A02 異世界転生
別ルート編です
目が覚めたら知らない場所にいた。
まず目に入ったのはアタシの顔を愛おしそうな目で見つめる2人の大人。
アタシは声も出せないし、体も思うように動かせなかった。
この状況を理解するまでにとても時間がかかってしまったけど、なんとアタシはこの2人の赤ん坊として別世界に産まれたようだった。
正直わけがわからない。
理解も追い付かない。
でもそれは紛れもなく事実だった。
しかもここは地球ではなくて別の世界。
スキルとか魔法とかステータスとかがある不思議な世界。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
やっぱり放課後に部活をサボッてカフェに行ったから、バチが当たってしまったのだろうか。
その後すぐに店内放送で避難指示があったからアタシたちは逃げ出した。
途中でオトハとヤクヤとは逸れてしまったけど、アタシと3人は一緒に逃げていた。
でもその途中で、ものすごい爆発音がして天井が崩れてきたのは覚えている。
その後……うん、死んだ。
天井の瓦礫の下敷きになって悲惨な状態になっている人をいっぱい見ながら、私たちもそれと同じように無残な姿になって死んだ。
うぇ……思い出したらめっちゃ吐き気が。
本当に吐いてしまった。
母親と思われる人がめっちゃ泣きながら慌てて、つまずいて盛大に転んでしまった。
ごめんね。
こっちの世界の言葉がわかんないから、なにを言っているのか理解できないけど、アタシを心配してくれているのはわかる。
それよりもアタシはあなたの鼻から出ている流血量の方が心配だわ。
本当に優しい人たちなんだね。
アタシはあなたたちの赤ん坊として生きていく自身がないよ。
だって中身は高校生なんだし……。
その後お医者さん? みたいな人がアタシの体を調べてなんか魔法を使ってくれたらしい。
変な杖を振るおっさんの姿にはさすがにドン引きだったけど。
それに、これでも一応はもと女子高生だ。
さすがに体を弄られるのはかなり気持ち悪かったし、恥ずかしかった。
でもその魔法のおかげなのか、吐き気は収まってくれた。
ついでにお母さんらしい人の鼻にもその回復魔法らしきものをかけていた。
魔法……この世界では当たり前のように使われている。
逆に言えば、魔法なしでは生きていけないような世界だということでもある。
アタシがこの世界に生まれ変わった経緯はわからない。
でも、もしかしたらアタシと一緒に死んだ3人も同じようにこっちの世界で生まれ変わっているかもしれない。
その願いだけを胸にもう少しだけこの世界で生きてみようと思う。
まぁ生きる自信がなくても自殺なんてできる勇気も度胸も全くないけどね。
でもせっかく生まれ変わったから楽しく生きようなんてことはアタシには全く思えなかったのも事実だ。
――それから3年が過ぎた。
アタシはこの世界の言語をある程度習得して読み書きができるようにまでなっていた。
一応もとは高校生なもんで、3年もあればある程度は話せるようになるもんだ。
そして今日、アタシは大事な式典に出席している。
「次の方、どうぞ」
「アブリエル伯爵家のご令嬢、アズサ・アブリエル様ですね。ではこちらへ。」
アタシが手順通りに黒い石の上に手を置くと、それが青白く光った。
「こ、これはっ?! なんということでしょうか……わずか3歳でこの魔動力の総量、この子は天才か?!」
使用人の言葉に会場でどよめきが起こる。
両親もビックリしている。
「そ、それはまことですか?!」
「はい。この鑑定石が示す魔動力の総量表示は紛れもなく本物にございます」
「あなた……」
「なんと喜ばしいことだ。アズサ、おまえは私たちの宝だ」
そう、アタシはこの貴族である伯爵家の令嬢、アズサ・アブリエル。
なんでアズサという前世と同じ名前がつけられたのかは不明。
たまたまなんだろうか……。
この世界の人間は3歳の誕生日を迎えると、王城に呼ばれて鑑定石という不思議な石の力を使って体の中にある魔動力という力の量を測定するという風習があるようだ。
その鑑定石でアタシのステータスを見た他の貴族は驚き、うちの両親や使用人は大喜びだ。
どうやらアタシの魔動力という力の総量がかなり多いらしいんだけど……。
正直、どれだけすごいのか全然ピンときていない。
確かに、同年代の子らよりはあの鑑定石ってやつの光りが強かったようには思うけど。
そんなことをアタシが思っていると、また会場がどよめいた。
アタシと同じくらいの魔動力の子がもう一人いたらしい。
すごく珍しいことなんだろうね。
それはこの周りの大人たちの興奮状態からして察することができた。
この世界で魔法を使うにはこの魔動力っていうものを、ギアメタルっていう道具で変換しないと魔法は発動できないらしい。
前に見た、お医者さんのおっさんが降っていたあの変な杖もギアメタルらしい。
ギアメタルというものは形がさまざまで、剣・杖・盾・弓・槍などの武器から、体に装備する防具まであるらしい。
それらのギアメタルは、魔動力の総量や、魔動力の操作技術によって使える物が限られているらしい。
本当かどうかわかんないけど、魔動力の総量だけでいえば、アタシはもう国宝級のギアメタルを使用できるレベルらしいよ?
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