっちでなにか起こっているの?!」


 その中でも耳を引いたのはワタシの大好きなお姉ちゃんの声だった。

 あまり声が出ないけれど、なんとか振り絞って状況を伝えようとした。


 あの2人がもしこちらに戻って来ているのなら、まだ勝機はある。

 たとえここでワタシがいなくなったとしても、あの2人ならこの世界の人たちを救えるかもしれない。


「し、四神獣が攻めてきている……わ。みんなを逃がして……あげて……」


 そう言うのが精いっぱいだった。


 倒壊していったこの建物の音でほとんどかき消されちゃったから。

 後はワタシが落ちるだけね……できれば死にたくはなかったかな。

 強がってはいるけど、これでも結構怖いのよ。

 そりゃ、今まさに死へと向かっているんだもん。

 怖くないわけ……ないじゃん。


 これ以上の恐怖を感じなくてもいいように、ワタシはゆっくりと目を閉じた。

 そんなワタシの体を包み込んだ腕の感触。


 パッと目を見開くと、いつもの無表情なブアイソの顔が超至近距離にあった。


「アンタ……ブアイソじゃないブアイソか」


 これはブアイソの分身だとお姉ちゃんは言っていた。

 全く同じ姿の同じ顔で勝手に動く人形だと。

 人形だというから、好き勝手に使わせてもらっていたけど、まさかこれに助けられるとは思わなかった。


 だけど、よく見ると今のこいつは上半身だけで下半身がなく、その胴体の内部から出ている変な糸が建物と建物の間へと伸びていて空中に浮いている状態だった。


 そして少しずつ体の中の糸を伸ばしていって、降下している。

 まぁ助けてもらっておいてなんだけど、正直気味が悪い。


「……アンタ気持ち悪い」


 人形相手に思わずそう呟いてしまった。


「今はこれが精いっぱいなものでして。これでも必死だったんですよ? だから勘弁してくださいな」


 通信機越しに聞こえてくる、知らない声にビックリしてしまう。


「……え?! アンタだれ?!」

「ふふふ、ブアイソじゃない方のブアイソですよ、メイナちゃん」

「メ、メイナちゃんって……アンタ、ほんと不気味だわ」

「まぁ私のことはともかく、ブアイソちゃんも悪い子ではないですよ」

「それはもう……わかっているわよ」


 ワタシが地上へと降りる頃にはブアイソの体がほとんど無くなっていた。

 最終的には首だけになっていたのは夢に出てきそうでちょっと怖かった。


 だけど、おかげで助かった。

 ワタシは自分の無事をみんなに知らせると、再び壁の補修に向けて走り出す。

ここまでお読みいただきましてありがとうござます。

もしよろしければブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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