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090 ほんとうのゆうしゃ

 国を囲うように木の根で高い壁を作り上げたミサキ。

 さすがにここまでの大規模な魔法の連発で、魔動力がほぼ枯渇気味だから青い顔をしている。


「まだよ。これだと木だからすぐに壊れるし燃えるわ。あの木の壁を足場にコンクリートの壁を張りなさい。そしてこの国を守れる砦を作り上げるのよ!」

「は、はい! 直ちに取り掛かります!」

「その間魔物を近づけさせちゃダメね……ホノカ、アンタの暗黒魔法で気色悪い植物がいたでしょ。あれを壁の外側に生やしなさい」

「な、なるほど! 自分のかわいい闇黒植物たちに魔物を捕食させるということか……というか、気色悪いとは心外であると反論したい奴がここに約1名」


 ホノカもなんだかんだと言いながら、ミサキと同じように暗黒魔法を連発させて気色の悪い植物を壁の外側に生やしていった。


 無理やり働かされていたミサキとは違って、まるでガーデニングでも楽しんでいるかのように、イキイキとしながら。


 さすがに鋭い牙と長い舌を生やした植物相手に、笑顔で話しかけている姿にはみんな引いていたけど。


 それから妹っ子の的確な指示のもと迫りくる魔物をけん制しつつ、数週間をかけて他国の生き残りたちをこのルドラルガ一箇所に集め回った。


 それと同時並行でミサキが作った木の壁を足掛かりに、このルドラルガ全土を囲うように膨大な面積の強靭な高い壁が建設された。


 そしてそれは、人族と魔族の共同作業により魔物を食い止めることができるものへと変貌を遂げたのだった。


 壁の上には固定用の砲台型ギアメタルが装備され、そこから人族が魔法を発動できる上に、その内側から魔族の人たちが大勢で防御用の結界を張り巡らせている。


 まさに人族と魔族の力が合わさった最強の防御態勢が取れていた。


 生き残りの救出活動についても、かなり順調に進んだ。

 魔物の方も無闇に殺戮をしないように操られていたようで、わざと私ら人間を一箇所に集めるように誘導していたのもその理由だ。


 そして、魔族領土の人たちも含めて人間全てがこのルドラルガ一箇所へと集まり、完全にこの壁の中に閉じ込もった状態へとなった。


 現在、その壁の周りには魔物が大量に迫ってきている状態。

 だけど、人族も魔族も人間全てが協力し合いながらこの広大な壁を守っていて、今のところ問題なく魔物の侵入を抑えられていた。


――教職塔、指令室。


「メイナ様、報告します! 指定された箇所の人族及び魔族の生き残り全ての収容が完了いたしました」

「わかったわ。引き続き、居住スペースの確保と建設を進めなさい」

「はっ!」


「メイナ様、この国を守るための砦及び魔法結界もろとも問題なく機能しています。現在、北側周辺での魔物の勢力が上がっており、できましたらそちら側へ戦力を回したい状態であります」

「そう……西側と東側の戦力を少しずつ北に回しなさい。ブアイソ、アンタも1人追加でそっちに向かって。それで足りるはず」

「はっ!」

「……」


「メイナ様、収容人数の増加により食材の確保が困難となっております。いかがいたしましょうか?」

「それなら収容したばかりの非戦闘員のみなさんに協力を仰ぎなさい。作物の育て方と家畜の飼育方法を伝授して。畑も増設した方がいいわね……ブアイソ、1人追加でそっちによろしく」

「はい!」

「……」


 すっかりここのボスになってしまった妹っ子。

 まさかこの子に、こんなすごい才能があるとは思いもしなかった。


 逐一最新の情報を受けながら、それに対して最適な指示を出していくその姿はまさに最高司令官そのもの。


 それにしても私、働き過ぎじゃない?!


 今追加で言われた仕事が2人と、東西南北の砦を守る役目でそれぞれ4人。

 他にもアトラス大迷宮の中で食べられそうな食料を大量に確保する4人とで合計10人の私が過重労働をさせられている。


 そう、私も分身体を動かしている。

 特にアトラス大迷宮の方は魔物もいるから結構大変なのよ。


 特別手当を要求したい……。


 私本体や、マイカ、それにあの4人は桜飾のイヤリングを全員が付けた状態で不測の事態が起こった時、すぐ対応できるようにこの教職塔付近で待機をしている。


 なにもしていないかと言ったらそうじゃなくて、妹っ子の指示のもと農作物を作る手伝いをしたり料理の手伝いをしたり、やることは結構たくさんあったりするのだ。


「こらミサキ! サボるんじゃないわよ! アンタはホノカと一緒にまだあそこの居住スペースを広げなさい!」

「はひぃいい?! ごめんなさい先生!」

「だからどうしてワタシがアンタらの先生なのよ!」

「是非そう呼ばせていただきます、先生」

「もう好きにしなさいよ……それよりもアズサとハズキは向こうで立ち尽くしている無能な人たちに協力を仰ぎなさい!」

「はい、先生!」

「すぐやるで~す!」


 なにやら楽しそうでいいわね、アンタらは……。

 まぁでも確かにここへ来た人々を見ていると、表情が柔らかくなったと思う。


 いきなりの衝撃的なクズ神の大暴露から、今後の自分たちの生きる希望を持てなかった人も多いと思うし、絶望した人も多いと思う。


 だけど、ここにいるたくさんの人たちそれぞれが協力し合って生きていくための努力を始めた。


 それをさせたのは紛れもなくここにいるツンデレ姫の妹っ子。

 口が悪くて威圧的な態度だけど、みんなに生きる希望を与えている。


 アンタこそ……本当の勇者なのかもしれないわね。


 それは私らを含め、ここにいる人たち全員が同じことを感じていると思うよ。


 妹っ子のおかげでみんなの気持ちが1つになった。

 生きていくための土台もできた。

 後はこの魔物たちをどうにかするだけ。


 私の予想だとそろそろなにか仕掛けてくるはず。


《サクヤちゃん、感が良すぎです。南口付近で、もと勇者と魔王のご登場ですよ》


 マジですか……言うんじゃなかったわ。

 はぁ、ないわぁ……。

ここまでお読みいただきましてありがとうござます。

もしよろしければブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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